二、笑う幼子

これは僕がまだ4歳だった頃の話です。この頃の私は動き回る事が大好きでよく走り回っていました。外でも家の中でも。今思えば、かなり騒がしい小僧だった気がします。

そんな騒がしい小僧にはある目標がありました。それは二階に通じる階段を手を使わず、足だけの力で登頂する事。

今でこそ簡単で当たり前な事なのですが、非力でとても小さかった私には、とても厳しく辛い山脈に思えました。

私は毎日のように挑戦していき、徐々に上れる段数を上げていき、それと共に自信も上がっていきました。


ある日、今日は一番上まで上れる!そんな気持ちに燃え上がっていた私は、意を決して階段の一段目を上り始めました。その日はどうしてか軽々と一段一段上れていき、遂に私は階段を上り切る事に成功した。


「上れた!!!」


そう歓喜していたのも束の間、私の体から突如として力が抜け、階段から勢いよく転げ落ちていく。落ちる勢いは凄まじく、僕の体は床を転がっていき、偶然開いていた窓から外へ落ちていった。

全身に電流が流れている感覚が襲い、指先一つも動かせなくなっていた。にも関わらず、この時の私は大口を開けて笑い声を発していた。

階段を上り切った嬉しさからか、はたまた転げ落ちていったあの感覚が楽しかったのか。今はもうあの頃感じた感情は忘れてしまい定かではありませんが、声を枯らすほど笑い声を上げているのを憶えています。


そして笑い疲れたのか、私の視界はゆっくりと閉じていき、次に目を覚ました時には病院のベッドで横になっていました。

私を見つけたおばあちゃんの言葉では、「あんた、笑ってたんだよ。左足が折れ曲がっていたのに、楽しそうに笑ってたよ。」そう、言っていました。


左足は幸運な事に真っ直ぐの状態に戻り、日常生活に支障はありません。ですが、最近はあまりないんですが、たまに左足の感覚が無くなる事があります。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る