七、佇む生徒

みなさんは学生時代をどうお過ごしでしたか?楽しかったでしょうか?つまらなかったでしょうか?それは人それぞれ違うでしょうが、私は楽しかったです。

ただ、時々怖かった時もありました。先生や先輩に対してではなく、得体の知れない何かと遭遇したからです。

これはその内の一つのお話です。


あの日、私は徹夜でオブリビオンというゲームをしていた為、疲労感と眠気に襲われていました。疲労感と眠気を抱えたまま電車に乗って学校を目指しました。ボーッとした頭で見る外の景色は写真や絵画のように、どこか現実味が無いように見えました。

電車を降り、学校までの通学路を歩いていくと、ここで私は異変に気付きました。通学中の学生はおろか、通行人も見当たらず、お店もシャッターを閉めたまま。携帯を見ると、時刻は5時。

時間の感覚がおかしくなっていた事に気付くが、何故かその時の私は面白くて仕方がなかった。ステップを踏んでみたり、後ろ向きで歩いてみたりと、今思えば恥ずかしい気持ちになるし、そんな風に登校している学生がいたら恐ろしいものです。

ともかく、無事に学校に着いた私は一直線に入り口に向かうと、入り口前に誰か立っているのを目にしました。

こんな早くに?と不審に思いましたが、それは私も同じ。遠くから見るに、入り口に立っている人物は女生徒だと分かるのですが、見たことも無い生徒だった。後輩か先輩なら知らないのも頷けますが、タイの色が私と同じ学年の物なので見た事はあるはず。


「ん?」


この時、おかしな事に気付きました。あの女生徒は私をずっと見ている。おそらく、正門を抜けた時からずっと。

今までの経験上、あの女生徒は何かがおかしい・・・そう思いつつも、歩く足は止まることなく、前へ前へと進んでいきます。段々と近づいていくたびに、女生徒の生気の無い顔の不気味さが増し、肌に感じる風の生暖かい感じが恐怖心を仰いできました。


「おはよう!」


突拍子もなく放った言葉だが、このまま恐怖に身を縛られてはマズい事になると直感的に感じた。

すると、その女生徒の姿は私の視界から消えていきました。突然です。私はまばたき一つしてはいません。

やはり、と思いつつ、あの女生徒が立っていた場所にまで辿り着き、学校の入り口のドアを開けようとすると、ドアは鍵が掛けられていました。


人は酷く疲弊した時、幻覚を見る事があります。現実と幻の区別がつく脳は麻痺し、幻を現実だと理解してしまい、時には危険な状況に陥る場合があるかもしれません。

もし私と同じように、記憶に無い人物が自分を見つめている時、声を掛けてみてください。

返事が返ってくれば、その人物は現実の存在です。返事が無ければ・・・。

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