第74話
そして俺達は今、クイーンローゼス号の船室。ラウンジ内に居る。
俺達と言うのは、本島捜索から帰った俺、ルーシー、フラウ、クリス、ロザミィ。そして船長のベラ。小島捜索部隊のベイト、アデル、モンシア、アレン。
それから、何故かここにいるキシリア、ミネバの二人もだ。
薄いグレーの色のワンピースを着ているキシリア。
紺の靴もお洒落で、絵画から抜け出してきたような品のある服を着ている。
ミネバは緑のTシャツと短パンで部屋着のまま来たのかというラフな格好だ。
ラウンジの中央にテーブルが4つ並べられ、外側に椅子が囲んでいる。
船首を前として左側に俺達5人が陣取り、前方にベイト達、後方にベラ1人。
右側にキシリアとミネバが二人座っている。
何故こういう状況になったのか、その後に聞いたベイトの話を順に追って話すとしよう。
二日前の夕方。俺達と別れたクイーンローゼス号は西へ進路を取った。というのも、東側には小島が無かったからだ。
初日の夜、岩礁でルカとエルの鱗からでた光を見たとき、確かに海に島は見えなかった。空から見ても西側に片寄っていた。
よってその日はベイト達の出動は無く、そのまま船で過ごした。
昨日の朝。周囲の小島の捜索が始まった。
沖に停泊するクイーンローゼス号と救命艇で小島に向かうベイト達4人。
小島は二番星同様、不毛な岩ばかりのゴツゴツとした場所だった。
死角になるものがあまり無く、捜索自体は簡単に終わっていく。
特に目立ったものはない。
あの島以外は。
一番星で温泉島を見つけた時同様、そのぎょっとする島はその時からすでに皆の目を引いていた。
何かあるならあそこだと。
周囲の小島の捜索を優先して片付けていくベイト達。
昨日1日かけてそのぎょっとする島以外のめぼしい島を駆け足で済ませる。
内容はほぼ同じ。岩ばかりの不毛な島だった。
収穫もなし。
今日の朝。
いよいよぎょっとする島に上陸する順番が訪れる。
ぎょっとする島。不毛な岩の島ばかりのこの近海で一つだけ緑で覆われた島。全長も小島と言うには大きい。2キロメートルは有ろうかという大きさだ。
その後この島はイビルバスと名付けられたので、今後そう呼称する。
クイーンローゼス号が沖合いに停泊。今現在ある場所だ。
救命艇を出しイビルバスに上陸する。
木々で覆われたこの島は周囲から地形がどうなっているのか分からなかった。上陸後にモンシアが言うには。
「やっぱり温泉でも湧いてるんじゃねーのか!?じめじめしてやがる!」
温泉島が温泉として成り立っていたのは、半分は元々人工的に作られた施設であったからの可能性が高い。
そうでなければ均一にお湯が張られはしないし、水捌けのよい岩場にお湯が貯まるなんて都合の良いことは起こらないだろう。
周囲を散策してそれが最初に分かった。
ここは湿地帯のようにドロドロの泥と沼で覆われている場所だった。
「温水は湧いているのでしょうがね。沼だらけで浸かれるものじゃありませんね。」
「こりゃ捜索は困難が予想されるな。救命艇を引っ張りあげて浮かべないとあっという間にずぶ濡れだぜ。」
ベイトとアレンが話した。
「何があるか分からない。邪悪なバスタブってところか。じゃあここをイビルバスとでも名付けるか。」
アデルがそう呟いて。皆が納得した。
救命艇を引っ張りあげての捜索も困難だった。
全域が湖沼となっているわけでもない。半分は陸地だ。陸地は木々で生い茂っている。
方向感覚が狂うし、移動で捜索もおぼつかない。木々の壁で周囲は見辛い。
とりあえず前進し、何か有るのか無いのか確かめるというアバウトな方法をとるより他にない。
しかし、それはすぐにあった。
狭い湖沼を救命艇で渡っていると、ドスンとでかい地響きが何処かから聞こえた。
周囲を見回す4人。だが、木々で覆われた場所ではよく見えない。
湖沼に小さな波ができて押し寄せてくる。
どうやら遠くで湖沼に大きな波ができ、それが広がってきたということらしい。
問題は何が波を起こさせたのかだが・・・。
当然4人はそちらの方向に舵を切った。
波の来た方向。そこに向かえばそれが分かる。
