第6話 変身人間との再会。
しかし、犬になって、野宿するとは思いませんでした。
姿は犬でも、中身は、女子高生なのです。なんだか、情けなくなりました。
やっぱり、人間に戻って、どこかに泊めてもらおうと思ったりもしました。
そんなことを考えながら歩いていると、廃校に出ました。
当然のように真っ暗です。絶対、お化けが出そうで、足を踏み入れることが出来ません。
でも、ある意味、犬の姿なら、安全でもあります。
私は、勇気を振り絞って、中に入ってみました。
犬の目なら、暗闇でも、何とか見えます。私は、何かあっても、すぐに逃げ出せるように、一階部分の、一番広い教室に潜り込み、丸くなって横になりました。辺りは静かで物音一つしません。
都会と違って、逆に静か過ぎて、なかなか寝られませんでした。
「慎一くん、どこにいるの……」
私は、そう呟くと泣きたくなりました。
そのウチ、昼間に歩きすぎて疲れたのか、うとうとしてきました。
そして、いつの間にか、寝てしまいました。
ところが、少したったころ、なにか物音に気付いて、目が覚めました。
犬の耳は、敏感なのです。私は、すぐに起き上がって、逃げる用意をします。
でも、人の気配はしません。廃校の一部が壊れた音のようでした。
ホッとすると、また、横になって寝ることにしました。
そんなことが朝まで、何度もあって、結局、余り寝られませんでした。
明るくなって、廃校の外に出て、元の姿に戻ります。
思い切り伸びをして、今日が最後だと思い直して、慎一くんを探すことにしました。
とは言っても、探すところと言っても、昨日探した場所をもう一度行くことしか思いつきませんでした。
当てもなく歩き回ることの虚しさを痛感しながらも、じっとしてはいられませんでした。
まずは、聞き込みから始めることにしました。
昨日の駐在所、定食屋さん、雑貨屋さんに行って見ました。
でも、返事は同じで、見ていないということで、かなりガックリきました。
「もう、探すところはないよ」
私は、駅のベンチに座り込んで、頭を抱えました。
そろそろお昼です。そういえば、朝ごはんは食べてないことに気がついて、雑貨屋さんでパンを買いに行こうと立ち上がりました。
力なく歩いていると、親切にしてもらった、村長さんと出会いました。
「アンタ、まだ、いたのかい?」
そういわれても、返す言葉が見つかりません。
「友だちは、見つかったのかい?」
私は、首を横に振りました。
「そうかい、残念だね。疲れただろ。なんか、顔色が悪いぞ」
私は、見ず知らずのおじいさんにまで心配をかけていることに気付いて、
申し訳ない気持ちになりました。
「ちゃんと食べているか? もう昼だぞ。よければ、ウチで、昼飯でも食わんか」
私は、思わず顔を上げました。
「遠慮はいらんといっただろ。どうせ、うちには、ばあさんしかいないんだから、ついて来なさい」
私は、その申し出に、ありがたく思って、後について歩きました。
「お前さんは、がんばっているな。でも、諦めるなよ。きっと、友だちは見つかるから」
おじいさんの言葉を聞いても、私には、慰めとしか聞こえませんでした。
「アンタの思いは、きっと、通じているはずだ。向こうから、やってくる。
それが、運命というやつだ」
そんな話を聞きながら、おじいさんのウチに着きました。
中からおばあさんが出てきて、私を見て、ビックリしながらも、笑顔で迎えてくれました。
「ばあさん、昼飯を食わせてやってくれんか」
おじいさんの言葉に、おばあさんは、すぐに台所に入っていきました。
「あの、ありがとうございます。あたしは、何もお礼が出来ないのに、親切にしてくれて、ホントにありがとうございます」
「気にしなくていい。アンタのように、がんばっている若い子を見ると、わしも応援したくなるんだ」
恐縮しながらウチに上がらせてもらいました。
すぐにおばあさんが、昼食を持ってきてくれました。
