第十二話 ゴブリン襲来
ゴブリン退治はかなりの成果をあげた。何よりも俺以外のみんなのギフトの開花が凄かった。サイはマーチ姉さんによって中級魔法までを完璧にしていたが、上級魔法を二つ開花していた。
キャルは家政から家政科に進化していたが、更に家政婦に進化したそうだ。
メイは生活魔法が生活魔法(中)になったらしい。
カールは剣鬼が剣聖に進化して、聖なる気が開花したそうだ。
セレナは治癒師が治癒師(聖)に進化して、部位欠損回復魔法が開花。
レイは弱点看破だけだったのが、虚偽看破、更には新たに魔眼を開花させた。自分よりも弱いモノを麻痺させる力を持つ魔眼だ。
俺だけとは思うけど、俺も蟻頭鎧の熟練度が5になったので、後は蟻重力の熟練度だけだ。まだ2だけど……
しかしよくよく考えてみたらコレってヘタな大人より強いんじゃね。リーダーのレイは九歳、俺達なんてまだ七歳だよ。前世なら小学校低学年なんだよな〜。俺はそんな事を思いながらどうすれば重力の熟練度を上げれるかに悩んでいた。
俺も二つ目を早く開花したいからね。まあ、伯父が言うには今度は崖から飛び降りて見たらどうだって話だけど…… いや、甥にアッサリとそう提案する伯父もどうかと俺は思うよ。
因みにマーチ姉さんと結婚する前に、伯父にも
今日も皆と一緒にゴブリン退治をしている。何故か一日に百体は退治しているのに、減る雰囲気がない。伯父は今日の退治を終えた後に辺境伯様に報告に行くと言っていた。さすがにこれだけ退治をしても減らないのは異常だと思う。何処かで何かが起こっているとしか思えない。
「よし、本日はこれまで。皆、よく頑張ってくれた。これから私は辺境伯様の所に報告に行ってくる。レイナウド、カール、セレナは共に来てくれ。ガイ、サイ、キャル、メイは養護院に行き食事をとるように。では、解散」
今日も百体を退治して町に戻ったところで伯父がそう言ったので解散になった。俺と三人は並んで歩きながら話し合う。
「ガイくん、今日も多かったねー」
キャルが俺にそう言ってきた。
「ああ、キャル。多かったなー」
「サイ、魔法の威力が上がった」
「あ、うん。メイちゃん、魔力制御と魔力操作のやり方を変えてみたんだ。ほら、マーチ師匠が基本を覚えたら応用って言ってたから、自分なりにやってみてるんだよ」
おう、何て勤勉なんだサイ。最近は近接戦闘まで熟すしもはや最強の魔導師だな。キャルも何故かフライパン盾と牛刀を手に近接戦闘をするし、メイの魔法は生活魔法の枠を飛び越えている。本当に凄い子供が同い年なんだと改めて思う。
養護院に戻った俺達はサイも一緒に晩御飯を食べた。最近は俺達がやってるゴブリン退治に、辺境伯様が報酬をくれるので一部をマザーに渡している。元々、辺境伯様からの援助も多くて、この養護院では食事、衣服なんかは充実していたけど更に良くなるとマザーに喜んで貰えた。何故かサイも報酬の一部を寄付という形で養護院に渡しているから、マザーが食事をウチでしなさいとサイに言って、一緒に食べるようになった。サイの兄であるダイルさんも時間が合えば養護院に来て食べている。
「それでね、ガイくん。今日もらった報酬で、必要なお金が貯まったからね、明日カールくんとセレナちゃんと一緒にガラッド武防具工房に行くの。ガイくんも行く?」
キャルにそう聞かれたのだが、うーん俺の場合はギフトで武器も防具もあるからなぁ。でも、ガラッド工房か。そうだ、俺のギフトの武防具を見て鑑定して貰えるかな。それなら行ってみたいけど。俺は物知りなサイに聞いてみた。
「サイ、ガラッド工房で俺の蟻牙小刀と蟻頭鎧の鑑定ってして貰えるかな?」
「ガイくん、してくれると思うよ。確か二千コンでしてくれたと思う」
よし、それなら行こう。
