第15話大賢者とゲーム知識で内政チートするゲーマー

マリーは数日で小国とも言える都市を築き上げていた。

魔術と科学を併用した完璧なインフラ。

居住区には水道ガス電気が完備されており、機関部には巨大な発電施設が建てられている。

更に警備として人型の巨大ロボが数体配置されている他、

雑務用に小型ロボットが何体も走り回っている。


俺は屋台らしき店に案内されると対面にいるロボットに声を掛けられた。


「ナニニシマスカ?」


「じゃあハンバーグを」


「ナニニシマスカ?」


「…ハンバーグを」


「ナニニシマスカ?」


「お前それしか言えないのか?」


俺と奇妙なロボットとの対話を見てマリーが笑い出す。


「ふふふ、その子はね、ラーメンしか作れないのよ」


「先に言ってくれよ…じゃあラーメン一つ」


俺は出て来たラーメンをすすりながらマリーに現状報告して貰った。

ラーメンの味?それは聞かないでくれ。


「じゃあ後足りないのは内政者位だな」


「そうね。私もそっちは経験ないから」


「じゃあ転移して学園に…と思ったらMPタンクがいないんだった」


御門先輩は度重なるタンク行動で疲弊してるし、

傭兵王女のミーナは異世界人だからMPは0だ。


「ふふん、そんなゼロ君にいいものがあるのよ」


自信ありげに歩き出したマリーについていくと格納庫らしき場所に来た。

そこには巨大な赤い飛行機?…いや宇宙船か?とにかく巨大な乗り物が置いてあった。


「マリー、これは?」


「万能戦闘機フェニックス号よ!」


フェニックス号と命名されたそれは魔力と科学エネルギーのハイブリット仕様で、

なんと戦闘もこなし、宇宙までも行けるという万能仕様なのだ。


「さあ、乗った乗った」


俺はマリーに背中を押されると万能戦闘機フェニックス号に乗らされた。

そこには既に御門先輩がクルーの椅子に座っている。


「御門先輩だけ?ミーナは?」


「あいつなら警備の機械相手に鍛錬しているぞ」


「そうか…じゃあ俺達は一旦学園に戻ろうか。操縦方法はっと…」


「操縦なら脳波コントロールできるから別に特別な運転スキルはいらないわよ」


「ほう、脳波コントロールか…これ現代の科学技術軽く越えてないか?」


「創造の錬金術師の名は伊達じゃないのよ。想像した物は大抵作れるんだから」


「よし、じゃあ学園まで、発進だ!」


フェニックス号が格納庫から出て俺が念じると、エンジン音が唸り飛んで行った。

この速さなら、ここから学園までは30分程度という所だろう。

俺と御門先輩は快適な空の旅を満喫した。



―学園入口



俺は学園入口にフェニックス号を止めると、そこから降りて来る。

そこには沢山の野次馬の生徒とメアとアリスがいた。

俺は次の番のアリスを呼ぶ。


「ジャックく~ん!」


アリスが俺に向かって来て抱きつく。

そしてアリスの柔らかい胸の感触が俺の胸に服越しに伝わってくる。


「久々のこの感触、いいな…」


「えへへ、次は私の番だよね」


俺はにやにやしているアリスの手を掴み、フェニックス号に乗り込んだ。

同時に御門先輩が名残惜しそうに下りて来る。


「あまり破廉恥な真似をするんじゃないぞ、婿殿」


「はいはい、分かってますって」



―フェニックス号内部



「で、ジャック君、次はどうするの?」


「次の行先か?それはな、月だよ」


「月ってお空に浮いてる?」


「そうだよ」


このフェニックス号は宇宙船にもなることが出来るとマリーが言っていた。

なら月にだって行けるはずだ。

俺は月に行きたいと強く念じると、フェニックス号は動き出した。


―月面


「じゃあアリス、これを着て」


「これは何?」


「宇宙服さ。これを着ないと大変な事になる」


俺とアリスは用意してあった宇宙服に着替えると月面へと降り立った。



「わあ、綺麗…」


「地球と似た様なもんなんだな」


俺は昔教科書で見たことのある地球の写真を思い出し、

目の前の俺の飛ばされた星と比べていた。

異世界転生なんて言うから宇宙はなくて天界でもあるかと思ったが、

どうやら違うみたいだ。


「でもこんな所に仲間候補がいるのかな?」


「ああ、俺の調査魔法が正しければいるはずだ」


少し歩くとそこにはドーム状の建物があった。

早速俺とアリスはドームの入り口を探した。


「お探しの入り口はこれかい?」


ドームから女性の声が聞こえると入口らしき物が姿を現した。

俺とアリスは慎重にドーム内部に入った。


―ドーム内部


ドーム内部は広々としており、小型のロボットやドローンがいそいそと働いていた。


「やあゼロの賢者さんとアリス嬢、初めまして、私の名はシオン、しがないゲーマーさ」


「何故俺達の名前を?」


「敵か味方か分からない陣営にスパイを送り込んで情報収集は基本だろ?」


「まあ確かにそうだが…」


「察するに私をスカウトしに来たんだろ?」


シオンと名乗った白衣でツインテールの少女は見事俺の狙いを当てる。

俺はシオンにうんうんと首を縦に振った。

シオンは不敵な笑みを浮かべる。


「今難易度不死者を10回クリアした所だ。次は神に挑む所だからちょっと待っててくれ」


「いや、ゲームよりこっちのリアル内政を手伝って欲しいんだが」


「まあまあ落ち着きたまえ。今丁度内政タイムに入った所だ」


それから数時間後


「よし、クリアしたぞ。で君達の国は文化勝利、科学勝利、宗教勝利、制覇勝利どれを目指すんだい?」


「そうだな、制覇勝利はなるべく避けたい、戦争はしたくないからな」


「となると文化勝利か宗教勝利かな?」


「宗教も戦争に発展する恐れがあるからなぁ。文化勝利で頼むよ。でも必要があれば戦う準備もして欲しい」


「リアル内政は初めてだからね。ワクワクするよ」


俺はシオンとアリスをフェニックス号に乗せると月を後にした。

月旅行がすぐに終わったのでアリスは拗ねている。

後でフォローを入れておかないとな。

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