「田舎そばだが、おいしいから、たくさん食べておくれ」
そう言って、出してくれたのは、もりそばに野菜の天ぷらでした。
私は、それを見て、涙が勝手に溢れてきました。
「どうした? そばは、嫌いか」
私は、首を横に振って、涙を拭うと掠れた声で言いました。
「うれしいんです。私みたいな、見ず知らずの子供に、こんなによくしてくれて、この街の人たちは、みんな親切でいろんなことを教えてくれました。それが、うれしくて……」
「そんなことは、当たり前のことじゃ。アンタの住んでる都会の事は知らんが、この村は田舎で人も少ない。みんながみんな、寄り添って生きていかなきゃいかんのじゃよ。当たり前のことじゃ」
「いいから、早く食べなさい」
「ハイ、いただきます」
おばあさんにいわれて、私は、そばを食べました。このとき食べた、そばの味は、一生忘れません。おいしい天ぷらにそばは、とても合う気がしました。
お腹一杯になると、私は、お礼を言って、もう一度探してみることにしました。
あと半日しかないのです。諦めるわけにはいきません。悔いを残さないためにも、自分が納得するまで探します。
「あの、ホントに、ありがとうございました。このご恩は、一生忘れません」
「がんばりなさい」
「気をつけてね」
私は、おじいさんとおばあさんに見送られて、ウチを後にしました。
靴を履いて、引き戸を開けようとすると、なぜか、向こうからドアが開きました。
「あっ!」
「えっ!」
お互いを見て、驚きの声が、同時に上がりました。
「美樹ちゃん…… どうして、ここに?」
私の目の前にいるのは、紛れもない、慎一くんでした。
その声と顔を見て、もう自分を止めることができませんでした。
「慎一くん…… ずいぶん探したんだよ。心配したんだよ。もう、会えないと思ったんだよ」
あとは、もう、言葉になりませんでした。私は、慎一くんに抱きついて、大声で泣き崩れました。
涙が止まりませんでした。そんな私を、慎一くんは、黙って抱きしめてくれました。
「ごめんね、心配かけて」
私は、一生分の涙を流したくらい、号泣していました。
「慎一くん、ごめんね。あたしが悪いの。ごめんなさい」
そして、片手に抱いているウワンちゃんも抱きしめました。
「ごめんなさい。あたしのせいで、こんなことになって……」
私は、涙でぐしゃぐしゃの顔でウワンちゃんに謝りました。
「そんなとこで立ってないで、上がったらどうかな」
おじいさんが、私と慎一くんに言いました。慎一くんは、私を支えながら中に上がりました。
私は、まだ、涙が止まらず、泣いていると、おばあさんが、ティッシュを出してくれて涙を拭きました。
「何があったのか知らんが、よかったの」
私は、何度も首を縦に振りました。
「二人で、話もあるじゃろ。わしは、ちょっと買い物に行ってくるから、ゆっくりしていなさい」
「それじゃ、洗濯でもするかね」
そう言って、二人は、席をはずしてくれました。
「すみません、気を使わせて」
慎一くんは、そう言って、二人に頭を下げると、おじいさんたちは、笑顔で答えました。
二人が見えなくなると、私は、慎一くんに向き直ると、正座したまま手をついて、頭を下げました。
「ホントに、ごめんなさい」
「何を言ってんだよ。謝るのは、ぼくの方だよ。美樹ちゃんに黙って、逃げちゃって」
「ううぅん、だって、そんなことになったのは、あたしのせいだもん」
「もう、いいんだよ」
そう言って、私の手を持って、顔を上げさせました。
「それにしても、よく、ここがわかったね」
「ずっと、探してたのよ。だって、他に行くとこないと思ったから」
「だから、言っただろ。美樹に見つかるから、他のところに行こうって」
ウワンちゃんが間に入ってきました。
「そうだけど、他に思いつかなかったから……」
慎一くんが、バツが悪そうな顔をして笑った。
「慎一くん、戻ろう。ウチに帰ろう」
「う~ん、でもなぁ……」
