第56話
翌朝になって再び島の捜索再開だ。
朝食を軽く取って、俺、ルーシー、クリス、モンシア、アレン、ロザミィとあの時のメンバープラスロザミィで行方不明者が吊るしてあった場所へ戻り再出発する。
様変わりし過ぎて何処にも見覚えのある場所など無いのだが、あのCの字型の周囲を囲った岩場と中央に立っていた大きな木は見れば分かるはずだ。
見ることが出来れば。
本来のポイントGの位置より先に川辺があったのでそこをポイントGとした。ポイントHには移動せずポイントGをそのまま仕様した。
そしてそこを現在も拠点てして使っている。
ポイントHの中盤にあの木が有ったのだから、周辺が様変わりしていても同じ経路を辿れば同じ場所に着くはず。
木の倒壊、炎上、落雷で無残な姿になっている。火は消し止められているようだ。
同じ所を通った面影は無い。
戦いの凄まじさを今更ながら感じるが、その相手が今ここに一緒に歩いてるというのも妙な感じだ。
最初はクリスが気付いた。
「ちょっと待って。この辺地形が変化してる。」
「まあ、木が倒壊してるし、岩場も崩れていてもおかしくないだろうな。」
「そっちの変化じゃなくて、能力で変化させられてる。」
ハッとする俺達。
確かにあの木があったのはこの辺だったような気がするが、それらしいものは見当たらない。
周囲を見回すと同じような木や岩が並んでいる。特異なものは一つもない。
これは変化の能力で周辺のものをコピーして作り出したからなのか?
クリスに言われなければ気付かなかったかもしれない。
「ロザミィ!あんたなの!?」
「えー。違うよー。私はすぐにみんなを追いかけて、その後ずっと一緒だったでしょ。」
やけにハッキリ答えるな。自分でないと自信があるからなのか。
「じゃあいつ、誰が・・・何のために・・・?」
俺達はいきなり何かに躓いたような、足元が危うい感覚に陥った。
誰が?
ロザミィで無いとすればセイラ達に決まっている。
いつ?
俺はハッとした。
肩から力が抜けたような、脱力を覚えその場にしゃがみこんだ。
「勇者様?」
ルーシーが俺を心配する。
皆も俺を注目する。
「実はルーシーと離れていた夜、寝付けずにテントで微睡んでいた。その時、羽の音を聞いたような気がした。今の今までそれは何処かから温泉島に飛んできたセイラ達の羽の音だとばかり思っていたが、違うのかもしれない。セイラ達はまずここに来ていた。」
「それからあの温泉の島まで行ったってことか。」
アレンが続けた。
「ロザミィからの連絡でこの島にルーシーとクリスが居ないことを知って、何かを隠滅するためにセイラはここに来た。温泉島で俺達と会ったとき、意外そうな顔をしていたが、ロザミィと離れていた俺達の細かい居場所は知る機会が無かったからだった。」
「なるほど。一仕事終えてのんびりってことか。俺達を歓迎してたのは内心ザマー見ろとせせら笑ってやがったのか!」
モンシアが憤っている。
「問題は何故?って所ね。」
ルーシーが腕を組む。
「けどよう。あの時この場所はちゃんと探したはずだぜ?始めての手がかりになりそうな場所だったんだ。それこそ穴の開くまで入念に調べたはずだ。」
モンシアが疑問を投げる。
その通りだ。調べる前ならば分かる。調べられて困るものがあって、それを隠した。だが何も発見できなかった場所を隠す必要がどこにある?
