真夏の恋のチュウ血鬼。

@ramia294

  

 夏になると…。


 花火に海水浴。

 スイカにバーベキュー。

 ひと夏の恋と涙。

 夏休みの宿題。

 そして虫。

 カブトムシでは、ありません。

 刺されると痒い、真夏の吸血鬼。

 そう…。

 あの。

 夏の。

 蚊のみなさん。


 昔から、頻繁に刺される私。

 電車に乗っている時。

 たくさんのお客様がいても。

 私だけ。

 刺されます。

 蚊のみなさんに。

 モテモテの私。


 私の夏には。

 虫除けスプレーが、手放せません。

 憎い真夏の吸血鬼と戦っている間に私の夏は、過ぎていきます。


 たくさんの虫除けスプレー。

 試しました。


 そして、見つけたのです。

 その名もズバリ。


 『夏の虫除けスプレー』


 私のおうちの。

 お隣。

 幼なじみが、作ってくれました。


 幼なじみ。

 昔から、色々なものを作って。

 私の部屋に持って来ます。

 ほとんどガラクタ。

 でも。

 スプレーの効果は。

 抜群。



 私の夏の労力。

 きっと半分以下に。

 快適な夏。

 過ごすことが、出来ます。


 ある時。

 気づきました。


 夏休みが、終わり。

 学校で、再会するお友達。

 ほんのり赤い唇。

 焼けた肌。

 愁いを帯びた。

 黒い瞳。

 大人の雰囲気。

 みんな綺麗になっています。

 たったひと夏で、何があったのでしょう?


 鏡のなかには。

 あいかわらずの子供の私。

 少年の様な、短い髪と…。

 真夏の陽射しに、焼けた細い足。


「どうしたの?」


 友人に尋ねてみました。

 彼女が、一足先に。

 大人の階段を昇り始めた理由。


「夏の恋のせいかしら?」


「恋?」


 恋とは、どんなものでしょう?


 海で。

 山で。

 街で。

 出会った、夏の恋。


 ひと夏の甘い恋。

 私の出会いは、いつでしょう?


 私にも、大人の階段を昇らせる恋。

 訪れて下さい。


 海で。

 山で。 

 街で。

 私の恋は、見つかりません。


 鏡の中の私。

 見返すショートヘアの子供。

 日に焼けた健康そうな…子供。


 鏡の中の私。

 大人の女には、まだまだ遠く。

 美人には、もっと遠く。

 セクシーまでは、何光年?


 せめて、可愛くなれ。

 と、願う。

 真夏の…夜。


 幼なじみに。

 つい、愚痴をこぼす。

 いつまで、私は子供のまま。

 焦る十六歳。

 ひと夏の恋。

 スコールの様に、私にも降り注いで欲しい。

 と、願う夏。


 幼なじみ。

 かすかに、笑いました。

  

 何故か、大人びた。

 幼なじみの笑顔。


 真夏の恋。

 ひと夏だけの恋。

 恋には、変わりなく。

 失った恋の悲しみ。

 じっと耐えている。

 きっと、それが。

 お友達の。

 大人びた理由。


 「そんな思い。したいの?」


 気づかなかった。

 みんな、そんな思いをしていたんだ。

 せっかくの恋。

 失った悲しみ。

 耐えている。

 私のお友達。

 私の…。

 可哀想な、お友達。


 幼なじみのあいつ。

 大人びた理由は?

 もしかしたら?

 私の知らない恋。

 進行中か?

 相手は、誰?

 気になる私。

 何故?


 季節は、巡り。

 少し髪も長くなり。

 また、夏が来ました。

 

 虫除けスプレーの季節。

 最近、ますます大人になった、あいつ。

 今年もスプレーを持って来てくれました。


 あいつの視線が、下を向き。

 長いまつげに、今さら気づきました。

 頬が、熱くなる私。

 何故?



 あいつの作ったスプレーを、大切そうに持つ私の手。

 そっと撫でる指。


 スプレーには、注意書き。

 

 夏の虫、全般に効果的。

 蚊。

 アブ

 ハエ。

 ハチ。

 ムカデ。

 ひと夏だけの悲しい恋の相手。


 ん?

 恋の相手?

 恋の相手は、虫さんですか?


 私は、毎年このスプレーを愛用。

 ひと夏の恋の相手が、近づかないのは、このスプレーの効果?

 どうして?


 幼なじみのあいつからの…


 私が、ひと夏だけの恋に泣く事が、嫌だったから。

 私には、本物の恋だけを経験してほしい。


「そして、その相手が、出来れば俺であれば、とても嬉しい」


 …告白。


 幼なじみのあいつ。

 大人びた微笑み。

 原因は、私でした。


 本物の思い。

 虫除けスプレーでは、防げませんでした。


 あれから、数年の時が。

 今年もまた。

 季節は夏。

 私の髪は、肩まで。


 虫除けスプレーは、今年も届きました。

 おかげさまで、真夏の吸血鬼への献血。

 避けられそうです。


 そして…。

 今日から、私は、あいつと同じ名前。

 暑い、暑い、真夏の。

 白い、白い、ウェディングドレス。

 今日から、あいつは、私だけの旦那様。


 教会の神父様。

 促す。


「誓いのキスを」 


 近づくあいつの顔。

 虫除けスプレーでは、避けられない…。

 

 旦那様。

 私だけのチュウ血鬼。

 

       (^з^)/チュッ


 



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