03、特別捜査室
第7話
03、特別捜査室
俺達は一度そこで別れることになった。
また、明日様子を見に来るが、王と大神官の判断待ちだ。
帰りも凱旋パレードのような大騒ぎになるといけないので、辻馬車を呼んで裏通りを通って帰った。
宿屋キャロットに戻ったのはまだ夕刻前だったので、俺は日課の剣の修行をやることにした。馬屋のそばは人もなく手頃なスペースもあるので、以前から使わせてもらっていた。
それにしても、ルーシーは剣士と言ったが、まだ剣を抜くところすら見たことがない。
しかし、魔王の首を一太刀で切断したとなると、相当な手練れなのだろうか。
暗くなり始めたので、切り上げて酒場に戻ると、今日も繁盛しているらしく、大層な盛り上がりだ。
皆が口々に俺に歓声を上げるのを片手で応え早々に2階へと上がっていった。
ルーシーはベッドに横になっていた。疲れて眠っているのか。
やはり緊張もあったのだろうか?そんな感じには見えなかったが。
そう言えば相部屋のままになっていたな。もう寝ているなら明日部屋を変えてもらおうか。
だが、彼女とこうして過ごすのも悪くない気もしていた。
俺もベッドの反対側に腰を下ろす。前にも言ったが部屋がせまいのでそこ以外居場所が無いからだ。
「私からも勇者様に質問なんだけど。」
「起こしちゃったのか。すまなかった。」
ルーシーは寝たまま声を掛けてきた。
「起きてた。」
「ん?そうなのか。」
「ねえ、どうして国王に私が魔王を倒した証明が何もないって答えなかったの?」
「どうしてって。」
なぜだったかな。
「君の爆弾が強烈過ぎて忘れちゃったな。それに君自身でこれ以上ない切り札を隠し持ってたじゃないか。あれには驚いたよ。」
ガバッと上半身を起き上がらせ俺の肩に抱きつくルーシー。
「私を守ってくれたから?」
そんな感情だったのだろうか?まだ会って数日。
だが、塞ぎ混んでいた俺をソドン村から連れ出してくれた、アルビオンに連れて来てくれた。
褒美にもありつけた。
少なからず感謝の気持ちがあったのは確かだ。
もっとも、彼女の目的はこれからの娘捜しに俺を駆り出すためなのかもしれないが。
「そりゃあ仲間なんだし。守りたくもなるさ。」
俺の肩にかかるルーシーの手の力が抜けていく。
「ありがと。嬉しかったわ。」
力が抜けた手がそのまま腕を添って手の甲に降りていく。
金縛りにあったかのように、そのルーシーの動きから囚われ動けない。
「あとひとつ。」
「な、なんだ?」
「まだアンナのこと好き?」
「な、何をいきなり言い出すんだ。アンナはアーサーと結ばれたんだぞ?」
唐突なアンナの名前に動揺を隠しきれない。
「でもまだ忘れきれない?」
「そんなことはないよ。アーサーとアンナのことは祝福している。俺が嫌気がさすのは二人の事に全く気付けなかった、自分の馬鹿さだよ。」
「ふーん。そうなんだ。」
いつものようにニヤニヤ笑うルーシー。
こいつ。
「というか何でそんなことまで知ってたんだ!」
元の体勢で横になるルーシー。
「そーんなこと。旅してたらそうなるのが当たり前でしょ。」
当てずっぽうだったのか。
「旅してたら。ね。」
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