「ふふふ。私達の一歩リードってところね。何故かは教えないわ。でもこれだけは教えてあげる。ミスリードを誘うためにやったわけじゃない。意味の無いことはしない。これはゲームなんだから。フェアにいかないとね。」
突然ロザミィが話し始めた。
文面はミステリアスな文章なのだが、やたら棒読みなので滑稽にさえ感じる。
「セイラなの!?」
「セイラお姉さんが言えって。」
「セイラ達にとって意味のある隠蔽。何もなかったこの場所を隠す意味・・・。」
ルーシーは顎に右手の指を添えて考えてる。
隠されてしまった以上、もう何も出ないだろう。元から何も無いのだが、何か見落としがあったか、あったのに気付かなかったか。それも探すことは出来ない。
「証拠隠滅されたんじゃあ、この先探しても何も出ない公算が高いわね。クリスに形跡だけでも発見してもらえれば規模くらいは分かるかしら。ここだけなのか、他にもあるのか。聞いた所で何も答える気が無いなら話す必要も無いけど、ロザミィを通じてこちらの内情を探っておきながらフェアというのは違うんじゃないの。」
「ロザミィを助けたのはあなた達の判断でしょ?私はちゃんと処分しようとしたはずよ?それに、ロザミィのこと上手く使っているみたいだし、お互い様ってところよ。」
原稿を読み上げるようにロザミィが抑揚のない言葉で口にする。
「あー。それはそうだったわね。でも処分って本人に言わせるのはドン引きしちゃうんだけど。」
「私達を殲滅しようとしているあなたに言われたくないわね。」
「殲滅なんてしようとしてない。私の目的は魔王の娘の確保とあなた達の保護。そしてこの海域の安全よ。」
「あーらそうだったの。それは失礼。」
「勇者と混浴デートでキスしたの?」
クリスが会話に入ってくるが聞いていることが斜め上で呆気に取られる。今そういう雰囲気ではないと思うんだが。
それにデートではない。
「すっごい良かった。私も勇者ちゃんとずっと一緒に居たいなー。」
「じゃあセイラもこっちに来ればいいのに。」
「うーん。じゃあ今夜また温泉で会いましょうか。7時くらいにみんなで行くわ。勇者ちゃんもクリスも一緒に入りましょー。」
「うん。分かった。」
「来るんかい!」
ルーシーが思わずノリ突っ込みをした。
まるで友達と連絡を取り合っているかのような気軽さだが一応敵同士なんだよな?
「これはゲーム。ルーシー達が私達のアジトを見つけるのが先か、私達が隠し通せるか。引き込んでばかりじゃフェアなゲームにならないでしょ?私達が何処から来るのか、何処に帰るのか、探せばいいと思うわ。そんなこと言ってホントは勇者と会いたいだけなんじゃなんの?顔ニヤけてるよ。ちょっと話に入ってこないでよ。ロザミィも喋らなくていい。・・・あ、喋っちゃった。」
「随分自信が有るみたいね。罠を張られたり追跡されたりという心配はしないのかしら。」
「出来るかしら?それも含めてゲームってやつよ。それじゃーね。今夜会いましょう。」
「それは俺達も行っていいって事なのか?」
先ほど憤っていたモンシアはそれはそれとして温泉には行きたいみたいだ。
「みんなで来てね。今夜7時にね。ふふふ。楽しみにしてるわ。通信終わり!きゃー!なに着ていこうかしら。あ、どうせ脱ぐのか。あ、終わりだって。」
「なんなのよ。おちょくって楽しんでるのかしら。」
「どうするんだ?」
「勇者様はどうしたい?」
「そりゃ行くに決まってるだろー!なー勇者殿!」
モンシアが俺の肩をバンバン叩いた。
「お招きはありがたいが策を労する相手だ。何が待っているのか分からんぜ。」
アレンが言う。
「だが相手を探るためには罠であっても乗らざるを得ない。俺達を襲うつもりなら何も罠なんて張る必要も無いだろうが。」
「そんなにセイラと会いたいの?しょうがないわねー。敵同士で楽しく温泉なんて情緒が狂っちゃうわ。」
「良かったね勇者。裸のセイラとまた会えて嬉しい?」
「何とも言いづらい表現だな・・・。」
俺達はとりあえずそのまま捜索を続ける事にした。
北端まで調べ位置をずらしてとって返すやり方だ。
とはいえこのやり方を引き続き続けるかは戻り次第検討する必要はありそうだ。
