第八話 グレード商会のご子息
俺様の名前はダイアン様だ。この辺境都市だけでなく、帝都でも一番のグレード商会の跡取りなのだ。超優秀な俺様は
「ダイアンよ、お前は母に甘やかされワガママな子になってしまった。今のまま成長するようならば、私の跡を継がせる訳にはいかない。暫くの間、辺境都市に行きその性根を治しなさい」
そう言っていたが、
それからの俺様は
先ず取り掛かったのは部下を作る事だ。超優秀な俺様に相応しい部下を最低五人は集めないといけない。俺様は町に繰り出し、部下に相応しい者を探していた。
パン屋の息子が俺様の部下になった。俺様がそのパン屋のパンを全て買い取ってやったら、涙を流して俺様の部下に喜んでなったのだ。次は服屋の娘だった。ダサイデザインの服しか無かったので、俺様は商会の服飾部門の者を連れてきて、その服屋の服を全て帝都で流行っている最新デザインの服に作り変えてやった。そして、雑貨屋の息子に食堂の娘、更には薬屋の息子も俺様の部下になった。
皆が喜びで涙を流しながら俺様の部下になった。そして、俺様の部下の各店はグレード商会の傘下に入った。コレで商売も安泰なんだから俺様は良い事をしたものだ。
そして、神選の儀式の日がやって来た。
「グフフ、とうとう俺様の素晴らしさが分かる時がやって来たな」
「そうよ〜、ダイアンちゃんは誰よりも優秀なんだから、金色に輝くに違いないわぁ〜」
「
俺様と
「いいか、超優秀な俺様の部下なのだから、最低でも銅色には輝くのだぞ。白や黒になった者は部下から外すからな」
俺様がそう言うとパン屋の息子が代表して言った。
「はい、分かりました。ダイアン様」
その目には何故か希望のような光が灯っていたが、きっと俺様に対する賞賛の光だろう。貴族二人の儀式が終わりいよいよ俺様の番となった。俺様は
「
「ダイアンちゃん、頑張ってね! きっと神様がダイアンちゃんを祝福してくれるわっ!」
俺様は
その頃、部下の少年少女達は少しだけ希望を見出していた。
「なあ、白とは言わないけど黒に輝かないかな?」
「ね、そうだよね。黒なら部下を辞めていいんだよね」
「父ちゃんが泣いてたもんな。グレード商会の傘下に入ってから、傘下料が高くて」
「神様、お願いします。どうか黒に!」
「……」
さあ刮目せよっ! この俺様の輝きをっ!!
俺様がもったいぶって水晶に手をおくと、今までに見たことがない輝きを放った。黒っぽい銅色だ。おお、やっぱり俺様は神にも期待されているのだな。俺様はドヤ顔で司祭を見た。すると司祭はヘンテコな事を言い出した。
「うーん、この輝きは…… どうやらダイアンくんは日頃の行いに問題があるようですね。神は全て見ておりますよ。悔い改めて今後は精進しなさい。ダイアンくんのギフトは露天商ですね。ここからでもお父様のような大商人になれる可能性はあります。シッカリと今後を考えて行動するのですよ」
などとバカな事を言うので俺様は無視して
「ダイアンちゃん、見たことがない輝きだったわ。きっとものすごいギフトを授かったんでしょう?」
「
俺様が誇らしげにそう言うと
「えっ? 露天商……」
「はい、露天商です」
そしたら
「ケッ、どんな凄いギフトを授かるかと思ったら露天商だなんて。最下位の商人とか、お前はもう私の息子じゃないわ。一緒にも住めない。私は帝都に戻るから、お前はコレから一人で生きなさい。旦那様にいって離縁を解いてもらわないと。あ、あの家は私の
そう言うと
それから部下たちの儀式が終わった。部下たちは五人とも銅色に輝いた。うむ、まあ最低限だがこれからも俺様の部下としておいてやろう。
「うむ、最低ラインの銅色だが、俺様は優しいからこれまで通り部下としておいてやる」
俺様がそう言うとパン屋の息子が
「はい、有難うございます。ダイアン様。けれど、大丈夫ですか? お母様の事は?」
心底から俺様を慕っているパン屋の息子がそう言うが、俺様は豪快に笑って言ってやった。
「心配するな、
俺様の言葉にまだ不安そうな顔をしているが、俺様は気にしなかった。
そして、最後に残った三人の結果を見て俺様は思った。
うん、超優秀な俺様の部下ではなく、直属の配下として雇ってやってもいいなと。しかし、最後のヤツのギフトは何だ? 虫だって? 役に立ちそうにないクズギフトのようだな。そうだ、あの女二人だけを俺様の配下にしてやろう。そう思っていたが、その機会は貴族によって潰された。まあ、いい。俺様には忠実な部下が五人もいるしな。これからこの辺境都市で俺様の優秀さに皆が賞賛を始める事だろう。だから俺様は最後の男、ガイのクズギフトを散々バカにして町人どもに言いふらし、家に帰るのだった。
しかし、家に戻った俺様の前にグレード商会の辺境都市支部長に、二日前になった男が立って待っていた。
「ダイアン様、いやダイアンよ。会頭からのお達しで今日よりお前をグレード商会支部の丁稚として扱う事になった。よって、今日からお前は商会に住み込み商売のイロハを叩き込む。覚悟するように」
こう俺様に言ったかと思うと支部長は俺様の部下たちに向けてこう言った。
「君たちも悪かったね。それぞれの家に支払って貰っていた傘下料については多すぎた分は返金したよ。それで、ご両親達とも話し合いをして、コレからも傘下で良いと言って下さったから、グレード商会の傘下のままではあるけれど、コレまでのような無茶な事は絶対にないからね。調べるのに二日も掛かってゴメンよ。それと、ダイアンの部下として君たちにも迷惑をかけたから、コレはその迷惑料だ。受け取って欲しい。ご両親にもちゃんと言ってあるからね。そして、コレはお願いなんだが、もしもダイアンがマトモになったなら、どうか友達として付き合ってやってくれないか。勿論、今すぐなんて事じゃない。私が責任を持ってダイアンをマトモな人間にする。それからという事でよろしく頼むよ」
俺様の事なのに俺様を抜きにして話しているから俺様は怒ってソイツに言ったんだ。
「貴様、たかが支部長の分際で何だ、その言いぐさは!
しかし俺様のその言葉に支部長は言い返してきた。
「その
そう言うと支部長は俺様の手を引っ張って支部へと連れて行ったんだ。超優秀な俺様の今後は一体如何なるんだ?
こんな事があったとはガイ達は何年も知らなかった……
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