第3部 第11話

「逃げろー!大浪だ!大浪が来るぞー!」

市民は逃げ惑う。だが、どんなに高い場所に避難しようとも、何百メートル以上もある波が襲いかかっては意味を成さない。

「そ、そんな、私たちどうすれば、、、」とウサギも呆然とする。

「、、、なあ、マイリン、ジョン。あの大浪について何か他に知ってることはないか?何でもいい、弱点さえあればどうにかなるかも知れない」

「う、うーん。弱点かぁ、、、あたしは教わってないなぁ、、、」

「俺も知らないな。聞いたことはあるが、弱点まではな、、、」

く、打つ手なしか。あの大浪を、俺たちでどうすれば、、、

「諦めるには早いぞ!」

「あ、アンドリュー!?」

そこに音もなく現れたのはアンドリューだった。

「ああ、脱獄してきた。何か嫌な予感がしたのでな。私が道を作る、その隙にお前たちは逃げ、協力者を探せ。知り合いにマスターでもいれば心強いが、、、」

「それなら親父がいる!この一大事だ、あいつも動き始めているだろう」

「では、その人物の元へ行け、ここは任せろ!」

「でも、どうやって、、、」

大浪はすぐそこまで来ていた。だが、アンドリューに焦っている様子はない、むしろ落ち着きはらっていた。

「私がまさか人のために行動するなんてな、全く、人生とは不可思議なものだ」

「アンドリュー!あなた、まさか、、、」

「ああ、ウサギ、これで別れだ。だが、お前たちには未来がある。どうか、達者でな!」

「アンドリュー!!」

俺は抵抗するウサギを担いで大浪とは反対方向に走る。

「ふ、これが、我が最後の奥義、、、地獄天災、何するものぞ、、、受けてみよ、断絶剣!」

その一撃で大浪は真っ二つになった、、、片方の波は何故か徐々に勢いをなくし、消滅していった。だが、もう一つの波は段々と勢いを取り戻していく。アンドリューはその中で波に飲まれてしまった。しかし、彼のお陰で大浪の勢いは確実に落ちた。

「そ、そんな、、、」

「ウサギ!今は落ち込んでる場合じゃないよ!」とマイリン。

「そうだ、アンドリューの犠牲は無駄にはしないぞ!」と俺もウサギを鼓舞する。

「彼がウサギにとって大事な人なら、尚更、彼のためにも生き残るぞ!」とジョン。

「、、、そうですね、とりあえず、ジュンペーさんのお父さんのところへ行きましょう。ジュンペーさん、彼がどこにいるか分かりますか?」

「ああ、国家ギルドに所属しているようだったから役所に行けば、、、」

「でも、大浪はすぐにやってきます!その余裕は、、、」

「おっと、お呼びかな?」

「うわっ、びっくりした!」

親父はいつの間にか俺たちの真ん中にいた。

「あ、あなたはあの時のマスター!って、まさかジュンペーさんのお父さんって、、、」

「ああ、教える必要がないと思っていたから言わなかったっけ。まあ、そんなことより今は非常事態だ。僕の仕入れた情報によるとアレには弱点がある。だがそれ以上は判明していないんだ」

「弱点?でも、あれって自然災害でしょ?」とマイリンは疑問を投げる。その言葉にジョンは推論を唱える。

「、、、本当に弱点が、、、って、まさか、アレは生き物なのか?」

「まあ、詳しいことは任せた。僕は国家ギルドの一員として国民の避難とかを担っているしね」

親父はそう言い残し、その場から消えた。

「、、、よし、俺が行く!サモンを使って弱点をあぶり出してやる!サモン!エンシェント・マスターズ!」

俺は改めて身に付けたサモンで歴代のマスターたちを呼び出す。

「おうおう、まさか再び日の目を浴びる日が来るとはな!」

「我が主人よ、何なりとご命令を」

「みんな、あの大浪の中に生き物がいるはずだ。その居場所を突き止めてくれ!」

「オッケーオッケー!まっかせな!」

「承知しました」

俺は改めてマイリンに向き直る。

「マイリン、トドメは頼めるか?」

「もっちろん!」

俺たちは後退しながらマスターたちに指示を出す。やがて、、、

「ご主人!ここだ!ここに何かいるぞ!」

「よし、でかした!、、、マイリン!!」

「任せて!この一撃、その身に受けよ!デッドリー・シュート!」

その1発は確かにうっすら見える生物のようなものを貫いた。

「ギャ、ギャオオォォ、、、」

断末魔と共に、大浪の勢いは衰えていった。

「や、やったのか、、、?」

「す、凄いです、皆さん!あの地獄天災を倒しちゃいましたよ!」とウサギは興奮気味だった。

「ふう、2人とも、私の大一番、見ててくれた?」

「ああ、カッコ良かったぜ!」と俺はマイリンを称賛する。

「ナイスだ、マイリン!」とジョンも続く。

大浪は確かに打ち倒した。だが、街への被害が大きい。かなりの距離を後退したため、その中で民間人の犠牲もあっただろう。

「とりあえず、これで俺たちの出番も終わりだな。ご主人の魔力も限界に近いみたいだし」

「またご要望があれば何なりと」

「ああ、お前らもお疲れ様。ありがとうな」

召喚したマスターたちも消えていった。

「ジュンペーさん、これからどうしましょう?大浪が来た方角から察するに、きっとGJの小屋も飲み込まれてますよね、、、」とウサギは不安げに言う。

「そうだな。でも俺たちは生きてるんだし、なんとかなるだろ?」と俺は開き直る。

「そーだね、これからのことはこれから考えよー!」とマイリンも続く。

「ふふ、お二人とも気楽そうで羨ましいくらいです」とウサギも笑ってみせる。

「じゃあ、俺、新しくギルドの小屋を作るぞ!任せておけ、きっと前よりいい物を作ってみせるさ!」とジョンも笑ってみせる。

和やかなムードに包まれかけたその時、、、

「グオオオォォォォ!」

突如として鳴り響く巨大すぎる咆哮のようなものに思わず耳を塞いだ。

「つ、次は何だ、、、?」

「見てください!アレは、、、」

遠くの方でも大きいためよく見える。間違いない、、、

「火炎竜、、、レッド・ドラーゲンだ、、、」

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