第12話
それから3日は朝にフラウの顔と、調査の進捗を見るのとで特別捜査室に往復するだけの時間が続いた。
4日目の朝。フラウと合流しルーシーと俺の3人でそれまで通り特別捜査室にやって来たが、スコットはそこになく、シモンだけが慌ただしくテーブルで書類を整理していた。
「なにか進展があったのか?」
「はい。見つかりました。クリスティーナという女性はどうやら近くの港町にいたようです。」
「クリスが?」
シモンにルーシーが反応する。
「資料を順に追っていったので遅れましたが、3年ほど前にモンテレーから魔王に拐われた女性にその名前がありました。」
「モンテレーか。陸路ではマドラスの南をぐるりと迂回して北西にある半島の町だが、船が出ている今はサウスダコタから直接向かった方が早そうだな。」
「仰る通りですね。でも待ってください。スコットが関連している情報を調べに行ってますので。」
なるほど。彼が居ないのはそういうことか。
「そう。それで、拐われたときの情報って何か書いてあるの?」
ルーシーがシモンの調べている資料を横から覗き込む。
「あまり詳しくは・・・。実は当時から家族がおらず、近くの住民に魔王の手下に連れ拐われるのを目撃されたようですが、助けは間に合わなかったようで。」
「独りだったんですか?」
これはフラウの質問だ。
「そうみたいですね。モンスターの襲撃によって家族を失った娘とだけ書かれてます。」
家族を失い、自身も拉致され、そして今また何か起ころうとしているというなら、なんと不運な人生なのだろうか。
いたたまれぬ思いで佇んでいると、ドアを開けスコットが入ってきた。
「間に合いましたか。なんとか探せましたよ。」
「ご苦労様。いったい何があったんだ?」
「場所が特定出来たので半月ほど前のモンテレーの情報を調べ直してみました。事件事故の類いではないのでこちらの写しでは無かったんですが、やはり半月ほど前に酒場での与太話として、娘が無人島で一人の生活をおくり始めているという走り書きが、諜報部の近隣の調査報告書にありました。」
「それって、ライラの時と同じじゃない。」
ルーシーが真面目な顔で呟く。
「人目を避け隠れ住んでいるというのか。」
俺も類似点に息を飲む。
「以後情報が更新されていませんので、被害者が出るような事件は起こってないと思います。」
「それは良かった。しかし、そのままというわけには・・・。」
「行ってみるしかないでしょうね。」
被害が無いのは良かったが、それがいつまで続くかわからない。
実際、彼女に会って俺達に何が出来るかは疑問も残るが、ルーシーの言うように行ってみるしかないという感情は確かにある。
こうして俺達は二度目の旅に出ることになった。
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