29、街中ロマンス

第80話

29、街中ロマンス


ルーシーがコックからバゲットとスープパスタを受け取り、フラウと俺、自分の席にトレイを回す。

やっと食事にありついた。ありがたい。


「あの二人。信用して大丈夫なんですか?」


俺達が食べているとベイトが話しかけてきた。

あの二人と言うのは勿論キシリアとミネバのことだ。


「さあね。何が狙いなんだか。ルカとエルが死んで日を跨いでもいないのに接触してくるとはね。しかも別々に行動して離れていたというわけでもなく、思考のリンクで直前まで会話をしていたはずなのに。」


ルーシーはやはりその事を腑に落ちないでいるらしい。

直前まで会話をしていたというのは間違いない。ミネバが戦闘中の俺達の会話の内容を知っていたのだから。ルーシーが何回か帰れと言ったことを知っていた。


「モンスター、ホワイトデーモンの件は信用していいんですか?」


ベイトの質問は続く。


「ある程度は真実みたいね。クリスに見てもらったけど作り物ではないみたい。と言うことは実際にあそこにモンスターが残っている話は本当。ベイト達に警告というか助けに入ったのは・・・。言葉通りに信じるのはどうかしらね。」


無駄に命を落とすことはない。だから捜索を中止しろと。キシリアはそう言っていたな。

というか、クリスを連れていったのは魔人による変化能力で作られた自作自演を見破るためだったのか。そうならそうと言ってくれればいいのに。連れていってくれなくてしょんぼりしてしまったぞ。


俺はテーブルの下でルーシーの左手を握った。

ルーシーは気付いて俺の顔をチラリと見て満更でもなさそうに笑った。


「それで?どうするつもりなんです?あのモンスターと本当にやり合うんですか?」

「それはそうせざるを得ないわ。モンスターが邪魔している以上あの島の捜索が出来ない。キシリア達が捜索の邪魔をするつもりなら尚更ね。ただ、ルセットと相談して可能か不可能かは後日判断する必要があるわ。」

「やれやれ。まさかモンスター退治をまたやる羽目になるとは。」


ベイトは呆れた様子だ。


「なあ、ルカとエルってのは温泉で俺の隣に座っていた女の事だよな?」


黙っていたモンシアが下を向いたまま声を絞り出した。

ハッとして皆がモンシアの方を向く。


たった一時とはいえ、温泉で過ごした仲だ、死を伝え聞くのは忍びないだろう。


「何で俺達戦ってるんだ?あの二人だって普通に会話できてるじゃねーか。」


一同返す言葉がない。

それは俺も同じ意見だ。何故戦う必要があったのか、いまだに理解できない。


「言葉もないわね。ごめんなさい。」

「いや、あんたを責めてるわけじゃねーけどよ。なんか納得できねーよ。」


ルーシーの苦しい返答にモンシアが項垂れる。


「勇者様。話し辛いんだろうとは思うけど、ルカとエルが勇者様を狙った理由をもっと詳しく教えてくれる?」


そう来たか。だがこうなってしまっては隠す事も出来ない。


「分かった。ベイト達も居るので最初から簡単に話す。えーっと、これだ。」


俺はポケットから透明な鱗を取り出した。今は二つある。


「彼女達は温泉島の後、ずっと船のあとを着いてきていた。俺が一人になるタイミングを見計らっていたようだ。二番星捜索中の昨日の夜、この鱗から彼女達の声が聞こえてアジトのヒントをやるから俺に一人で来いと言われた。こんなやり方では10年経っても見つからないと言われて気になって仕方がなかった。」