「それ以上進むのはおすすめ致しませんよ。」
見上げる4人。
そこにはいつの間にか翼を背中に生やしたキシリアとミネバが浮いていた。
「驚かせますね。でもそれはどういうことです?この先に何があるというんですか?」
「まあ、信じないかもしれないけど、この先は危険がいっぱいだから行かない方がいいよ。」
ベイトにミネバが答えるが、答えになっていない。
「そりゃ納得出来かねるぜ。あんたらのアジトを探してんのに、あんたらに止められて、はいそうですかとは引き返せねーよ。」
モンシアがもっともなことを言う。
「モンスターが居るから危険です。と言えば納得していただけますか?」
「モンスター!?」
キシリアが一応の答えを教えるのだが、4人がほぼ同時にすっとんきょうな声をあげた。
「おいおい。冗談で俺達を担ごうってのかい?モンスターは過去の遺物になったんだぜ。」
アレンが声をあげた。
「ほーら。やっぱり信じないじゃん。」
「さすがに早急過ぎましたね。信じて頂けなくても仕方ないです。でもこの先のモンスターの姿をご覧になればお分かりになりますよ。百聞は一見にしかず。ですが本当に危険ですから、注意してわたくし達の言う通りにして下さいね。」
ミネバとキシリアは意気消沈という様相だ。
「あんたの?」
アレンが眉をしかめる。
「はい。まずわたくし達も同行させてもらいます。何かあったとき、あなた達だけでは危険です。」
顔を見合わせるベイト達。
「それと、大きな音は絶対に出さないで下さい。モンスター、いえ、わたくし達はホワイトデーモンと呼んでいますが、奴等に気付かれてしまうといけません。」
「ら?ってことは複数居るってことか?」
モンシアは話を信じ始める。
「そうです。奴等は増殖しています。この沼地で。一体だけならなんとかなるかもしれない。ですが複数が襲ってきたら・・・。ですので音は絶対に厳禁です。そして一目見て納得できたのならこの地には立ち寄らぬことをおすすめします。奴等はこの沼地にしか生息していない。外に出れば危険はありませんから。」
徐々に真顔になっていくベイト達。
ベイト達はこれまでモンスター討伐をしていた、言わばプロだ。
木っ端のモンスターなど恐れることはないだろう。
だが、モンスターと戦ってきたからこそ分かるモンスターの脅威というものも知っている。
何より恐ろしいのは数だ。
どれくらい巨大でも、どれくらい凶悪でも、一体だけならなんとか出来る。
それが束で襲ってきたのなら話は別だ。
いくつもの不確定要素に左右されることになる。単純に戦力も数倍必要になる。
「分かりました。とにかくそいつを見てみないと何とも言えない。」
ベイトが承諾する。
翼を音をたてずに羽ばたかせ、救命艇に降り立つキシリアとミネバ。
こうして6人が乗った救命艇が波の発生したであろう湖沼の先に進むことになった。
「それで?そのホワイトデーモンとやらはいったいどんなやつなんだい?」
モンシアがオールを漕ぎながらキシリア達に尋ねる。
救命艇は細い湖沼を蛇行しながら進んでいる。
「名前の通り。白い竜です。目の覚めるような白い色の竜。巨大で、凶悪な。この島の端に当たる場所にはあまり来ません。沼が狭いので巨体が通れないからです。この先は広い沼が広がってます。もうすぐですよ。お静かに。」
木々で遮られた壁の向こうに広がった湖沼が見えてきた。
木々の壁に隠れるようにゆっくりと半分だけボートの先を出して広い沼を見渡せるようにする。
ベイトとアレンが船首に立ち顔を覗き込む。
すぐに木の影に顔を引っ込める二人。
見えたのだ。
沼に沈み、頭だけ出してじっとしている白い竜の姿が。
ベイトはこの時そんなバカなと目を疑ったらしい。
全身から汗が吹き出し、恐怖で身がすくんだと。
その様子を見てオールを漕いでいたモンシアとアデルも船首に立つ。
息を飲む二人。
竜はベイト達のボートを停めたすぐそこに居た。
顔の大きさだけで人間を簡単に丸飲みできる大きさだ。
と言うことはこの先は相当深い沼になっているのだろう。
全身の大きさは見えないので計れないが、20メートルは有るのではないかと思われる。
