思春期ワクチン

@ramia294

第1話

 


 思春期は、たいへん。

 身体の急激な変化に。

 ついて来れない。

 置いてきぼりの心。


 思春期。

 疾風怒濤の時代。

 疾風怒濤?

 って、何?

 とにかく…。

 男の子の。

 お隣のあいつ。

 たいへんなひととき。

 


 

 バラバラの。

 心と身体の再統合までの苦しみから。

 逃げ込むように、夜の街へ。

 消えていくあいつ。


 私は理系女子。

 お隣の幼馴染のあいつのため。

 作ってみました。

 思春期の苦しみ。

 和らげる。

 思春期ワクチン。


 夏空が、秋空に入れ替わる様な。

 爽やかな思春期。


 身体の変化、緩やかに。

 心の成長、待っていてくれます。

 疾風怒濤の時代?

 思春期ワクチンを使えば。

 穏やかで、安らぐ時代に。


 優しさと微笑で、満たされた思春期。

 あいつも以前のあいつに。

 私の良く知る。

 ものごころついた時から知る、よく笑うあいつに。

 戻った私たちの子供のころからの友情。


 しかし…。


 この物足りなさは何?

 以前と同じあいつの笑顔に。

 苛つく私。


 学校でも、あいつの家族からも、あいつを思春期の荒れた海から救った。

 と、感謝されている私。

 あいつの変わらぬ笑顔と優しさ。

 なのに…。

 物足りない私。

 あいつとの距離。

 離れていくようで。

 おびえる。

 一人きりの。

 私の夜。


 救ってほしい。

 遠くに見える、夜の街明かり。


 真夜中のドアを開けると、お月様が。

 笑いながら私を見ています。

 気づきました。

 私は、以前のあいつと同じ。

 荒れた海に小舟で、漕ぎ出すおバカさん。


 私は理系女子。

 現状分析をしてみましょう。


 私自身が苛ついています。

 何故、苛つくの?

 以前と変わらぬ、あいつの笑顔が私を苛つかせる。

 あいつの笑顔が何故、苛つかせるの?

 きっと、あいつの笑顔が以前と変わらないから。


 私は、あいつに変わってほしいと望んでいる?

 どうして?

 落ち込む深い謎の迷路。


 お月さま。

 答えを教えてくれませんか。

 微笑む。

 お月さま。 


 一度だけだよと、教えてくれました。

 あいつが、思春期なら。

 私も思春期。

 私たちは、幼なじみの同い年。

 

 どうすれば良い?

 考える理系女子。

 あいつにどう変わってほしい。


 以前よりも特別な気持ち。

 私に。

 持ってほしい。

 

 鈍い、鈍い、理系女子。

 気づきました。

 思春期のもうひとつの顔。

 つらいだけでは、ない。

 輝く、思春期の時。


 私は、あいつに恋している。

 あいつにも同じ思い。

 持って欲しい。

 私にも欲しい。

 あいつの恋心。


 理系女子の夢。

 両思い。

 あいつに望む。

 わ・た・し。


 思春期ワクチンの効果半減期。

 三カ月。

 それまでの時間。

 理系女子は、女の子を磨きます。

 鏡の中の私。

 可愛くなれと、磨きます。


 春が過ぎ。

 夏休みまで、あとひと息。

 唇と頬を染めた。

 理系女子。


 ワクチンを持って、幼なじみの元に。

 覚悟していた。

 ワクチン効果の切れたあいつの。

 きつい目と罵声。

 ありません。

 戸惑う様な視線が、チラチラ。


「思春期ワクチン。僕のために、頑張ってくれたんだ?」


 頷く私。

 あいつの口から感謝の言葉。


 嬉しくて…。


 こぼれ落ちる涙。

 せっかくの練習の成果。

 化粧が、台無しに。


「頑張った。あんたが好きだから。元のあんたに、戻って欲しかった。でも違った。元に戻るのでは無く。私だけを…」


 理系女子。

 不覚。

 声をあげ、泣き出す。

 綺麗に成った私。

 可愛く成った私に。

 あいつから、告白させるつもりだったのに。

 私から、言っちゃう。

 おバカさん。

 泣いて、化粧もグチャグチャ。

 きっと。

 目は、パンダ。

 口は、アヒル。

 理系女子。

 計画甘かったか?


 あいつから、突然鏡が、差し出され。

 予想通り。

 目は、パンダ。

 口は、…。


「お前の事が、好きだ」


 あいつの突然の告白。

 理系女子。

 想定外。


 ドキドキ。

 メソメソ。


 ますます、化粧崩れる。


 想定外が、多過ぎる私。

 理系女子。

 失格。


 でも。

 あいつの彼女には…。

 合格。

 

       (^з^)/チュッ



 

 

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