第123話



そうして俺達3人は船員達に用意してもらった二艘目の救命艇へと乗り込んだ。

ルーシーは剣と弓を持っている。クロスボウではない。そしてもちろん矢筒も。

クロスボウはセット時に両手が塞がり時間がかかるので、一瞬の隙をつけないそうだ。

俺も一応、剣と出番のない妖刀を持っているが、俺自身に出番は無さそうだ。


荒れ狂う海へとスクリューの回る救命艇が発進する。

船尾の操縦席にルーシーが座り、脇に加速と梶の操作レバーを操っている。

その前に俺の肩を抱いてクリスと俺が並んで座る。

荒れる海、落下するブロックを左右に避けるときにかかる横方向の慣性で、俺の体力の無い体はグラグラ流されそうになって、クリスがそれを抱き止めてくれている。


「ルーシーはセイラに勝つ自信があるの?」

「ああ、あれはああでも言わないと心配されちゃうでしょ?」

「え?自信あるわけじゃないの?」

「だってセイラがどんなことしてくるか分からないんだもん。」

「ルーシーは無敵じゃないの?傷を負ったことが無いんだよね?」

「別に無敵じゃないわよ。傷は負ったことが無いけど。」

「なんで無傷なの?」

「だって、あいつら特殊な能力は持っているけど戦闘のプロという訳じゃないでしょ?ただの一般人がメイドやってただけだし。狙いがバレバレなのよ。」

「ふーん。」


ルーシーとクリスの会話だ。

クリスはルーシーの説明で納得しようとしているが、そうはいかないだろう。

相手が何であれ無傷で過ごすというのは無理がある。


「だが、眠らないのはどういう理屈なんだ?」


俺は突っ込んでみた。


「あら。勇者様気付いてたの?」

「マリアに教えてもらってようやくな。」

「理屈って言うか、体質なのかしらねー。生まれつき寝ないで過ごせるのよ。」

「おいおい。」


あっけらかんと言い放った。


「じゃあ、俺と一緒じゃないと眠れないというのも嘘だったんだな。」

「やだー。勇者様怒ってるの?」

「怒ってないけど・・・。」

「嘘でもないわ。勇者様と一緒に居ると凄く落ち着ける。睡眠状態に近い休眠ができるのよねー。脳内のタスクを閉じてメモリを解放できるって感じ?」


感じ?と言われても何を言ってるのか分からないよ。


「言いたいことはいろいろあるでしょうけど、そろそろ集中するわよ。セイラが何を狙って姿を現したのか考えなきゃ。」



そして俺達は、幻の街とも草原だけの陸地とも違う、第三の顔を見せる三番星へと再び上陸した。

そこはまるで積み木の入った箱を引っくり返したような、四角いブロックが積み上がる異様な空間になっていた。ただ積み木と違うのは巨人でも使っているのかという程の大きさと、月明かりが遮られる円盤の下を炎上し、明々と赤く染め上げていること。