「こんなやり方?」


ルーシーが聞き返してきた。そういえばまだルーシーには言ってなかったのか。


「ヒントはこの島、二番星にアジトはない。この島で過去に何があったか考えろ。ここまではルーシーにも話したな。」


頷くルーシー。


「あまり死んだ彼女達の事をあれこれ言いたくは無いのだが、実は二つ目のヒントの交換条件に俺とキスをしたいと申し出があった。」

「キス?」


クリスが反応した。

ベイト達もほーっと唸る。モンシアは眉をしかめている。


「だが変な勘違いはしないでくれよ。彼女達はなにも俺に気があったわけじゃない。エネルギーの補給がしたかったわけでもない。ベイト達と一緒に温泉島で彼女達に会った最初の時、人間の血より唾液でのエネルギー補給で済むならとセイラとキスを試しただろ?まあ、人間の唾液より魔人同士のキスの方がよっぽど補給が効率的だったわけだが。」


クリスをチラリと見る。

クリスは向こうを向いた。


「ちょっと理解できないが、思考のリンクを切っていたセイラの感情を測るために俺とキスをして欲しかったという理由だったんだ。それで俺をセイラに持ち帰ろうと突然豹変して襲ってきたというわけだ。」

「うーん。ルカとエルらしいと言えばそうね。あいつらセイラに関しては忠実な僕だったし。」


昔のルカとエルを知っているらしいルーシーには思い当たる事があるようだ。

モンシアは肩を落としている。


「やっぱり納得はできねーよー。」


それはそうだろう。俺だって納得しているわけではない。


「クリスの前で言うのも何だけど、魔人という特別な力を持った彼女達は心のタガが外れているのかもしれない。人間だったときにあの娘達が人を襲うなんてこと考えもしなかったでしょうしね。」


ルーシーが話をまとめた。一番の原因はそれだ。なにもあそこまでルーシーに挑戦的にならずとも良かっただろうに・・・。

ルーシーに勝てる化け物なんてそうは居ない。諦めて帰るべきだったんだ。

なんか今俺は理解不能なことを考えたような気がするが事実なのだからしょうがない。


俺達は食事を終え、ベイト達を食堂に残してまたぞろぞろと部屋に戻る。

途中ルーシーが俺に聞く。


「こんなやり方ではアジトが見つからないって、どういう意味だったの?」

「わからない。その質問の答えがヒント2だったんだ。」

「そうなの?うーん。こんな場所、こんなやり方・・・。」


やはりルーシーも気になっているようだ。

ロザミィのセリフ、ルカとエルのセリフ。


俺を先頭にルーシー、クリス、フラウの順で歩いていたが、狭い船長室の横のドアの向こうの通路に入ったとき、クリスがルーシーの後ろから抱き付いてきたようだ。


「ちょっとクリス。突然何なのよ。」

「私は魔人だから心のタガが外れているから。」

「ああ、それは謝るけど、何のタガが外れてるのよ。」

「ルーシー綺麗。」

「あんっ!ちょっと!揉まないでよっ!」

「何をやっているんですかー!」


フラウも通れずに叫んでいる。本当に何をやっているんだ。

ははは、とクリスの奇行を先頭で眺めていると、ラウンジのドアが少し開いているのに気付いた。半開きは波に揺れてバタバタするから良くないと思い閉めようとすると、中で会話が聞こえた。

誰かと思って覗く形になったが、意外な組み合わせで目を丸くした。

アレンとミネバが船首側にあるカウンターで座って話している。アレンは酒を飲んでいるようだ。

ミネバは・・・。ミネバなのか?さきと着ている服が違う。

濃い緑色のビロードのような夜会服、延びた足には網タイツと厚底のヒール。

髪をアップに結わえ、表に出したうなじと肩が大人の雰囲気を醸し出している。

完全に別人だ。


アレンとミネバ?そういえば温泉で一緒だった組み合わせだが・・・他に共通点も思い浮かばないし、会話の内容もさっぱり想像できない。


大丈夫なのかと心配したがアハハと笑い声が聞こえた。

これは入っていかない方がいいやつなのか?

