第4話 貴族
◆
ああ、驚いた。
何やら、得も言われぬ光を、屋敷のうちに認めた途端、|曇天(どんてん)にわかにかき
ぴかり、どろろん、どかん
あれは、雷神であったろうか。
恐ろしい。恐ろしい。
やはり、かの女には、近づかぬ方が……。
いろいろ悪い噂もある。
しかし、ちらりと
わが
月とすっぽん、天女と鬼女じゃ。
よく見えたわけではないが、ちらり、見るだけで、充分わかった。
知らなんだ。あのように、|珠(たま)のごとく光り輝く女が、この世にあろうとは。
なぜ、あの美しい女が、わが妻ではないのか。
欲しい。
あの女が、どうしても欲しい。
なに? さゆりの君から、返歌とな?
ゆめまぼろしではなかろうな。
今まで誰一人として、かの君から、そのようなものを贈られた者はないのだぞ。
さては、かの高慢な君も、それがしの魅力に、くらりときたか。
ほほ。
ほほほ。
どれ、見せてみい。
うむ、
これが、かの君の香なのか。
君来るとわがまつしたの
好きものではないか。
確かに今宵は十七日、立って待つほどにすぐ、月が上る。それを、今宵駆けくるときた。
夜は長いに。
男が来るのが、待ち遠しいのだな。
松の樹の下で待つ、と。
さすれば、外で?
あの美しい君と。
うう。
楽しみじゃ。
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