すると、ウワンちゃんが言いました。
「いいんじゃないかな。確かに、慎一のやったことは問題だが、ぼくが調べた限り、すでに過去のものとなりつつある。何とか誤魔化せると思う。もしもの時は、ぼくが力を使って、記憶を消すことも出来る」
「でも、学校のこともあるし」
「そこは、美樹にやってもらおう。その責任は、取ってもらえばいい」
私は、ウワンちゃんの話を聞いて言いました。
「やるわ。あたしが何とかする。だから、いっしょに学校に戻ろう」
「でも、キミの方は、どうするんだ? 変身人形とか、そのペンダントとか、そういえば、キミの親とかは、心配してるんじゃないの?」
すっかり忘れていた。でも、今は、そんなことより、慎一くんと帰ることのが優先です。
私は、あの雑貨屋さんで会った、魔女の店員さんの話をしました。
だから、今日中に東京に、慎一くんと戻らないといけないのです。
「わかった。それじゃ、戻ろうか」
「それじゃ、早く電車に乗らなきゃ、夜までに戻れないわ」
そこに、タイミングよく、おじいさんとおばあさんが戻ってきました。
「話はついたかね」
「ハイ、これから、二人で東京に戻ります」
私は、そう言いました。すると、おじいさんもおばあさんも、うれしそうな顔をして言いました。
「ちょっと待っててね」
おばあさんは、そう言うと、台所に入ると、急いでおにぎりを二人分作ってくれました。
「これを持って行きなさい。お腹も減るだろうから、二人で仲良く食べるんだよ」
「ありがとうございます」
私は、何度も頭を下げました。
「それじゃ、急ぎなさい。そろそろ電車が来る時間じゃ」
「ハイ、お世話になりました」
私と慎一くんは、揃って何度もお礼を言いました。
「そうそう、あんたたち、名前はなんていうんじゃ」
このときになって、初めて私は、自分の名前を伝えてなかったことに気がつきました。
「あっ! ご、ごめんなさい。あたしは、五十嵐美樹といいます」
「ぼくは、中村慎一です」
「もう、忘れないから、安心してな。また、遊びに来てくれんか?」
「ハイ、必ずきます」
「ほらほら、おじいさん、いつまでも話していたら、時間に間に合わんよ」
「そうじゃった。急ぎなさい」
私たちは、後ろ髪を引かれながら、駅まで走り出した。
「美樹ちゃん、急いで」
慎一くんは、そう言って手を出します。私も手を伸ばします。
私たちは、しっかり手を繋いだまま、駅まで走りました。
顔が合うと、私たちは、笑っていました。
駅が近づいて、ホームに入ると、すぐに電車が入ってきました。
私は、息を切らしながら、やってくる電車を見ました。
そして、ホームに止まり、ドアが開くと、私たちは、乗り込みました。
ゆっくりと電車が走り出します。その時、慎一くんが、窓の外を指差しました。
その時、私の目に飛び込んできたのは、駐在さん、定食屋のおばちゃん、
雑貨屋のおじさん、もちろん、村長のおじいさんとおばあさんが、大きく手を振って見送ってくれたのです。
私は、それを見て、感激してしまい、また涙が溢れてきました。
私は、窓を開けると、大きく手を振りながら、大声で叫びました。
「ありがとう! お世話になりました。さようならー」
小さくなる人たちが見えなくなるまで、私は何度も叫んで、手を振り続けました。
「よかったね。みんな、親切な人たちで」
「うん」
私は、そう言って、慎一くんの胸に顔を埋めました。
慎一くんは、私の頭を優しく撫でてくれました。
やっと、落ち着いた私たちは、向かい合って椅子に座り直しました。
そして、お互いにここに来たときのことを話しました。
慎一くんは、あの事件の後、すぐにウワンちゃんと逃げるように、街から出て行ったこと。
でも、逃げる先が思い付かない。なので、やっぱり、この街に来るしかなかった。
ウワンちゃんは、きっと、私が探しに来ると言ってたけど、もし、見つからなかったら、どうするつもりだったのだろう?