黒煙は円盤にまで立ち上ぼり中心部分は黒い煙でどれだけブロックが残っているのかよく見えない。

それにしてもブロックはまだ落下している。

ロザミィの物量にも驚かされるが、これは別次元だ。

マリアが狂暴な敵として現れなくて良かった。


救命艇を浜辺に上げ、クリスが骨針を砂に突き刺してロープを括る。

上にブロックが落ちてきたら俺達にはもうお手上げだ。後の事は後で考えるとして、今はここにやって来たであろうセイラを探そう。


浜辺から積み木が積み上がり山になっている陸地へと向かう。

相変わらず俺はクリスの肩を借りてヨロヨロとルーシーの後ろを歩いている。

情けない話だ。俺は最後まで何も役に立たないのか・・・。

だが、それはそれとして、この決着を見届けないわけにはいかない。



燃え盛る瓦礫の山からバサバサと羽ばたく音が聞こえ、探すまでもなく黒いイブニングに身を包んで、白い翼を背中に携えたセイラが俺達の前に飛んできた。


「ルーシー、勇者ちゃん、それにクリス。来てくれたのね。」


瓦礫の高台になったところに腰掛け、セイラは俺達を見下ろす。


「メインイベントを見逃したくないからね。」


それを見上げながら答えるルーシー。


「それで?どんな気分?思惑通り私達にゲームに勝利したのは?」

「寂しくなったわね。人数も減ったし、あなた達ともお別れになるからね。」

「お別れってどういう意味よ。」

「別に深い意味は無いわ。あなた達はゲームに負けた。私達のアジトを探すことが出来なかった。だからどこへとなり帰ってもう二度とこの海域には近付かないようにすることね。これから私達はこの海域に近付く船は例外無く襲って沈める事にするわ。ロザミィの巨大鳥に対抗できる者は果たしているのかしらね?」


なんてことだ・・・。遊びは終わり。これからは本気で戦うつもりということか。

いや、戦いではない。虐殺か・・・。

船の上ということは海の上ということ、海の上で火は通用しないのは最初のロザミィとの戦いで嫌と言うほど身に染みている。

そうなればロザミィと互角に戦える方法など俺達には無い。


「でもマリアは惜しい所まで行ったわ。ルーシーだって術中にはまって覚醒してたわけではなかったのに。あのまま行けば私達の思い通りの結末に辿り着けた。」

「ふざけないでよね。私達を衰弱死させる気だったの?」

「それは違うわ。現に私がこうしてすぐに来れるように待機してたでしょう?そんなことになる前に対処はするつもりだったわ。まあ、人間の姿で目覚めるかは約束はできなかったけど。」

「ぜんぜん助かってないじゃないのよ!いったい何が目的だっていうの?」

「うふふ。決まってるでしょう?勇者ちゃんとクリスよ。二人ともここで一緒に暮らしてくれれば楽しく過ごせれたのに。」


「俺?」


突然名前を出されて困惑するが、そういえばセイラからは何度も誘われていたんだっけな。


「それは何度も断ったはずだ。」


俺は言ってやった。


「そう。だからこそのマリアの力だった。んだけどね。」

「あんた・・・。そういうわけだったのね。マリアがこんな凶悪なことをするとは思えなかったけど、これはあんたの入れ知恵だったってわけね。」

「うふふふ。演出と言って欲しいわね。まあ、そういうわけで、私も言うほどゲームに勝利した感じはないのよね。寂しい勝利なんてつまらないじゃない?」


一時沈黙が流れる。

セイラもルーシーも、お互いの視線をぶつかり合わせ離そうとしない。


「寂しい思いなんてすることはないわ。あなただって私の元仲間。あなたがこちらに来ればいいのよ。もはやメイド仲間は私とクリス、ロザミィとあなたしか残っていない。リーヴァなんて忘れてあなたも人間として生きなさい。」


ルーシーが言った。

セイラはちょっと驚いた顔をした。


「それ、冗談で言ってるの?」

「冗談の要素なんてないでしょう。前からそう言ってたはずよ。私達の目的は魔王の娘の確保とあなた達の保護よ。」

「うふふふ。面白い冗談ねぇ。今さら私がどんな顔をして人間として生活しろって?私達には人間の血が必要。」

「あなたは知っているでしょう。クリスとキスしたときにエネルギーが補給できたって。」

「これまで命をかけてくれたみんなの行いを無にして、私だけがのうのうとあなた達の仲間になんてなれるわけないでしょう?馬鹿げてる。」

「できるわ。ロザミィだってやれてる。要領のいいあなたに出来ないわけがない。」

「無理ね。ゲームは終了。あなた達も早く船に戻って町にでもお帰りなさいな。そろそろあの船を襲うわよ?」


睨むセイラ。

俺もなんとかセイラを説得しようと声を出してみる。


「セイラ。君が俺のことをどう思ってくれているのかは知らない。だが、もう一度言わせてくれ。君を救わせてくれ。魔王の城で救いだしたつもりの俺達の行いを無にしないでくれ。」

