第30話
船に着いた。
船長さんと船員さんがデッキの床を見てる。まだ穴だらけだ。
勇者が声をかける。
「おはよう。自警団の協議が終わって結果を伝えに来るそうだ。」
「おや、おはよう。そいつは結構だね。内容は知ってるのかい?」
「ああ、聞いたが、すぐ来るだろう。」
「床を張り替えるつもりなの?」
ルーシーが船長さんに聞く。
「そうしたいが時間がかかるだろうしね。上から板を被せて補強するしかないね。」
どのくらいの時間とお金がかかるんだろう。
またこれから戦いに出るんだから、もっと被害は増えるかもしれない。
私達の後ろからお兄さんと二人の男女が一緒にタラップを上がってきた。
30分もかからなかったね。
勇者とルーシーが私を見る。
この二人からは伏せられた数字の鍵は見えない。セイラではない。
私はうなずく。
「どうもはじめまして船長。おそろいですか?」
お兄さんはみんなの顔を見回す。
「ちょっと待ちな。ビルギット、ベイト達も呼んできておくれ。」
「はいよ。」
船員さんが船尾楼に入っていって3人を呼んできた。
「何です?船長。」
「おんや、誰だいこいつらは?」
いい質問。
「はじめまして。わたくしそこの自警団の主任やってますビコックと申します。お見知りおきを。」
そして、お兄さん改めビコックさんは、さっき勇者に話した内容を船長さんに告げていく。
船長さん達は今朝の事件をまだ知らなかったみたいで驚いていた。
「お許し願えるならここの二人を同行させてもらえますかね?」
「そりゃ歓迎するよ。でも危険な旅だってのは承知してるのかい?」
紹介された二人の内の男が口を開いた。
「俺はアレン。今さら自警団で命を惜しむやつはいないぜ。モンスターから船を守り抜いたという自負は持ってる。相手が海賊だろうと化け物だろうと好きにはさせねーよ。」
「私はルセット。やらせてもらうわ。」
「わかった。よろしく頼むよ。」
船長は二人と握手をした。
その後勇者やベイト達とも握手をしあってた。私達はそれに加わらずに後ろで見てたけど。
「まあ、見ての通りまだ修繕が終わってないんで出港はまだだけどね。まあ空いてる部屋でも見ておくんな。」
6つの部屋の両側の真ん中が空いてたっけ。
「じゃあ野郎同士は向かって右へ案内しますか。」
ベイト達はアレンを連れて右の部屋を案内した。
「そうね。じゃルセットさんは左側の部屋に。」
ルーシーとフラウが私達の隣の部屋にルセットを案内した。
勇者、船長、ビコックさんがまだデッキに残っている。
勇者達は床の補修のことで船長さんと話をしているみたい。
私は暇になったので自分が使ってる部屋に行ってみる。
ホテルのベッドよりは劣るけど、それでも大きいしゆったりできる。
私は寝転んだ。
どんな服だったら勇者が喜ぶか考えたり、骨針で破れたりしないかとか考えていた。
そろそろ昼だし、町で勇者達が食事でもしたら買い物に行けるかな。
ボーッとしていると、部屋のドアがガチャリと開いた。
誰かと思って顔を上げると、ルセットという人が入ってきていた。
「こっちの部屋は大きいのね。」
彼女は悪びれもせず私の近くまで歩いてくる。
ちょっとビックリした。
「先に使っててごめんなさい。」
私はベッドから上半身を起こして彼女を見た。
部屋を案内したルーシー達はどうしたんだろう?デッキに戻ったのかな。
ルセットはベッドに腰を掛ける。
「あなたは邪魔だから死んでもらうわ。」
背筋に電撃が走る。
ルセットは私の背後に回り鋭い刃物で背中を突き刺す。
セイラの声だ!そんな訳ない!私が見たとき変身してる様子はなかった!
今もその様子はない!
右腕から伸びた骨針が私の体を貫く。
セイラは左手で私の口をふさぐ。
「声は出さないでね。せっかく暗殺してるんだから。」
何をされているのかわからない。体が痺れて動かない。骨針で反撃できない。
ニナと同じように私の体を封じて意識を断つつもり?
体から力が抜けていく。
「あなたから見られないよう近付く方法を考えるのに苦労したわ。フフフ。」
私の口を押さえている左腕が奇妙な方向で曲がる。
まるで操り人形のように・・・。
操り人形!?
ルセットという人の体にセイラが入って骨針で操っているんだ!
まずい。セイラにこの船がアジトの捜索をすることがバレてしまった。
それに私が死ねば誰にも分からずに変身して近付けてしまう。
死ぬわけにはいかない。けど、反撃できない。
勇者、たすけて・・・。
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