行く先々で、私よりも一足早く、この街に来ていたので、定食屋とか道の駅などで、目撃されていたこと。
あの、おじいさんのうちには、逃げたその日の夜に私と同じように、一晩泊めてもらったこと。
その後は、アチコチを転々として、森の中で夜をすごしたということでした。
逆に、私の話を聞いた慎一くんは、ビックリしていました。
私の行動力と犬になって野宿をした話に、驚いて声も出ませんでした。
ウワンちゃんは、呆れて何も言いません。
「まったく、なにかあったらどうするんだ。キミの親になんて説明するんだよ」
「わかってるわよ。ちゃんと、怒られるから」
「そういう問題じゃない。美樹のような若い娘が、三日も留守にして、それじゃ、家出じゃないか。警察とか学校に連絡していたら大事になっているぞ。どう、言い訳するつもりだか知らないが、ぼくは、助けてやらないから」
「そんなぁ~、ウワンちゃん、助けてよ。このとおり、お願いします」
私は、両手を合わせてお願いしました。
「ぼくは、知らない」
「そんなこといわないでよぉ~、ウワンちゃんのイジワル」
「人聞きの悪いことを言わないでほしいね」
「まぁまぁ、ウワンもその辺で許してやってよ」
「まったく、真一は、美樹には甘いんだから。しょうがない、わかった、やってみる」
「ありがとう、ウワンちゃん」
私は、膝に抱いているウワンちゃんを抱きしめました。
「やめろ、赤ん坊扱いするな」
「ウワンちゃんは、赤ちゃんでしょ」
「そんなこと言うなら、助けてやらないぞ」
「ウソウソ、ごめんなさい。もうしないから、助けて」
ウワンちゃんは、ため息をつくと、静かに眠ってしまいました。
「それにしても、美樹ちゃんも危ないことするねぇ。何かあったら、どうするつもりだったの」
「そんなこと、考えてないわ。慎一くんを探すのが、先だったんだもん。それに、あたしは、これがあるし」
そう言って、変身人形が入ったポーチを見せた。
「だから、それは、そういうためのものじゃなくて……」
「わかってるわよ。でも、ずいぶん、役に立ったのよ」
それだけは、わかって欲しかったので、自慢げに見せた。
「それに、三日以内に見つけるって、約束したんだもん。考えている場合じゃないわよ」
慎一くんも半ば呆れていました。でも、これで、魔女の人たちとの約束は、果たせたことで満足していました。
三日ぶりに戻った東京は、田舎と違って、すごくざわついて人も多くて、早くも田舎が懐かしく思いました。
久しぶりに自分の知ってる街に帰ると、自宅に戻るより先に、あの雑貨屋に行きました。
私たちは、商店街を通り抜けて、路地を曲がると、雑貨屋は、そこにありました。
私は、勢いよくドアを開けて中に入りました。
「いらっしゃいませ」
「あの、魔女さんはいますか?」
若い女の店員さんは、私たちを見て、目を丸くしていました。
でも、すぐに微笑んで、静かに頷きました。
奥から、あの三角帽子を被った夢の中に出てきた魔女が出てきました。
「あの、約束通り、慎一くんを探してきました」
すると、魔女は、意味深な笑みを浮かべると、一人納得したように、頷くといいました。
「よろしい。では、約束通り、変身人形は、あなたにお返ししましょう」
「ありがとうございます」
「それと、あなたに免じて、今回だけは、許すとしましょう」
「ありがとうございます」
私は、もう一度言って、深々と頭を下げました。
「それと、もう一つ、条件を出します。この店をあなたたちに任せます。もちろん、店長としてではなく、アルバイトとして、この店で働いてもらいます。お給料は、出します。このマジェリカの言うことを聞いて、働いてもらいます。それが条件です。どうですか?」
「えっ! えっと、あの…… 慎一くん、どうする?」
言われて慎一くんも考え込んでいました。すると、ウワンちゃんが言いました。
「いいんじゃないか。経済的にもそれのがいい」
「お、おい、ウワン……」
「いいじゃないか、食費を稼ぐつもりで、働けばいい」
「でも、学校が……」
「その点は、心配ない。その許可くらいは、私が魔法で何とでもなる」
魔女が胸を張って言いました。
「あたしやります。がんばります。やらせてください」
私は、俄然やる気が出てきてそういいました。
「別に、毎日じゃなくてもいい。休みの日とか、試験がない日に手伝ってくれれば、それでいい」