と言うのも、セイラ達が俺達を襲うつもりがそれほど無いとすれば、ガチガチに警戒して一塊になって捜索しなくても、早さ優先で多少バラけながら広範囲を一度に進行できる方が効率は良くなる。
それとロザミィの力を借りるならば、空中からの捜索も可能かもしれない。
セイラやロザミィをどれくらい信用できるか、という判断が難しいので意外に簡単に決断できない。
北端まで来たが、予想通りと言うべきか、道中に何も発見はなかった。クリスの目にも何も映らなかったようだ。
今は試しにと言うか、ロザミィに頼んで全長4メートル程のそれほど大きくない巨大鳥の装甲をつけてもらい、クリスが頭の上に乗って空中からの捜索が可能かテストしてもらっている。
普通の人間が空中から振り落とされればほぼ即死だろうが、クリスなら数十メートル、もっと上からでも平気だそうな。
北端の崖を空中から端から端まで見てもらい、崖の捜索を早めに終了したい算段だ。
崖の上からロザミィとクリスを眺めている俺達。今の所上手く飛べているようだ。
再三思うが、敵のアジトを探すのに敵の力を借りるのはどうなのだろう。俺達にはアジトは探せないというセイラの自信の現れのような気がしてならない。
ルーシーが腕を組んで考えているようだ。
「どうしたんだ?」
「勇者様こそ。」
「ははは。ここまでロザミィが力を貸してくれるのに違和感を覚えてしまうと思ってな。」
「それなのよ。違和感。どうしても気になる。」
「何がだ?」
「最初ロザミィがこの島で襲って来た時、私達を全滅させるつもりで襲って来たと思うのよ。勇者様やクリスは別としても、他の私達は殺してしまうつもりだった。ところが逆にロザミィはフラウの作戦で敗れてしまう。そこで奴等は私の弱点を探すついでにセイラの言うゲームを始めた。方向転換の理由はわからないけど転換前は全滅狙いだったのは間違いないと思う。」
「なるほど。」
「だからその時言った言葉に駆け引きやブラフは無いはずなのよ。どうせ殺す相手に使う意味はないから。ロザミィが言ったわね。アジトはこんなところに無い。こんなところ。」
ルーシーは言葉を飲み込むように呟く。
「こんなところってどういう意味?どんなところにならあるの?私にはこんなという意味が卑下た言葉として聞こえた。木と岩しかない場所、雨も風も防げない場所。でもそうなるとそうでない場所にアジトがあるという事になる。この島だけじゃなく、諸島全体が無人島で木と岩しかないし雨風防ぐ場所なんて無いはず。奴等が城や館を作っているのなら一目瞭然で見つかることになる。それくらい堂々としているなら隠す必要なんてない。何かでカモフラージュしていたとしてもクリスの目ならすぐにわかる。クリスの目を忘れている訳じゃなければね。」
「うーん。」
ロザミィ本人に聞いたとき奴は自害しようとした。いや、させられようとした。奴等にとってそこがウィークポイントというわけだ。
「もうひとつはあの木を隠した理由。アジトがこんなところに無いのならあそこを隠した理由が分からない。モンシアが言ったように一度あの場所は捜索した。直後にロザミィが襲って来た。私達が島を離れた隙に場所ごと隠した。その理由が全く分からない。」
ルーシーのロザミィ襲撃には目的があるという予想は当たっていた。
それが分かっても謎が深まっただけだったが。
クリスを乗せたロザミィは遠くの海上を崖に沿って飛んでいる。
「この2つの謎が解けない限り奴等のアジトは見つけられないような気がする。ピースの欠けたパズル。何かを見落としているかのような・・・。」
俺達はセイラの手の上で踊らされているというわけか。
ロザミィが現れた時の状況を正確に思い出してみよう。
木の周辺を捜索し終えた俺が上を見上げると大きな影が突然現れた。
それまで音もなく突然現れたからには気体となって空中にやって来たんだろう。
クリスは捜索で地面を見ていた。もし空を見上げていればあれだけ巨大な物体なので気付いていただろう。
そうなると現れた瞬間が必ずしもロザミィがここに到着した瞬間ではない可能性もある。
やつの現れた瞬間。捜索ではなく見過ごせない何かが起こった瞬間。
俺達は何をやっていた?