羽も見える。飛べるのか?物理的には考えられないが、相手は造り出されたモンスターだ。これまでも飛行していた巨大モンスターは少なからず居た。
目の覚めるような真っ白な竜。何か冷気を纏ったような、幻想的な雰囲気すら醸し出している。長い角、全身の鱗、背鰭、全てが白い。
時折開く目。その瞳孔だけが不気味に真っ赤に染まっている。
「納得できましたか?早く戻りましょう。思ったよりも近くに居ます。」
小声で囁くキシリアに頷く4人。
これを見てしまえば納得と言うより危険を感じずにはいられない。
「どれどれ。あたしもちょっと拝見。」
モンシアとアデルが引っ込んだ後にミネバも船首にひょっこり飛び出した。
「ん?ぎゃぁああああああああっ!!!目の前に居るーっ!!」
大声で叫ぶミネバ。
ベイト達の顔が蒼白になる。
「ミネバさん!声が!」
キシリアも小声で叫ぶ。
大きな咆哮をあげながら鎌首を持ち上げ沼から上体を現すホワイトデーモン。
「急いで奥に逃げ込んで下さい!」
キシリアの声にベイトとアレンがオールに飛び付きボートを漕ぎ出す。
長い首の竜が狭い通路の湖沼に突っ込んでくる。
木々に巨体がのし掛かりベキベキと壁が剥がれていく。
そして口を開くホワイトデーモン。
口の中に何かが集束していく。
おとぎ話では竜は火を吹くものだ。もしこれがそうならボートを漕ぐより早く火に丸焼けにされてしまうのは必至だ。
死を覚悟しましたよ。とはベイトの言葉だ。
だがそうはならなかった。
キシリアが翼を広げて飛び上がり、手にその容姿に似つかわしくない大きな、とても大きな大剣を持ってホワイトデーモンに立ち向かった。
ベイト曰く大剣とは言いましたがあれを剣と言っていいのか迷いますね。とのことだ。
2メートルを越える全長、極太の剣身、重さ数百キロはあろうかという鉄塊。
大剣はホワイトデーモンの口を上から串刺しにして下顎まで貫いた。
集束していたエネルギーのようなものは閉じられた口の中でパンクしてその場で爆発した。
かなり大きな爆音が響く。
さらに左手で同じくらいの大きな大剣を持ち、ホワイトデーモンの首を下から斬り上げ切断した。
物凄い質量の暴力。それが加速してあらゆる物を断ち切る。
細い湖沼に竜の首が落ちる。
しかしそれで終わりではなかった。
首がもげたホワイトデーモンは左腕の長く白い爪で反撃してきた。
大剣でそれを防ぐキシリア。
空中に浮いているので爪の攻撃自体は防いでも踏ん張りが効かず徐々に押し込まれていく。
「んにゃろー。」
その間もオールで奥に退避していたボートの船首に呆然とがに股で立っていたミネバが我に返って戦意を表す。
ミネバのでこ辺りから光が輝きだす。
今度はミネバの方に何かが集束していく。
ギューンとなんだか危険な音がでこの前に集まっていく。
息を飲んでそれを後ろで見守るベイト達。
ミネバのでこから極太の光の筋がホワイトデーモンに放たれる。
周囲は光に照らされ真っ白にフラッシュされる。
光の筋はホワイトデーモンの体を貫き大穴を開ける。
左胸辺り。さらに光の筋を動かし左腕の根元を焼き払う。
左腕を失ったホワイトデーモン。当然キシリアへの攻撃が解放される。
ミネバの極太の光の筋はここで切れる。
ミネバは船首でふらつき倒れそうになる。モンシアとアデルが驚いて体を支える。
沼に落ちたホワイトデーモンの頭に刺さったままの大剣を低空飛行して右手で掴み取るキシリア。
両手に身長ほどもある大剣を構える。大剣二刀流。
残った右腕で更に攻撃しようとするホワイトデーモン。
腕全体から爪のような針が無数に伸びてキシリアを襲う。
圧倒的質量の二本の大剣を交差して腕ごともぎ落とす。
さすがに勝負ありだ。モンスター特有の消滅という死亡状態で光の粒となってその場から消えていく。
ホッと一息つくベイト達。
「さあ、早くこの島から出ましょう。先の爆発音とミネバの光線の音を聞き付けて他がやって来るかもしれません。」
大剣と翼を消してボートに着地するキシリア。
再びベイト達に緊張が走る。
「あー。ビックリした。漏らすかと思った。」
「ビックリしたのはこっちだぜ。騒ぐなって言ったのは誰だよ。」