「キャル、鑑定してもらいに俺も一緒に行くよ」
「うん、やった。メイちゃんとサイくんはどうするの?」
「明日はサイとマーチ姉さんのトコで訓練」
「うん、僕とメイちゃんはマーチ師匠と約束してるから、明日は一緒に行けないんだ。ゴメンね、キャルちゃん」
そこに警戒鐘が打ち鳴らされた。
「ん、何だろう?」
俺達は外に出て町の門に走った。最近は俺達がゴブリン退治をしているのを皆が知っているので大人に止められる事はない。この辺境都市には門が一つしかないからこういう時は便利だな。
そこには衛兵隊のみんなが揃っていた。俺達はザーバンさんを見つけたのでそこに行った。
「おお、ガイ、サイ、キャル、メイ。来てくれたのか。直にゲーレンス様がレイナウド様とカール様、セレナ様を連れて来られる。それまでココで待機しておいてくれ」
「何があったんですか?」
俺がザーバンさんにそう聞くと、
「うん、先程の事だが行商人が町に駆け込んで来てな。どうやらゴブリンの団体がこの町を目指してやって来ているようなんだ。今、斥候の巧みな冒険者が五名、確認に行ってくれている」
そう答えが返ってきた。ゴブリンか。ひょっとしたらロードかキングが率いているのかな。そうしたら伯父がマーチ姉さんも連れてやって来た。
「おお、揃っているな。冒険者ギルドからもD級以上の冒険者が五十六人来てくれる。ザーバン、斥候の冒険者はまだ戻ってないのか?」
「はい、ゲーレンス様。もうまもなくだと思います」
それから五分程で五名の冒険者が戻ってきた。
「最悪だ。ゴブリンキングが居たよ。ロードが三体にジェネラルは十体で、アーチャーやメイジも居る。総数は俺の見立てでは凡そ二千五百体だ」
一人がそう報告すると、もう一人が
「ソランが見たのが本隊だろう。私が確認したのは凡そ百体が本隊から少し外れた場所を進んでいた。恐らく町の防壁の水路部分を攻めに来ていると思う」
と報告する。他の三名も同じ意見のようだ。それを聞いた伯父とザーバンさんが作戦を練る。
「よし、冒険者五十六人に斥候に行ってくれた五人、それに衛兵隊の精鋭三十名でその百体を迎え撃って貰う。正面から来ている二千五百に及ぶ本隊は、残りの衛兵隊百二十名と、騎士団百名に私とマーチ、それにこの子達で対処しよう」
うーん、数の暴力があるから俺達でも厳しいと思うけどなぁ。皆の顔も暗いし。俺がそう思っていたらマーチ姉さんが喋った。
「皆さん、黙っていたのですが私のギフトは大魔導です。ですので極大魔法で凡そ千体〜千五百体を殲滅します。残りを何とかお願いします」
その言葉に皆の顔が希望に輝く。サイに至ってはよーし、僕も上級魔法で五百体は殲滅してやるなんて言っている。
「皆、聞いたとおりだ。必ず町は私達で守れる。なに心配するな。ここに居る子供たちも毎日百体のゴブリンを退治していた。それも余力を持ってだ。二千五百体だろうが余裕で殲滅出来る」
いや、伯父上、余裕はないからね。マーチ姉さんが出来るだけ削ってくれて何とかってトコでしょう。俺はそう思ったけど黙っておいた。士気を下げる必要は無いからね。
「レイナウド、カール、セレナ、ガイ、サイ、キャル、メイは何時もの布陣でマーチが魔法を放つまで、マーチを守ってやってくれ。サイとメイは放てる魔法をバンバン撃ってくれて構わない」
伯父のその言葉に俺達はハイッと返事をして、防壁の外に出る事になった。何故か伯父に呼び止められた俺は、ギフトの装備を着けて防壁の上に伯父と行く。そして、
「ガイ、ここからなら今までより高いだろうから、熟練度も上がるだろう」
って俺を突き落としやがった。伯父上、スパルタ過ぎます……
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