俺は急に覗き見しているような悪い気がしてきた。見なかった事にしそのまま通り過ぎる。


「いいからさっさと戻るぞ。」


ルーシー達に言って先に歩き出した。

ルーシーとクリスは抱き付き合ってラウンジの様子は気付かなかったようだ。


部屋に戻る。

クリスはルーシーに後ろから抱き付いたままベッドにグイグイ進み、そのままルーシーをベッドに押し倒す。


「ちょっとちょっと!クリスがおかしくなったわー!勇者様助けて!」

「おかしくないよ。ちょっとタガが外れてるだけだよ。」

「悪かったってー!そんなに気にしてたの?」

「してない。」

「変な絵本を読んで感化されちゃってるんですかねー。」


ルーシーとクリスのやり取りに冷静に突っ込むフラウ。

絵本って俺が主に出てくるやつじゃ・・・。


「セイラ達がちょっとおかしいのは私にも分かる。私も人間の時と意識が違うのは認める。でも私が一番ショックだったのは誰も私はそんな事ないって言ってくれなかったことだよ?まるで私もおかしいよね、そうだよねって話で終わっちゃったみたいじゃない。」


ルーシーのお腹に馬乗りになってあちこち触りまくるクリスが言い放つ。

そういえばそうか。悪いことしたな。


「分かってるの勇者?」


俺の方を向くクリス。雲行きが怪しくなってきた。


「さてと、俺もシャワーを使わせてもらおうかな。」

「分かってるの?フラウ?」

「本でも読みますかね。」

「薄情者ー。きゃー!」


クリスに襲われるルーシー。

プールに入ってたので多少汗は流れたのだがウォッシングするのはやっておきたい。

普段はそんな事はしないのだが、旅先でこんな便利な暮らしに慣れてしまったらアルビオンの安宿に帰ると居たたまれなくなりそうだ。


左舷側の俺達の部屋から右舷側のシャワー室に入る。

例の2重のドアを開けて鍵が掛かっていないのを確認。

脱衣場はカーテンで仕切られている。

何の気なしにそれを開いた。


「あ!」

「え?」


中には髪をタオルで拭いているキシリアが全裸で立っていた。


「うわっ!ごめん!」


俺はカーテンを閉めた。いったい何故ここにキシリアが・・・!


「わ、わたくしこそ、申し訳ありませんでした!そちらの鍵をかけるのを忘れていたようです!」


そういうことか。言われてみればありがちなミスなような気がする。


「邪魔してすまない。ゆっくり使ってくれ。俺は後にするから。」


そう言って部屋から出ていこうとする俺。


「あのう。勇者さん。」


カーテンから肩と頭を出して俺を見るキシリア。


「え?な、なに?」


呼び止められてしどろもどろになってしまった。


「これからシャワーをお使いになるんでしたら、わたくしにお身体を洗わせてくれませんか?」


カーテンの布を手で寄せて恥ずかしそうに上目遣いで話すキシリア。


「いや、自分で洗えるから大丈夫だよ!」


そういうことを心配して言っているのではないのは分かっているのだが。


「良いところでミネバさんが戻って来られて、少し残念な気持ちでモヤモヤしてまして、シャワーでその気持ちを洗い流そうとしていたら、勇者さんが来てくださって・・・。わたくしまたモヤモヤしたまま部屋に戻りたくはありません。」


うう。隣でルーシー達が居るというのに・・・。どうしたら・・・。

俺が固まっているとキシリアはニッコリ笑ってカーテンを開け、俺の手を引いて中に招き入れた。黙っているのを肯定と受け取ったのか。なんて積極的な女性なんだ。

とはいえ、彼女の芸術品のようなスタイルに目を奪われ抵抗出来ないで居る。

俺の服を脱がしにかかるキシリア。

さすがに自分でそれくらいはやる!


