悲しい夢

はー。ダル。


夕陽の部屋は、隣だった。


なんで、あいつなんだよ。


俺が、最初にあんたに出会ったのに…。


俺は、夕陽の部屋の壁に耳を当てる。


「桜賀は、やっぱりすごいね。どうして、欲しいの?」


またかよ。


なんだよ、それ。


「夕陽、愛してるよ」


ふざけんな、ふざけんな。ふざけんな。


枕を叩きまくった。


事が、終った。


俺、情けない。


「何で、そんな事言うの?」


なんだ。


壁に耳を当てるのをやめていたのに…。


大きな声がした。


耳を当てる。


「だから、もう終りにしたいって言ったの」


「どうして、夕陽。俺が、何かした?」


「何もしてないよ。だけど、高校卒業したら桜賀おうがと終りにするって決めてたから」


ああ、明日卒業式だな。夕陽


「どうして?別れる必要ないよね」


「だから、興味本意でやってただけだから。俺は、結婚もしたいし、子供も欲しい。桜賀には、それは出来ないだろ?それに、弟もゲイで。両親が嫌がるんだよ。俺はゲイじゃないし」


「何で、そんな酷い事言うの?」


「酷い?普通だろ?こんな関係長く続くわけない。俺が、あんたとしたかったのは興味本意で好きとかじゃない。いつだって、愛してるって言ったのはあんただけだったろ?そりゃあ、あんたはうまかったよ。俺が付き合った女より体に関しては上手だったよ。だけどね、俺は、女の子が好きなのわかってよ。桜賀」


「夕陽、嫌だよ。俺は、初めてこんなに人を愛したんだよ。夕陽」


「うるせーな。帰れ」


ガチャって、夕陽の部屋の扉が開いた。


自分の部屋の扉を少しだけ開けて覗いた。


「夕陽、夕陽」


ボロボロ泣きながら、桜賀さんが歩いてる。


「夕陽」


ガチャン…


すげー。泣いていた。


夕陽を思って泣いていた。



ガバッ  


「はぁ、はぁ」


動悸がする。 


胸が鷲掴みにされてるみたいだ。


スマホを見た、まだ二時間しか経ってなかった。


「クソッ」


布団を叩いた。


頭を掻いた。


あの夢、最近見なかったのにな。


桜賀さんに会ったからだな。


何で、あそこまで言われたクズが好きなんだよ。


命と話したい。


ブー


[今日も休み。行っていいよbar]


命から、メッセージがきた


[休みだったの?]


[夜勤明けで休み。明後日は、普通に休み]


[行っていいよ]


[じゃあ、19時に。barの前で]


[Venusだって]


[わかった]


命と会える。


それだけで、安心した。


20年前ー


「どうしたの?」


「大丈夫」


「何かあったの?」


「桜賀さんが、兄貴と別れて。もう試食会もやめるって」


「そんな何で、朝陽まで。そんな風に言われないといけないの」


「似てるからって、夕陽に。声も顔も…。でも俺は、夕陽のかわりに思えないって」


「そんな…。朝陽が、最初に出会ったのに」


「そうだけど、選ばれたのは夕陽だったから…」


「朝陽。泣かないで」


命は、俺の涙を拭ってくれた。



ハッ…寝てた。


結構、寝てた。


17時だった。


シャワーはいるかな。


俺は、シャワーを浴びて上がってきた。


また、酔っ払った桜賀さんは俺を求めてこないだろうか?


夕陽は、最低なんだよ。


あの日、あなたを散々傷つけた。


なのに、あなたは夕陽を好きなんだ。


20年も、あんな奴思ってるなんて勿体ないよ。


桜賀さんの人生。


「あー、あー」


何で、俺じゃないんだよ。


俺は、タオルで頭を拭いた。


イライラする。


でも、あの人は夕陽が南国にいるなんて知らないんだろうな。


あいつの嫁のstandstyle《スタンドスタイル》、通称スタスタってsns見てみろ。


イライラするから…


何故か、友達申請がきて。


何故か、友達になった。


三人目は、まだ書かれてなかったな。


最近、わかったんだな。


服を着替えた。


年齢差なんて、関係ない歳になっただろ?


カッターシャツにネクタイ、ジャケット、ジーンズ。


昔、桜賀さんがよくしていた格好。


俺も好きになったんだよ。


俺は、家を出た。




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