第109話
民宿に帰り着いたが今日は俺が最後ではなかった。
みんなの帰りを待つ間に風呂に入ったり、雑談したりで時間を過ごした。
フラウは図書館から帰っていてあまり芳しくないと肩を落としていた。
ロザミィは児童書を読んでいただけだった。
クリスはどこに行ったか聞いても、わざとらしい口笛で誤魔化すだけだった。
怪しい。何か隠しているパターンじゃないか。
アレンとルセットが戻ってきた。
妙な顔をしている。
「あら、何かあったの?」
ルーシーが気付いて一声を浴びせた。
「いや別に。研究所はスゲーところだったよ。」
「そうね。見所いっぱいだったわ。ちょっと見たことあるような人が居て、案内してもらってたんだけど、人の手がほとんど使われてない自動工程で農園が運営されてるのね。」
見たことあるような人って・・・。まさか・・・。
「面白そうだな。明日も行くのか?」
「そうね。もっと見せてもらいたいわね。」
俺はルセットに聞いてみた。研究所。行ってみなければならない。
「じゃあ俺達も一緒についていってみよう。ルーシー。」
「え?ええ。いいけど。勇者様そういうのに興味あるのね。」
「まあ、あるけど、ちょっとな。」
そこでモンシア、ベイト、アデルも帰ってきた。
「おーい!帰ったぜー!」
「叫ばなくても分かりますよ。」
「喧しいやつだな。」
帰ってきた3人に今度もルーシーが一声かけた。
「やけにご機嫌ね。まさか進展ありなの?」
「あはは。それは残念ながら。」
ベイトが申し訳なさそうに答える。
「今日公園にシノさんに連れていってもらったんだが、ベイト達もそこに居たみたいだな。いったい何やってたんだ?」
俺は今朝からの気になる疑問を早速ぶつけてみた。
3人は顔を見合わせて三様に笑った。
「なんだ見られちまってたのか。」
「これはお恥ずかしい。」
「狭いとはいえ、やっぱり狭い島だな。」
「なんだなんだ?早く聞かせろよ。」
モンシア、ベイト、アデルに俺は急かすように続けさせた。
「いやー。昨日警察に行っただろ?そこで捜索協力を頼まれちまってなー。」
「捜索協力?」
モンシアが悪い気はしないとばかりに話し出す。
「昨日言ったでしょう?道を外れて犯罪に手を出すものが居るって。そういう奴等が窃盗グループを組織してしまって今ここの警察がそれを追跡しているって話を聞いたんです。」
「で、早速独房にしょっぴかれていた一味の男が俺達の訪問中にちょうど逃げ出そうとしていた。」
「そこで俺達が逃げる犯人をガツンとやって取り押さえたってわけよ!」
「そうしたら、腕を買われて犯人逮捕に協力して欲しいと、頼まれたわけですよ。お綺麗な刑事さん二人にね。」
ベイト、アデル、モンシアの言葉に最後はベイトが締める。
ルカとエルに似た二人のことか。
「なんだそりゃー。面白そうな話じゃねーか。」
アレンも興味を引いたようだ。
「なーに?私達と違って冒険してるわねー。」
ルーシーも感心している。
確かに。公園や遊園地で遊んでいただけの俺達より面白そうな話だ・・・。
「そして今日も窃盗グループのメンバーを追いかけて奔走してたったわけよ。まー俺達も言ってみりゃモンテレーの自警団だったわけだから、素人ってわけでもねーしなー。」
モンシアは上機嫌だ。活躍を評価されて嬉しいのだろう。
そんな事情があったとは。朝に妙だとは思ったが、何もいそいそと出ていかなくても良かっただろうに。
シノさんが運んでくれたミートパスタで腹ごしらえをした俺達はこの島での2日目を終えた。
明日はマリアの提示してくれたヒントを頼りに研究所に向かう。
そこでリーヴァと面会できればいいのだが。
シノさんやみんなが部屋に引き上げていったあと、最後に俺とルーシーはルーシーの部屋に入っていった。
昨日というか今朝のことがあったので躊躇いはしたが、ルーシーが無言で俺の手を引いて部屋へ連れ込んでいった。
いつものように二人でベッドに横になる。
「大丈夫かな?」
「さあね。それより勇者様はマリアのところで何か話せたの?」
ルーシーについての暗号は伏せておこう。何か確定的な情報というわけでもない。
「しりとりをしたよ。」
「ふふっ。なにそれ。」
「マリアの言葉。リーヴァ、科学者、研究所、東棟、最上階。」
「なにそれ?」
「気になるだろ?」
「そうね。それでアレン達についていくって言ってたのね。」
「ただの言葉の羅列でぜんぜん関係ないかもしれない。だが、何かあってもおかしくはない場所でもある。探してみる価値はじゅうぶんだ。」
「分かったわ。明日に期待ね。それと、クリスの様子が変だったわね。なんかおとなしいし。」
「何か隠しているみたいだな。」
「困った子ねー。明日そっちも白状させないと。・・・白状と言えばベイト達がやってたこと勇者様気になるんじゃないのー?そっちに一緒についていけばよかったわね。」
「気にはなるけど、ルーシーとシノさんと一緒に居られて今日は楽しかったよ。」
「うふふ。ありがと。じゃあ今日はゆっくり休んで。勇者様。」
「ああ。おやすみ。」
ルーシーをぎゅっと抱き締めながら俺は眠った。
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