タオルを腰に巻く俺。キシリアは全裸だ。

温泉の時の再来だ。クリスには抵抗あったがキシリアは芸術品みたいなもので現実味がなく恥ずかしがっているほうが不自然に感じる。

クリスに言うとまた怒られるかもしれない。


小さな腰掛けに座らされざっとシャワーをかけてもらう俺。

以前のクリスと同じような感じになってしまっている。

押せ押せで押されまくってなんとなくこうなった。本当に押しに弱いのか俺は。


「わたくしプールで勇者さんを触りたくて遊んでいる振りをして飛び付いたりしていたんですよ。はしたないとお思いでしょう?」

「あ、いや、楽しかったよ。」

「本当ですか?ウフフ。勇気を出して良かったです。」


スポンジに泡を含ませて握るキシリア。

膝をついてゴシゴシと俺の体を洗いだす。時折俺の顔を見てニッコリ笑うキシリア。

とても嬉しそうにしているのが俺には不可解だが、悪い気はしない。


「あー。勇者さんの体をこんなに近くで言い訳もせずに触れるなんて、気を失ってしまいそうです。」

「おいおい。そんな喜ぶことかな?」

「クリスさんが昔キス魔って通称だったのご存じですか?」

「え?キス魔?そう言えばルーシーが言ってたことがあったような・・・。」

「ええ、わたくし達の中で誰彼構わずキスをしようと狙ってたんです。多分そのせいで今も唾液がエネルギー源になっているんじゃないでしょうかね。」


ロザミィは毒牙にかかって、ルーシーも狙われていたと言っていたか。

だが、なぜ今そんな話を?


「わたくしの通称はもっと酷いですよ?通称おさわりちゃんです。」

「お、おさわりちゃん?」

「はい。意識はしてなかったんですが、よく人の体に触るってミネバさんに付けられちゃいました。」

「そうなんだ。まあ、でも良いんじゃないかな。キス魔の方が酷いと思うよ。」

「そうですか?フフフ。ありがとうございます。」

「それより、魔王の城で意外と楽しくやってたんだなという方がショックだよ。」

「そんな事はありません。自由もありませんでしたし。」


キシリアは俺の後ろに回って背中をゴシゴシ洗い始める。


「大きな背中です。この背中で大陸中を駆け巡っていたんですね。」

「アハハ。意識したことないから、そう言われると照れちゃうな。」

「はぁ・・・。興奮が最高潮に達してしまいそうです。」

「俺にはさっぱりわからん。興奮する要素がどこに・・・。」


そう言っていると背中にキシリアが抱き付いてきた。体重を乗せて胸を押し当ててくる。


「おいおい。そんなにくっつくと・・・。」


グラリと俺の背中から横に倒れそうになるキシリア。


「おいおいおいおい!」


俺は振り替えって倒れないように抱き支える。


キシリアは気絶している・・・。


本当に興奮が最高潮に達して気を失ってしまったのか・・・。


個室、裸、意識を失っているキシリア。そんな単語が頭を過ったが、そんな事を考えてる場合ではない。

取り敢えず名前を呼んで体を揺すってみるが起きる様子はない。


仕方ないので壁に背をつけさせ彼女に付いた泡をシャワーで落とす。

俺も泡だらけなので洗い流す。


キシリアを抱っこして脱衣場に運ぶ。体を拭いて下着と服を着せる。俺も服を着る。

右舷側の彼女の部屋まで運んでベッドに寝かす。

意識を失ったまま放置もできない。ベッドの横で彼女の名前を再び呼んでみる。

まさかこのまま起きないなんてことはないよな?