「わかりました。よろしくお願いします」
私は、そう言って、若い店員さんにも頭を下げました。
「そっちの男はどうだ?」
「わかりました。ぼくもお世話になります」
「よろしい。では、これからは、そこのマジェリカを店長代理として、指示に従ってもらう。難しい事はないから安心しろ。それと、そこの超能力赤ん坊、お前も人数に入っているから、仕事中は、寝るな」
「こんな赤ん坊にも働かせるつもりなのか? 」
「アラ、ウワンちゃんは、赤ちゃん扱いしないんじゃなかったかしら」
私は、ウワンちゃんを横目で見ながら言いました。
「わかった」
ウワンちゃんは、不服そうだったけど、引き受けました。
「それじゃ、マジェリカ店長、明日からよろしくお願いします」
「ハイ、こちらこそ。よろしくね」
私たちは、この日は、握手をして別れました。
「明日から、がんばろうね」
「なんで、こんなことになったんだろう……」
「まぁ、いいじゃない。これで、丸く収まったんだもん」
なんとなく、納得いってないような感じの慎一くんでした。
私たちは、駅前で別れて、三日ぶりに自宅に帰りました。
さて、パパとママになんて言い訳しようか、考えながら歩きました。
でも、そんな都合がいい言い訳なんて思いつくはずもなく、ウチの前に着いてしまいました。
「こうなったら、素直に怒られよう」
私は、そう覚悟して、ドアを開けました。
「ただいま」
「お帰り、夕飯、出来てるわよ。食べるわよね」
私は、ママの反応に、一瞬驚きました。
「あの、ママ……」
「勉強会のほうは、どうだった? ちゃんとやってきたのか」
「えっ?」
リビングにいるパパが声をかけてきました。勉強会って……
何のことか、わかりません。
「お姉ちゃんは、勉強が苦手だからなぁ」
弟までが言いました。私は、何のことかわからないでいると、ママが言いました。
「お泊りするときは、心配するから、もっと早めに言いなさいね」
「えっと、ママ…… それって、どういうことなの?」
「何をいってるのよ。あなたの塾の先生から、急な話だけど、美樹ちゃんの成績を心配して、短期合宿の補習があるって、電話があったじゃない。何を言ってるのよ」
そうか。これって、あの、魔女が魔法を使って……
私は、急に思いついて、胸のつかえが取れました。
「そう、そうなのよ。もう、難しくて、大変だったわ」
「もう、あなたは、来年は受験なんだから、しっかりしてね」
「ハイ」
私は、明るく返事をしました。そして、心の中で、魔女の人に手を合わせて感謝しました。
久しぶりに我が家で食べる食事は、おいしかったです。でも、田舎で食べた、
おばあさんの料理の方が私には、もっとおいしく感じていました。
夕食が終わって、アルバイトのことを言ってみました。
「パパ、あたし、アルバイトしたいんだけど……」
「アルバイト? 何のバイトだ」
「そこの商店街の路地にある、可愛い雑貨屋さんなの」
「そりゃ、いいけど、危ない仕事じゃないだろうな」
「全然違うわよ。店員さんは、可愛い女の人だし、それに、慎一くんもいっしょにやるの」
「慎一くんがいっしょなら、いいけど。お姉ちゃんにアルバイトなんて、できるの?」
「できるわよ。あたしにだって、それくらい……」
私は、ママに言い返しました。なんか、信用されてないようで、つい、口調が強くなります。
「ママは、心配だわ。あなたにお仕事が勤まるのか…… 今度、見に行ってもいい」
「いいけど、ママがほしいようなものは、ないわよ。学生向きの可愛いものばかりだから」
「あら、いいじゃない。ママだって、可愛いものは好きよ」
確かに、ウチのママは、私と弟の二人も子供がいるのに、まだ、少女趣味から抜けてない。
パパは、それに文句は言わないけど、余りいい気はしてないようです。
「とにかく、明日から行くから、帰りは遅くなるけど、心配しないで」
「迷惑はかけるなよ。それと、学校の先生にも、ちゃんと届けを出すんだぞ」
「ハイ、わかってます」
「それと、塾がある日は、休むんだぞ。わかってるな」
「それも、わかってます」
私は、アルバイトの許可ももらえて、ホッとしました。
明日から、がんばろう。私は、そう心に誓いました。
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