ミネバの漏らす発言はあえて無視してアレンが呆れて嫌味を言う。
「まあまあ、俺達だけならそのまま突っ込んでアイツの餌食になってたかもしれませんし、一応助かりましたよ。」
「そうですね。先のドスンという大きな音は竜同士の共食いの後だったのかもしれません。周囲に一体しか居なかったのはそのため。どちらにしろ幸いでしたね。」
「共食い?」
「ええ。モンスターの本能というやつでしょうか。襲い食らう。それが行動の全て。死亡すればああやって消滅してしまいますから生きているうちに食べるんです。そして数が減った分だけまた分裂し増殖していく。強い個体が生き残り、分裂しまた強い個体を産み出していく。いずれこの場所で破綻が起きてしまうかもしれない。」
ベイト達はこの島に入ってきた場所へと戻ってきた。沖にクイーンローゼス号も見える。
救命艇を島の内側の沼から海に引き上げ、戻る準備をする。
「ここは危険ということがお分かりになりましたか?少なくてもクリスさんやロザミィさんが一緒でないと立ち行かないと思います。」
「そのようですね。一旦作戦会議に戻りますよ。俺達だけでは判断しかねる。状況が状況なのでね。」
「捜索を続けるつもりなんですか?」
「そのために来たのでですね。あなたがアジトの場所を教えるのならそちらに向かいたいところですが。」
「分かりました。ではその作戦会議にわたくし達も同席させて下さい。忠告だけはさせてもらいます。」
キシリアとベイトの会話に顔を見合わせるベイト達。
「そいつは良いが、襲ってきたりしないんだろうな?」
「やだよう。そこまで欲求不満じゃないよあたし。ニュフフ。」
アレンの疑問にすかさずミネバが答える。
眉をしかめる4人。
「さっきのをぶっぱなされたら船がひとたまりもないぜ!」
「ぶっぱなしてない!持ちこたえたでしょうがぁ!!」
モンシアが叫ぶ。ミネバが顔を赤くして更に叫ぶ。
4人の頭に?マークが浮かぶ。
「オシッコのことでは無いと思いますよ。光線の事です。」
「ああ、そっち。ああー、そっちね。」
キシリアが冷静に突っ込む。
一人で納得しているミネバ。
「まあいい。招待しようがしまいが、空を飛べるコイツらには何の影響もないだろうぜ。今さらビクビクしても始まらん。」
アデルが話をまとめる。
「ですね。まだ来たばかりという感じですが引き返すとしましょう。」
ベイトの言葉で海に浮かべた救命艇に乗り込む5人。
「見て見て。エクストリーム搭乗。」
ミネバが岸に残り背中を見せる。
何をするつもりだと言わんばかりにそれをボートから見上げる5人。
その場で後ろにバク転して着地、横回転で左右にグルグル行ったり来たりして真上にスピン。木の枝に頭をぶつけて墜落しフラフラになる。今度はボートに向いて前に回転して飛び上がる。
ボートから横にずれて海に落下した。
水しぶきが上がる。
みんな言葉を失っていた。
ブクブクと泡が浮き沈んだまま上がってこないミネバ。
「よし、みんな乗ったな。出発しようぜ。」
アレンがオールを持って漕ぎだした。
「乗ってなーい!!」
ザブンと海から這い上がったミネバがボートに手をかけて上がってきた。
みんなで大笑い。
沖に停泊しているクイーンローゼス号に戻ってくる救命艇。
その様子を見ていたベラはデッキで待ち構えている。
船員がデッキから縄梯子を足らしベイト達を船に迎える。
ベイトがまず縄梯子に手をかける。
デッキの上から声をかけるベラ。
「もう戻ってきたのかい?捜索が終わったってわけじゃなさそうだねぇ。」
「残念ながら。早速壁にぶち当たりましたよ。」
「それに、この船に乗り込む男は女を連れ込んでくるルールでもあるのかね。また女が増えてるじゃないか。」
「アハハ。普通の女なら俺達も歓迎なんですがね。」
「まあそうだろうね。」
男4人が登った後ミネバがずぶ濡れで上がってきた。
最後にキシリアも。空を飛べる彼女達が縄梯子を使う必要は無いような気がするが。
「おお、おお。でっかい船。思ったより豪華な船だったんだねー。装飾もシンプルながら品がある。んんー。でも惜しい!床が簡素に張り替えてある。もっと良い板を使えば良かったのにねー。なんでこんなことに?」
