暗闇を照らす月あかり

 一週間後、カグヤが部屋の中で一人で食器を洗っていると、家の中に軽快な音が鳴り響いていった。


『ティンプォーン』


 すると、白髪の女性が玄関を開けながら、


「こんにちは! イルミネートウィズライトムーンの者でーす! 赤ちゃんポストにご連絡があり、高いストレス値と数々の負の感情も検知されましたのでやってまいりました! 失礼しまーす!」


 白髪女性は二十代前半の姿をしていて、身長は約百六十センチメートル。

 前髪は目の上で流し、後ろ髪は肩まで伸ばしている。

 白い瞳を宿し、目じりが少し下がっていた。

 青い半袖で上半身を包み、白いショートパンツを履いている。

 また、胸部に少し大きめの膨らみが出来上がっていた。


 それから、白髪女性に続いて、緑髪の女性も家の中に入っていき、


「失礼します」 


 緑髪女性も容姿は二十代前半をしていて、百六十センチメートルほどの身長。

 後ろ髪は背中上部まで伸ばし、前髪は額の辺りで切り揃えている。

 目じりが下がっていて、瞳の色は緑。

 ベージュ色のジャケットで上下共に身を包んでいて、大きめの膨らみが胸部にあった。


 白髪女性はカグヤを見つめながら、


「あっ、要救助者発見! って、赤ちゃんじゃない?」


 緑髪女性は部屋を物色しながら、


「どう考えても、ここの住人でしょう」


 白髪女性は柔らかい笑みを浮かべながら頭を撫で、


「あはは。えーっと、うちら、イルミネートウィズライトムーンの者なのですが、小さなお子さんはどちらですか?」


 カグヤは親指を咥えたまま静かに二人を見つめ続ける。


 白髪女性は硬い笑みを浮かべながら、


「えーっと、赤ちゃんポストに連絡した方ですか?」


 首をかしげ、困った表情を浮かべるカグヤ。


 緑髪女性は冷静な態度でカグヤを見つめ、


「ハルナ、聞いてください。データと一致しない少女です。つまり……」


「ウルナ、それは本当なの?」


 ハルナと呼ばれた白髪女性は驚愕の表情を作り出す。


 ウルナと呼ばれた緑髪女性は静かに首を縦に振り、


「間違いありません」


「え、それじゃあ、この子が……大きくない?」


「情報の方が間違っていた可能性がありますね」


「うーん、そっちかー」


 ハルナは目を手でおおい、天をあおいだ。


 そして、すぐに笑顔を作り出し、


「うちはハルナ。イルミネートウィズライトムーン所属です。困ってる情報を得たので、玄関を開けてきちゃいました。国家権力すごいよね」


「ウルナです。よろしくお願いします」


 ハルナはウルナに向けて腕を横に広げ、


「あ、彼女はアンドロイドだから暑さには耐性があるの。だから、厚着してるんだよ」


「耐熱仕様というわけではないですけどね」


 カグヤは親指を咥えたまま無言を貫き続けた。


 そして、ハルナは腕を組みながら顔を歪ませ、


「うーん……複雑な事情があるんだろうけど、とりあえず保護を優先!」


 ウルナは大きく頷き、


「同意です」


 ハルナとウルナはカグヤの手を引っ張っていき、部屋の外に出ていく。


 カグヤは困惑の表情を浮かべながら体をよじらせ、


「イヤッ! 離して!」


 三人は雨に打たれながら集合住宅地から離れていった。

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