ロザミィが戻ってきた。
「どうやら振り落とされずに済んだみたいだな。」
俺がクリスに言った。
「クリスお姉さんを振り落とすわけないでしょー!」
スズメが眉間にシワを寄せて凄い睨んだ。
巨大鳥ほどではないが4メートルはそれでもデカイ。
「何も発見出来なかった。崖には何も無い。」
「そうなの。分かったわ。お疲れ様。」
クリスにルーシーが労う。
「じゃあ戻ろうぜ。ベイト達も首が伸びてるだろうしよ。」
「え?なにそれ怖い。」
「ホントに伸びてるわけじゃねーぞ。」
「わ、わかってるよ。」
モンシアとクリスが冗談を言っている。
「セイラ達はもう襲って来ないかな?それによって危険度が緩和されると思うんだが。」
「そうねー。あいつら気まぐれだから何とも言えないけど。
ロザミィが襲って来たのには明確な理由があった。おそらくその理由である何かはもう処置が済んでる。そうなると襲って来る理由も無くなる。そんなところかしらね。」
「そうか。なら一斉捜索も視野に入れるか。」
「チンタラやってたんじゃ何日かかるか分かったもんじゃねーからな。賛成だぜ。」
「クリスとロザミィは別動隊として空から島全体を見てもらいましょうか。変化した物体を見つける事ができるのはあの子達だけだから。」
俺達は早速帰りの道を50メートル間隔でルーシー、モンシア、俺、アレンの順で捜索することにした。
ロザミィとの戦いで駆け登った斜面辺りだ。ベイトの罠や、アデルが放った矢で燃え上がった布、俺達が居た石畳等がある。
散々な惨状とはいえ木々は大多数残っている。50メートル離れればお互いの姿は見えない。
危険性は低いと言ってもやはり不安は無いわけではない。
何度も言うが、もしもの時に頼りになるのがロザミィとクリスの機動力なのだが、そういった時にロザミィが信用できるかが不安要素だ。
戦いの傷跡は見受けられたものの、南側の岸辺まで到達してもこれと言った発見はなかった。
俺に続いてアレンも南側に到達。旗を立てて捜索完了の範囲を示す。
「首尾はどうだ?」
アレンがそこに集まっていた俺達に尋ねる。
「異常なし、だな。」
「空中からも何も見えなかった。」
「丘の手前は何も無さそうね。拠点に戻りましょうか。」
「発見は何もねーけど、話すことは色々あるなー。」
まだ昼には早いので、ベイト達を引き連れてもう一度捜索に出るつもりだ。
丘の向こうはまだ未見の地だ。多少の期待は有るのだが・・・。
フラウ、ベイト、アデルに出発して起こったこと、今後の捜索方法について話をした。
この3人は行方不明者が吊るされた木を見ていないので事情は掴みにくいだろうが。
そして7時に温泉に招待されたことだ。
「え?行くつもりなんですか?混浴なのに?」
「まあ、水着を着ててもいいんじゃないかな。」
「ルーシーさんはどうするんですか?」
「え?私は・・・。勇者様はどうしてほしい?」
「俺に聞くのか?まあ、水着でもいいんじゃないかな。」
「がっがりしない?」
「そういうつもりで行くわけじゃないだろ・・・?」
俺は目が泳いでしまった。
「駄目だよ。温泉に水着で入っちゃ。」
クリスが止めた。
「効能が地肌に直接届かないよ。」
「効能?あるのかな。」
「知らない。」
いつまでもはしゃいではおれないので出発する。
フラウは体力的に厳しいので一人で留守番だ。
上空を飛行するロザミィとクリスに時折立ち寄ってもらう。
これが終われば昼時なので昼食を用意してくれると言う。
地味な上に淋しい捜索が大々的に始まる。
しかしこれでスピードの方は上がるはずだ。
一人50メートルの範囲を捜索。行きと帰りで100メートルを担当する。
それを6人で同時にやって600メートル分を一気に済ます。
ポイントで言うとL の前半辺りまで終る。
捜索範囲がやっと丘の上を越えた。それでもまだ島の半分まではいかない。
期待とは裏腹に丘の向こうもさほど手前側とそれほど風景に変化はない。当然と言えば当然か。