「勇者ちゃん・・・。」


セイラは複雑な顔をした。


「確かに、ルカ、エル、ミネバ、キシリア、マリア、ファラ、カテジナ。みんなあなたの仲間だったでしょう。でも私の仲間でもあった。あなたが彼女達の意思を継ぐというのなら私も同様に彼女達の意思を継ぐわ。あの子達の意思。それはあなたを守ること。」


ルーシーもセイラの説得に必死だ。


「セイラとまた一緒にダンスしたい。」


クリスもポツリと思いを吐露した。



「うふふふ。うふふふふふふ。残念。もう手遅れよ。私の意思はもう決まってるの。ここで人間と相入れない生活を送る。もうそれしかない。」


セイラは感情を表に出さずそう言って笑った。



「これゲームよね?だったらこうしましょう。追加ルール。ここで私とセイラが戦って、勝った方が言うことを聞く。」


ルーシーが突然妙なことを言い出した。


「は?なにそれ?」

「敗者復活の総取りポイントよ。私が勝てばあなたが私についてくる。リーヴァのアジトも教える。あなたが勝てば、勇者様とクリスがついてくる。」


おいおい。めちゃくちゃな。

だが、ルーシーを信じて賭けてみるしかないか。


「うふふ。面白いわね。でも勇者ちゃんにその気がないと無意味ねー。」


セイラは若干やる気だ。


「勝負事なら仕方ない。セイラの言う通りにするよ。」

「私もいいよ。」


俺とクリスは一応同意した。大丈夫なのだろうか。


「あなたはどうなの?私達についてくるの?アジトの場所も教える?」

「勝負事なら仕方ないわねぇ。」


ルーシーもセイラに確認する。


「私からも確認よ。この勝負で例えあなたが死んでも、文句言わないでよね?手加減なんてできないんだから。」

「勝負事なら仕方ないわね。」


セイラもルーシーに確認する。


「いいわ。じゃあこっちに上がってきなさい。そこじゃ勇者ちゃんが危ないわ。」


セイラは翼を羽ばたかせ、瓦礫の山の上部に飛んでいく。

バカな!ルーシーにとって不利な条件じゃないのか!?

ルーシーに魔人のような身体能力がないのはさっき分かった。


「いい度胸ね。燃え盛る瓦礫に入っていくなんて。」


ルーシーは滑り台を逆に上がっていくように斜めになった傾斜を走り出した。


俺達はここで二人の激突を見ているだけしかできないのか。


「勝負事なら仕方ないね。」


ルーシーの走って行く様を見上げていると、肩を貸してくれているクリスが俺に突然口走った。

俺達3人が同じ事を言ったから自分も言いたかったのか?

ニヤリと笑うクリス。

どうリアクションしていいのか分からない。


下半分が潰れて50メートル程の高さの立方体となっているステージの上ですでに戦いは始まっているようだ。

端が炎上し、黒煙が蒔かれている危険なステージ。

セイラは10メートルにもなる10本の骨針を背中から伸ばし、ルーシーに斬り込んでいる。ルーシーも電光石火の剣でそれを払いセイラを寄せ付けない。

多少剣の扱いに慣れた俺でも、あの剣捌きは出来ない。目まぐるしい応酬に息を飲むのも忘れそうだ。


不意にセイラが10本の骨針を広げて伸ばし、その先端にバチバチと焦げたような光と臭いを発した。

その先端からそれぞれ針が飛び出しルーシーを襲う。

ルーシーは剣でそれらを叩き落とす。いつものスムーズな剣捌きとは違う、違和感のある動きだったが・・・。

セイラは驚いて一旦攻撃を軟化させる。


「触れたら感電死するエルの力を使ったんだけど、あなたなんで無事なの?」

「触れなきゃ良いんでしょ?叩き落とす瞬間に剣から手を離したのよ。」

「呆れた。これならどう?」


セイラがそう言うとルーシーの剣が跳ね上がるように上方に飛んでいく。

そしてどこかブロックの溝にでも落ちて行ってしまった。


「ルカの磁力か・・・。」


呟いたルーシーはすぐさま弓に持ち替える。

弓で戦うのは無茶だ!