手を握って祈るしかない。


そういえばミネバはまだ戻ってない。

ラウンジに居るのだろうか?わりと話し込んでいるんだな。


「んっ。」


そう思っているとキシリアが反応した。

良かった!無事だった。


「はっ!わたくし、ここは?」

「あー、良かった。気が付いたか。びっくりさせないでくれよ。」

「勇者さん。申し訳ありません。わたくし、気絶してしまったんですね。」

「まさかホントにするとは思わなかったが、何か病気でもあるんじゃないだろうな?」

「ええ。大丈夫です。勇者さんの背中を思う存分触っていたら興奮しちゃって。」

「よくわからない部分で興奮するんだな。それがおさわりちゃんの真骨頂なのか?」

「そうですよ。触ってないと寂しくて泣いちゃうんです。」


握っていた手を強く握り返すキシリア。


「あまり興奮しないようにな。それじゃ、今日はもう本当に寝るから、君もそのまま休んでいるといい。」

「はい。ありがとうございます。看病までしていただいて。」

「おやすみ。」


俺はベッドの横から立ち上がりドアに向かう。

ドアがガチャリと開いて誰か入ってきた。


「あれ?既視感。」


俺の方に既視感はない。むしろ誰だお前はという感じだ。

さっきラウンジで見た別人のような出で立ちのミネバがまたも入ってきたわけだ。


「あたしが居ない間に続きをおっ始めちゃったわけー?」


見た目が大人の雰囲気だが、言動は変わらないらしい。


「違いますよミネバさん。シャワー室でお背中洗っていたら気絶して、ここまで運んでいただいたんです。」

「え?それ続きみたいなものじゃ・・・。」

「何の続きだよ。」

「勇者ー!裸勇者ー!私にもくれー!」


また抱き付いてきたミネバ。

さっきと違ってちょっとドッキリする。


「それ何の格好なんだ?何で急に着替えた?」


俺の疑問をぶつけた。


「ああ、これ。サンダーダンサーのエグゼクティブキュートのコスプレだよ。」

「ん?なんだって?」

「サンダーダンサーのエグゼクティブキュートのコスプレ。」


何を言っているのかさっぱりわからん・・・。


「そういう作品のキャラクターのコスチュームを真似て作った衣装ということです。」


キシリアが説明してくれた。

サンダーダンサーって・・・。語呂が悪いな。


大人っぽい衣装と思ったらそういう事だったのか。

やっぱり珍獣は変わらないな。


ミネバの両肩を引き剥がしドアを出る俺。


「おやすみ。」


そう言ってドアを閉める。

ベッドから腰を起こして手を振るキシリア。

腰に左手を置き、右手で頬杖をついてエグゼクティブキュートのポーズ?をとるミネバ。

わからんって。



シャワー室を通って部屋に戻ると明かりが消されてみんなベッドに入っていた。

シャワーを浴びただけにしては時間がかかってしまったが、どう言えばいいのか・・・。

寝ている3人を起こすのもどうかと思い椅子に腰掛ける俺。


「勇者様ー。」


ベッドの上で手招きするルーシー。起きていたのか。

いつもの定位置に割って入る俺。

クリスが無言でお腹を触ってきた。やめろ!


「勇者様遅かったわねー。」

「キシリアとなんかあった?」


ルーシーとクリスが左右から質問してくる。なんでわかるんだ?


「なにもないと思うよ。それよりもう寝るから。おやすみ。」

「思うってなに?」

「勇者、勇者ー。」


俺は寝た。


そして夢を見た。


悪い夢を。


ルカとエルの断末魔。


嗚咽、すすり泣く声。


繰り返し繰り返しその場面が甦ってくる。



ハッとして目が覚めた。汗をかいているようだ。


「勇者様大丈夫?」


ルーシーが体を半分起こして横から俺の顔を覗き込んでいる。

クリスはまだ俺の左肩で寝ている。


「あ、ああ。大丈夫。」


フラウも起きていて床に置いてあるリュックから水筒を取りだし俺に手渡す。


「これ飲んでください。まだ新しいですから。」

「ああ、ありがとう。」


クリスを起こさないようにそっと体を横に退けて腰を起こす俺。

水筒の水を飲み、落ち着く。


「うなされてたみたい。」

「ああ。悪い夢を見たよ。」

「悪い夢・・・ね。」


ルーシーが心配してくれる。

どんな夢かは察しが付いたようだ。

あまり意識しないようにしていたのだが、どうやらルカとエルの死は俺の精神に堪えたのだろうか。止めを指したルーシー本人にはもっと辛い記憶だろう。


「どうせなら楽しい記憶の夢を見たかったよ。」


強がって見せたがルーシーもフラウも笑わなかった。


ドアが勢いよく開いた。


「もう!いつまで寝てるのー!町に着いたわよー!」


入ってきたのはロザミィだった。

ほんの数分寝ただけかと思ったら、朝になって町に着いていたのか。


その声でクリスが起きた。

寝ぼけ眼で俺にキスしてきた。

クリスにとっては食事なのでまあ良いんだが、ホントにキス魔だな。

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