第十一話 二年経った

 そうして二年の月日が流れたけど、俺は未だに能力1しか開花してないんだ。でも熟練度は上がったよ。今は衛兵隊の皆さんと模擬戦をする時に、装備をつけて模擬戦をしているんだ。

 今はこんな感じになっている。


能力1[蟻] 熟練度(5-3-1)

蟻牙小刀 熟練すれば石でも切る事が出来る小刀

蟻頭鎧  熟練すれば鉄の武器では傷つかない鎧

蟻重力  熟練すれば高い所から落ちても大丈夫


 熟練度の横の数字が上から対応しているんだ。


 蟻牙小刀が熟練度5。蟻頭鎧が熟練度3。蟻重力が熟練度1になる。重力は養護院の塀から装備をつけて飛び降りていたら1になってた。今は衛兵隊の二階から飛び降りてるんだ。その内に2になると思う。

 そして、熟練度5の蟻牙小刀だけど俺は石を切れる様になった。それもキレイな断面を見せてスッパリとだ。だから模擬戦の時は衛兵さんに鉄の鎧を着て貰っている。革鎧だと切ってしまうからね。

 鎧は前よりも軽くなって防御力も上がったようだ。鉄の剣が当たっても傷がつかなくなったんだ。でもどうせなら熟練度を5にしたいと思ってる。


 マーチ姉さんが言うには恐らくだけど、熟練度は5が最高位だろうって話だ。だから全ての熟練度が5になった時に、次の能力が開花するんじゃないかって言ってた。


 そうそう、それと伯父のゲーレンスが一年前に、この辺境都市に常駐になったんだ。騎士爵の位で辺境伯様の与力になったそうだ。近衛騎士からだと降格になるらしいけど、伯父はむしろ喜んでいた。

 そして、マーチ姉さんにプロポーズしたんだ。返事はオーケーで、隠れマーチ姉さんのファンクラブは血涙を流してたそうだ。でもそんな皆が二人を祝福していたよ。マーチ姉さんの幸せを第一に考えろと、ファンクラブの会長が激を飛ばしたとかなんとか……


 そして俺の初恋も終わりを告げた。俺も一人で涙を流したよ。でも、勿論二人にはそんな素振りは見せなかったけどね。それから一年経って、七歳になった俺達はギフトの開花も目覚ましいという事で、伯父の指揮のもと、近くの弱い魔物の討伐に参加出来る事になったんだ。


「レイナウド、カール、セレナ、身分的には三人の方が私よりも上になるが、コレからは軍事行動になる。よって、指揮官である私に従って貰わなければならない。だから敬称では呼ばず、呼び捨てで呼ばせて貰う。コレは三人が成人して、もしも軍事行動を取る時にはままある事だから、今のうちに慣れておくほうがいい。質問はあるか?」


「「「ありません」」」


 おお、凄いな三人とも。ちゃんと伯父の言葉に従っているよ。


「ガイ、キャル、メイ、サイの四人も私の指揮下に入る。よって、四人も私のいう事を守って行動する事。いいか?」


「「「「ハイッ!」」」」


 俺達の返事を聞いて満足そうに頷いた伯父は、これからの行動の説明を始めた。


「今回はこの都市の近辺に最近になって多くなってきたゴブリンの間引きを行う。七人は幼い頃『今でも幼いが……』より一緒に訓練をしてきたようだ。よって、隊列を自分たちで考えてみて欲しい。決まったら私に報告してくれ」 


 そう伯父に言われた俺達は最年長のレイの側に集まった。


「私の意見を先ず聞いてくれ。前衛として、カールとガイの二人。中衛に私とサイ、それにメイ。後衛として、セレナとキャルがいいと思うが、どうだろうか?」


  レイがそう言うが俺はそこに待ったをかけた。


「レイ様、中衛にメイを入れる根拠は?」


「ガイ、メイは確かに生活魔法のギフトだが、その中に土壁がある。ゴブリンアーチャーや、ゴブリンメイジが居たらメイの土壁が非常に有用だと考えたんだ」


 その説明に俺は納得はしたが、今度はメイに確認をした。


「メイはそれで大丈夫か?」


「うん、ガイやカール、それに後衛のキャルやセレナが危ない時は私が土壁で守る」


 この一年で俺はレイ以外を呼び捨てで呼ぶようになってる。レイからは私も呼び捨てでと言われてるが、流石にそれはと遠慮してるけどね。


「メイがそう言うなら、僕はその布陣に賛成するよ」


 俺が先ずは賛成したら、他の皆も賛成したので、レイが伯父に報告する。


「うむ、私もその布陣が最適だと思う。リーダーは中衛のレイナウドという事でいいか?」


 伯父が全員を見ながらそう聞くが、全員がシッカリと頷いた。


「よし! それではゴブリン退治にこれより出かける。リーダーであるレイナウドは大変だが、戦況をよく見て自分のチームの状態も確認しながら、引き際も見極めるように。基本的に私や付き添いであるこの二人の騎士は手出しをしない。七人で良く考えて行動するように、私からは以上だ。質問はあるか?」


「ありません!」


 レイの返事により、俺達は都市の門を出てゴブリン退治作戦に取り掛かる。


 伯父と二人の騎士は俺達から五百メートル離れて見守っている。俺達は前衛の俺とカールが辺りを慎重に確認しながら前進していた。ゴブリンが多く目撃される場所まで来た時に、カールが不自然な動きをする草に気がついた。手信号で、俺や中衛の三人に知らせてくれる。中衛の三人は更に後衛の二人に手信号で知らせている。


 俺とカールは頷きあい、俺が先頭になって前進した。すると、その草むらから矢が飛んできた。


「前方、三十メートルの位置にゴブリンアーチャー! 数は未定、他に通常ゴブリンも居る。警戒!」


 俺はその言葉を出しながら走り出す。俺の後ろにカールがピッタリと着いてきている。


 草むらから二体の棍棒を持ったゴブリンが飛び出てきた。アーチャーは回り込んで中衛を狙うつもりのようだ。俺はカールに手信号で知らせて中衛の守りに行かせた。

 そして、目の前のゴブリンを先ずは一体、斬り伏せた。

 二体目が棍棒を俺めがけて振り下ろしてきたが、俺は棍棒ごとゴブリンを斬る。そして、前方にはもう敵の気配が無いことを確認してから、カールの補佐に向かうが、メイの土壁で足止めされたゴブリンアーチャーをカールが斬り伏せていた。


 それから三分、七人で辺りを警戒してから敵が居ないと判断して、倒したゴブリンから魔石を取り出してサイに焼いて貰った。


 そしてリーダーのレイの元に集まり先程の戦闘について話し合いをした。特に注意する点は無いという結論に至り、俺達は更にゴブリンを退治する為に進む事にした。 

 



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