第25話 ドッペルゲンガーなのは

 私は自宅の居間にいたんだけど、玄関から「私」が帰宅した。

 母親も驚いた顔をしている。


 私は慌てて玄関と居間をつなぐ廊下に面した寝室に逃げ込んだ。

 恐怖のあまり、「キャー!!」とホラー映画で使えそうな悲鳴が口から飛び出した。


 ドッペルゲンガーに会うと死ぬ


 よく聞く話である。


 玄関から入ってきた私は寝室をスルーして居間の隣にある和室で荷物をおろしたりしていた。

 このままでは、私は死んでしまう。

 恐怖にすくむ足を何度か叩き動かすと、私のいる和室へ突撃し私の鼻に狙いを定め思いっきり噛みついた。


 ガブッという感覚はなく、噛んだと思った私は目の前から消えていた。


 勝った。


 そう思った。

 母親は相変わらず驚いた表情のまま、こちらを見て固まっている。


 もう私はいなくなったというのに、いつまでも驚いたままでは困る。

 全く、驚いたのは私も同じなのだ。勇敢に立ち向かった私を見習っておくれよ。


 そう思いながら、和室におろした荷物を片付け始めた。




 ……という夢を見たんじゃ。


 正確には鼻柱に噛みついて消えてしまう所までですが。

 もう少し、設定を煮詰めて何かを足せばショートショートくらいにはなりそうです。


 それにしても、リアルな夢でした。

 自宅の間取りがまんま一緒でした。

 玄関、廊下、居間と和室に寝室。部屋の位置も家具の配置も。

 そして、悲鳴上げるくらい怖かったのに、相手の顔面に噛みつくって……夢の中の私は随分と勇気のある人物のようです。



 もう何年か前ですが、東京で働いている学生時代の友人から2年振りにメッセージが届きました。


「急にごめん。今新宿のルミネでラーメン食べてないよね?」


 私は関東の別県でお仕事中だったので、もちろん「NO」と返信。

 友人からはあまりにも似てたから……と返ってきて、それからは近況報告に少しばかり花を咲かせました。



 もしかしたら、新宿近辺に私のドッペルゲンガーがいるのかもしれません。

 会わないように気をつけなくちゃ。


 それはそうとルミネのラーメン、美味しいのかしら。

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