可能な限り見落としがないよう周囲の異質なものをくまなく探す。
人工物、隠れられるような場所、洞窟等。
ない。ない。何も無い。
木と岩だけだ。
しばらく歩いて探しているとロザミィの影が上空に差し掛かった。
見上げるとクリスがロザミィの首にロープを巻き付けていて、それを地面に垂らしスルスルと降りてきた。
首にロープを巻き付けるのはどうなんだ。と思ったが実際の首ではないので締まる事はないか。
「勇者。順調?」
「何も無い事を除けば順調に進んでいるよ。」
「アハハ。私も何も見つけられない。ちょっと休憩するから一緒に歩いていい?。」
「ああ、いいよ。」
ロザミィは空中を旋回して飛び回っている。
俺は相変わらず周囲の捜索をしながら歩く。
クリスが俺の腕を組んで付いてきている。
「セイラとはどうだった?」
どうと聞かれても何の事だか分からないが、感触を伝えておくか。
「説得には応じてもらえなかった。人間に対してひどく憤っているようだ。」
「そうなんだ。どうしてだろ。」
「そう言えば何か酷く誤解をしているように感じたな。生け贄だとか人間に捨てられただとか、怨念めいた事を言っていた。彼女達を長い間放置して救えなかった事は事実だし、その事を誇張して表現したのかとも思ったが、もしかして思い違いをしているのだろうか?」
「そんなこと言ってたの?」
「城に居た頃にはそんな様子はなかったか?」
「ううん。ぜんぜん。」
ぜんぜん?まさか・・・。
人間に対しての怨念は最近になって生まれた?
だとしたらきっかけは何だ?当然魔王の娘との接触しかありえない。
魔王の娘に何か吹き込まれた可能性もあるのでは?
どんな話を吹き込まれたにしろ、誤解を解けば説得できる可能性はまだあるかもしれない。
「クリス。聞きにくい事ではあるんだが、君が魔王の分身に捕らわれた時の話を聞かせてくれないか?話としては伝え聞くのだが、実際の様子を見たことはない。セイラの言うように人間に捨てられたという事なんて無いはずだよな?」
「いいけど簡単な話だよ?私はモンテレーの町の防壁の外にある廃墟に住んでた。寝ているときに青い肌の小男に捕まって連れていかれた。道中は眠らされて覚えてないけど空を飛んでたのは覚えてる。私が連れて行かれる時に自警団の人がやって来てたけど間に合わなかった。」
いつかシモンや酒場の男から聞いた話と同じだな。
不幸な出来事ではあるが人間がどうこうという話ではないはずだ。
「ありがとう。もう一度セイラを説得してみるよ。」
「うん。温泉楽しみだね。」
正直どういう感情でやればいいのかまだよくわからない。
「それじゃあ一足先に戻ってフラウとお昼の準備始まるね。」
クリスは後ろ髪を引かれるように別れを惜しみながらも、ロザミィの首からぶら下がっているロープに飛び付いてそれをスルスルと昇って行った。
その後あれこれ考えながら、しかし注意は怠らないようにしながら捜索したのだが、これといって思い浮かばず、発見できずに午前中の捜索は終了した。
川辺の拠点まで海岸沿いをブラブラ戻っているとルーシーが待っていてくれた。
一緒に歩いて帰る。
拠点ではフラウとクリスとロザミィがポテトポタージュとレタス、チーズ、ソーセージを挟んだバゲットのサンドイッチを作ってくれていた。
スープには冷凍していたミルクを使用しているらしく、まろやかな味わいがこんな場所でも楽しめた。
食に関しては俺達男連中には思いもよらないような発想というか情熱を感じる。
午後はポイントL後半からポイントO前半までだ。ようやく半分を越える。
成果なし。
午後二回目のポイントO後半からポイントR前半まで。
成果なし。
俺達は精神的に憔悴の色が見え始めていた。
ずっと歩きっぱなしだ。何も発見できず半分が過ぎた。もう何も無いのでは?という思いが頭をよぎる。
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