六、赤い車
霊感がある人は、見えてはいけないこの世ならざる者が見えてしまう。だが、ほとんどの人は人間の霊だけが見えるだけだろう。この世には、人型の霊ばかりが存在している訳ではない。
あれは友人の家から帰っていた時の事。友人から借りた漫画本の続きが気になり、本を読みながら道を歩いていた。漫画は面白く、一つ一つの展開にツッコミを入れたりしていた。
これを読んでいる人ならば、前を見ずに歩く事の愚かさは知っているでしょう。それも車が通る道路で。田舎といえども、車は通る。
ププー!!!
突然のクラクション音に驚いた私は読んでいた漫画を地面に落としてしまい、視線を前に向けた。前を向くと、眩しいライトをつけた赤い車が、猛スピードで私の方へと突っ込んできていた。
うわぁ!?っと身を守るようにその場に屈むが、そんな事をしてもこちらに突っ込んでくる車から身を守る事にはならない。
私はこの一瞬、死を確信した。道で漫画なんて読むんじゃなかったと後悔をした。車に轢かれる痛みとはどのくらいのものなのか想像した。
そんな事を思いながら、じっとその場に固まっていた。しかし、いくら待っても痛みは来ない。
ゆっくりと目を開けると、そこには車など存在していなかった。どうして?何故?そんな考えが頭をよぎったが、あの時感じた死の感覚に怯えてしまい、私はすがるように地面に落とした漫画を拾って読んだ。内容は、あまり入ってこなかった。
後日、あの時見た赤い車に似た廃車が森の中で捨てられていたのを目にした時、私は車でも幽霊になるんだなと思いました。
みなさんも、道を歩いているときは本を読まないようにしましょう。本物の車に轢かれてしまうのもありますが、すでに廃車となった車があなたに向かって飛びついてくるかもしれません。
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