第99話


私クリスとロザミィは南側の湖沼からルーシーとミネバが居るはずの北東の湖沼に飛んでいっていた。

ロザミィは4メートルくらいのスズメになって頭に座席を作ってくれてる。私はそこに立って水面を眺めている。


水中に居るかと思っていたけど、ルーシーが水面に頭を出して泳いでいるのが見えた。


「ルーシーだ!ロザミィ近付いて!」


向こうも私達に気付いて泳ぐのを止めて手を振った。

被っていたガラス玉は首飾りになって小さく収まっている。


「ルーシー!」

「クリス!大変よ!キシリアに勇者様が襲われている!」

「ミネバは?」

「あいつも襲ってきた。倒したけれど、なんだかやりきれないわ。」

「そうか。無事だったんだ。」


私は腕から骨針の先端をL字に曲げ取っ手のようにしてルーシーの手元に垂らした。

ルーシーがそれに掴まるとロザミィの頭の上に引き上げた。


「ありがとう。早速で悪いんだけど、勇者様のいる北西に飛んでくれない。」

「いいよー。」


ロザミィが気の抜けた返事をして高く舞い上がる。


そうか。ミネバは死んだのか。

ルーシーが無事だったのはさすがだ。ミネバがなんでそんなことを考えていたのか聞いてみたかった。でももう聞けないんだ。

不思議な女の子だったけど、一緒に居て楽しかった。それがもう居ない。

ミネバが襲ってきたことは本当のようだ。とても信じられない。

ということはキシリアが勇者を襲っているのも本当?

それこそとても信じられない。あんなにベッタリくっついて寝てたのに。今さら襲ってくるなんて不自然。

半信半疑で私はルーシーを見た。


「ああ、頭が混乱してるわ。あいつ・・・なんのつもりだったの?」

「船に乗り込む前から計画してたみたい。」

「クリス?なんでそれを・・・?」

「ロザミィには話していたんだって。だから心配して飛んできた。」

「私を?そうだったの。ありがとクリス。」

「ルーシー。私つらい。ミネバもキシリアも信用してたのに。」

「私もよ。こんな直接的な攻撃を仕掛けてくるなんて思ってなかった。何か企んでいるのだろうとは思っていたけど。」


ロザミィを含めて、そんなに信用出来ないなんて。思いたくなかった。

それより今は勇者を早く助けなきゃ。

信用出来ないロザミィに乗せてもらって急ぐ私達だった。


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