「わたくし達が針で穴だらけにしたからですよ。」
「あ、そうか。忘れてた。」
凍りつく船上。わざとかと思うほど大きな声で話す二人。
「アハハハハ!あの時の化け物かい。久しぶりだね。まあこの船に上がったからには客人だ。ゆっくりしておくれ。濡れてるんならシャワーでも入って着替えると良いさ。誰か連れていってやりな。」
ベラの豪快さも度肝を抜く。
ベイトが肩をすくめて二人をシャワー室に案内した。
濡れているのはミネバだけなのだが、ミネバのお目付け役といった所であろう。
もう何度も書いているが、船尾楼、船長室の左の通路、ラウンジを通り越して二つ目のドアがセイラが壊してシャワー室に生まれ変わった部屋だ。
シャワー室のドアを開け使い方をざっと教えるベイト。
「こんな部屋まであるなんて。世間は進んでいるのですね。」
「まさか。ここだけですよこんなもの。まあ、そのうち発展するかもしれませんがね。ではごゆっくり。使うときは鍵を両方のドアかけておいて下さい。濡れた服は掛けておいて着替えはバスローブがありますから。」
「うふふ。温泉で裸で過ごしたのに気にする必要があるんですか?」
「そっちが気にしなくてもこっちが気にしますからね。」
キシリアの言葉にベイトも慌てる。
「覗きの常習犯の勇者が居なくて助かったー。」
ってミネバが言ってましたけど本当ですか?とベイトに言われた。
断じて違う!
「勇者はついうっかりみたいな顔をして入ってきて、体の隅々までじっくり舐めるように見回していくんだから。粘膜まで搾り取られそうだったよ。」
とも言っていたという。それは何の話だ!
「あたしの想像上での話だけどね。」
風評被害を撒き散らすな!
「続き聞きたい?」
「いや、大丈夫ですよ。濡れているのですから早く入ったらいいんじゃないですかね。ではのちほど。」
ベイトは退散して部屋を出た。
ラウンジのドアが開いていて、そこにベラとアデル、モンシア、アレンがそろっていた。
そしてイビルバス上陸後の経緯をベラに話す。
俺達に話すのは二度目ということだな。
捜索は一旦中止を余儀なくされた。
キシリアの言うようにクリスとロザミィの力が必要と判断されるからだ。
キシリアの言葉を信じるならばモンスターは一定の数で増殖し減ることはない。数を相手にするには現在の人数では不足だ。
俺達が戻り次第再び捜索を続行するかどうかの議論を再開ということで話は着いた。
キシリアとミネバがシャワーから出てくるまでに議論は棚上げになった。二人がラウンジの前を通ろうとしてドアの中の皆に気付いた。
キシリアはともかくミネバも来たときと同じ服を着ていた。乾いている。
まあ、新しく同じ服を作ればいいだけなので不思議はない。
「話は聞いたよ。まあゆっくりしなよ。勇者君達が戻るまで捜索も議論も棚上げさ。いつ戻ってくるかは分からないから、こっちから報せに行く必要があるだろうけどね。午後にでも船を島に近付けてみるさ。きっと気付くだろう。」
「そうですか。とりあえずは安心しました。懸命な判断です。ですが勇者さんを迎えに行く必要はないと思いますよ。」
船尾側の椅子に座ったまま背伸びして話すベラ。ラウンジに入ってきながらキシリアが答える。
その言葉に皆がキシリアの顔を見る。
「勇者さん達の所にはルカとエルが居ます。今頃戦いが始まっていることでしょう。」
驚く一同。まさにその時俺達の戦いが始まっていたのだ。
「それが終われば、こちらに戻ってくるでしょう。」
これがどうやってキシリアに知られているのかそれはまだ分からない。
ルカとエルと連絡を取っているのは違いないが、彼女達が失敗することを前提に話を進めているのは何故?
船首側にあるカウンターの席に座るキシリアとミネバ。
不敵な二人と刻々と進んでいく時間。
やがてビルギットがラウンジに入ってくる。
「姉さん。勇者殿が戻ってきましたぜ。」
「あいよ。ご苦労。戻ったらこっちに来るように言ってくれるかい?」
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