第5話 貴族の従者
◆
まったく。
わがあるじも、物好きが過ぎる。
色好みとか言うて通ぶっておられるが、すでに、ゲテモノの世界じゃ。
これが、まともな貴族の家なら、それがしも、あるじの用(ふふ、ふ)のすむまで、気の利いた女房(貴人に仕えている女性)の|
しかし、あのような化け物屋敷では……。
あるじ殿とて、見た筈じゃ。
あの、雷の恐ろしきさま。
あれは、雷神の
それなのに、性懲りもなく、あの女のもとへ行かれるとは。
なにより、同行を命じられた、わが身の不幸……。
あっ。
あれは…? ぴかりと。
あの、赤松の梢に。ほら、ぴかりぴかりと。
あるじ殿。いけませぬ。帰りましょう。
なにやら妙でございまする。
あるじ殿。あ、あるじどのっ!
ああっ。
お体がっ!
まるで、誰かにつままれたように、空中高く……。
誰か、だれかぁーっ。
おお。
お体が、くるくる回っておられる。わが頭上で、主殿のお体が、
くるくる、くるくる。
くるくる、くるくる。
うわあ。
ち、千切れた。
あるじ殿の、手が。
足が。
あるじどのーっ!
なんだこれは。
ぼたり、ぼたりと。
上空から。
うわっ、目に入った。
生臭く、どす黒い、この、生温かい水は……。
血……。
あるじ殿の、千切れた体から落ちてきた、血。
ふうぅぅぅぅぅーっ。
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