「クリス!これをルーシーに届けてくれ!」

「うん。分かった。」


俺はクリスに妖刀を差し出し持たせる。クリスが俺を置いてジャンプし、ルーシーの元に駆け付ける。

俺は力無くその場に膝をつく。

再び磁力で武器を取り上げられたらどうしようもないが、対策を考えてる暇もない。


キシリア程の大きな大剣ではないが、150センチメートルにはなる大剣を両手から生やしたワイヤーに持たせ、射程10メートル大剣二刀流のセイラの剣技がルーシーを襲う。

縦横無尽の剣の動きを体でかわしながら、弓でワイヤーを狙うルーシー。

しかし引きちぎられたワイヤーはすぐさま元通りくっつく。


「ルーシー!これ使って!」


そこに駆け付けたクリスが空中から鞘ごと妖刀を投げる。


顔を向けずに手でそれを掴み、早速抜刀するルーシー。

やはりルーシーが持っていた方が様になる。


「ありがと、クリス!勇者様!」


ワイヤーの射程内に斬り込みそれをズタズタに切り裂くルーシー。


「あーら。お互いみんなの力を合わせて戦い合う展開ってこと?感動しちゃうわね。」


セイラが茶化す。

そして左手に光が集まり上下1メートルはあろうかという光線を前方に凪ぎ払うように照射する。

猛ダッシュで掻い潜り間合いを詰めるルーシー。

右手からは骨針が束になって大砲の筒のように変化させたものが造り出される。

筒の穴から火炎が噴き出し、距離を詰めてきたルーシーに放たれる。


剣先が僅かに筒の先端を捉え、セイラの右腕を跳ね上げる。

火炎の直撃をなんとか免れたか。危ないところだった。


セイラの首元に剣の射程が届く位置まで来た。だが、ルーシーは一旦バックステップしてその場を離れる。

頭上から赤い光線がルーシーの居た場所に降り注ぐ。


見上げても何も見えない。

い、いや!ぼんやりとうっすらと空中に浮いているクッキーのような物が見える!

背景と同化して見えづらくしている!

それが狙撃してきている!


いったいいくつの能力を使えるんだ!?

まさかロザミィとマリアの能力まで使われたらルーシーだって勝てっこないぞ!


「ロザミィとマリアの能力は必要エネルギーが大きすぎて私には使えないわね。」


俺の思考でも読んだのかというタイミングでセイラが言った。


「それはご丁寧にありがとう。じゃあもう満足したかしら!?」


ルーシーは弓に持ち替えクッキーに4本矢を射った。

クッキーは片側を集中して射たれてクルクルと回転し始める。


セイラは大剣や針を駆使してルーシーを襲う。

それを全て上手く剣や体捌きで避けてもう一度近付こうとするルーシー。


「勇者、大丈夫?」


俺の元にクリスが戻ってきていた。


「ああ。俺は大丈夫。だが、さすがセイラだ。数々の能力を使いこなしている。」

「ルーシーは勝てるのかな?」

「そうなってくれないと困るがな。」

「ルーシーが勝てばセイラも私達と一緒に居れるの?」

「ああ。その約束だ。」


俺の肩を強く握り二人の様子を見守るクリス。

頼む。ルーシー。無事でこの戦いを終えてくれ。



「強いわね。ルーシー。みんなが勝てなかったのはやむなしね。」

「降参するってなら受け入れるけど?」

「取って置きを用意してあげるからそれで終わりにしましょう。」


セイラとルーシーが話す。取って置きとは何だ!?


セイラの体が消えていく。

まずいぞ!空気になってしまったんじゃないのか!?

空気になればセイラからの物理的な攻撃は出来ない。だが、変化の能力を使い回りの物で攻撃させることはできる。

ルーシーからセイラへの攻撃が通用しなくなれば一方的に攻撃をされ続ける事になる!


頭上から円盤の残骸が落ちてくる。これまでと違い、凄い勢いでルーシー達の居るステージへ突っ込んで行っているようだ。

まさかセイラの取って置きとはあれの事か!?

あんなものを頭上から受けたら押し潰されてしまう!


