第77話 書く人を支える人
いつもいつもで恐縮なのですが、NHKプラスで「プロフェッショナル仕事の流儀」を観ました。ま、わたしはこの番組あまり好きでないので、普段は観ないのですが、取り上げられていた「プロフェッショナル」が「校正者」だったので、これは観てみようかなと思ったのです。フリーの校正者、大西寿男さんの仕事ぶりを追ったドキュメンタリーでした。
文章の校正って、作品を出版しない限り受けないので、具体的にどういうことをするのかよく分からなかったので、興味深く番組を観ることができました。
わたしの持つ「校正」のイメージは「言葉の矯正」、「校正者」とは「言葉の番人」という感じでした。著者の書いた文章にある誤字脱字や間違った表現をを指摘するのが、仕事だと思っていたのですが……、番組が追っていた大西さんは、「ファクトチェック」といってその文章に書かれていることが事実なのか、妥当なのかというところまでチェックしていました。驚きました。それをやると大変な作業ですよ。
文章に書かれた事実のウラを取る――もちろん、文章の信頼度を高めるために大切なことですがこれって「校正」なのか、著者や編集者がその責任においてやるべきことなんじゃないかと驚きました。
それだけじゃなかった。大西さんは仕事で与えられた文章を読み込んで、「この表現は削った方が、著者の意図が伝わりやすくなる」とか「このキャラクターが作中こういう行動をとっているが、前後の文脈からそういう行動を取るのは不自然ではないか」というところまでチェックを入れていました。
これは本当にびっくりです。著者に対してダメ出しをしているのと同じですからね。正直いって「校正」の領分を超えているとわたしは感じました。
ただ、そこはNHK「プロフェッショナル仕事の流儀」です。大西さんはそうであるからこそ評価されている校正者らしいのです。実際、番組内に登場した宇佐見りんさん(『推し、燃ゆ』がベストセラーになった芥川賞作家さんですよね)は、大西さんの「校正」にめちゃくちゃ感謝してしてましたからね。
どうしてなのか考えてみました。
単に自分の主義主張に基づいた「ダメ出しし」をしていたのでは、こうも作者さんから感謝されることはないと思うんですね。
――イヤなこ指摘する校正だ。
と煙たがられるのがオチだと思うんです。
でも、番組内でも触れられていましたが、大西寿男さんはすごく文章を読み込むんですね。徹底的に読み込んで著者が描きたいことはどういうことなのか、そのためにこの言葉の選択はふさわしいのか、表現はベストなのかを突き詰めて考える。もちろん、著者の考えがすべて分かるわけではないのだけれど、最大限著者の描きたいことを想像し、尊重する。その上での「校正」なんです。
カクヨムで書いていると分かりますよね。徹底して自作が読まれることの嬉しさが。文章に込めた思いを汲み取ってもらえた時の喜びが。大西さんは、その文章を書いた人に寄り添って支えるプロフェッショナルなのでしょう。
自分はカクヨム作家さんに寄り添ったコメントやレビューが書けているのだろうかと考えさせられると共に、強く感銘を受けた番組でした。
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