「ルーシー!逃げろ!」


俺は力の限り叫んだ。


ルーシーは一旦端の方にダッシュして何かをしだした。

端の方には燃え盛る炎で一面を覆われている。

矢を数本指に挟んで先端に火を着ける。それをステージに弓で放つ。

元が野菜だ。メラメラとよく燃えていて、ステージ上で黒煙を広げる。

妖刀にも何かを巻き付けて火を着ける。


「ルーシー何してるの?ブラジャー外して燃やしてるみたいだけど。」


クリスも怪訝に思っているようだ。ブラジャーだったのか・・・。

それは良いが、頭上に残骸が迫っているのに何をしているんだ!?

残骸は10メートル四方の立方体で他よりも大きさは小さいが、それでもかなりの大きさだ。音をあげながら今にも迫ってくる。


ルーシーが燃える妖刀を振るう。


消えていたセイラが空中に現れた。


「酸素を燃やして私を炙り出そうというわけ?この状況でよくそれをやろうとしたわね。」

「一度離れたら二度と見つけられないからね!」


なるほど!空気が燃焼すると変化していたセイラの体も徐々に消滅していく。

周囲を炎で炙ることでセイラを引っ張り出したということか。


次の瞬間ルーシーはセイラに飛び付いた。

二人はステージから外の瓦礫へと一緒になって落ちていく。

さらに次の瞬間に頭上から落ちてきていた瓦礫が、燃え盛る一面に突き刺さるように衝突してきた。

轟音、振動、地響きで体勢が崩れよろめくが、クリスが支えて俺を立て直す。

衝撃により地面の残骸が崩れ落ちていく。

さらにクリスが俺を少し後ろに運び距離をとらせる。


俺のことよりもルーシーとセイラは無事なのか!?


「クリス!ルーシーを探してくれないか?」

「うん。」


クリスは俺を肩に抱いたままその辺の瓦礫の山にジャンプした。

おおっと驚きクリスの体にしがみつく俺。


グルリとルーシー達が居たステージを回り込むように次々とジャンプするクリス。

その度にクリスにしがみつく情けない俺。

クリスはニヤニヤしながら俺をチラチラ見ている。


「勇者。もっとしっかり掴まった方がいいよ。」


俺に抱き付かれて喜んでいるのはいいが、それよりもルーシーを探してくれないかな。


反対側に回り込んだ所でルーシーとセイラは居た。

斜めになった瓦礫の上でセイラは倒れ、その頭に妖刀を付きだして、ルーシーが立っていた。

良かった!二人とも無事だ!


「体が再生するあなたとの勝負がどうやったら決着がつくのか分からないけど、頭部を押さえられたら観念してくれるわよね?」


ルーシーがセイラに言い放つ。


「そうね。私の負けね。」


セイラは負けを認めてくれた。

クリスが俺を抱えたままジャンプしてきた瓦礫の上で弾むように喜んだ。


「ルーシーが勝った!これからはセイラも一緒に居れるんだね!」

「約束だからな。」


もちろん俺も喜んだ。


「じゃ、じゃあ、勇者とルーシーと私とセイラで一緒にベッドで寝れるんだね。」

「それは、ちょっと、分からないかな・・・。」


喜んでいるところ悪いがそれはちょっと多いんじゃないかな。フラウもいるし。



「ふう!ここまで来るのにずいぶん遠回りしたわ。さあ、起きて。」


セイラに突き付けた妖刀をどけて、左手を差し出すルーシー。

何を考えているのか、ルーシーの顔をじっと見ているセイラ。


セイラはルーシーの左手を払いのけた。


「でもやっぱり駄目ね。あなた達とは一緒に行けないわ。」


「セイラ!」


叫ぶルーシー。

倒れたままの姿勢で空中に宙返りして背後に飛んでいくセイラ。

燃え盛る瓦礫の中にそのまま飛び込んだ。


「あ!」

「嘘!」


まさにあっという間の出来事だった。

炎の中で焼き付くされ瞬く間に灰になっていくセイラの体。


俺達はそれを見ていることしかできなかった。


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