第3部 第9話
私はマスターとの一騎打ちで苦戦していた。炎で炙ろうが風で切り裂こうが傷一つ付かないのだ。魔法を無効化するような装備品でも身に付けているのか?
「なるほど、確かに強力だ。化身の力に加え、その素早さ、、、うむ、実に面白い」
マスターは詠唱を始める。まずいな、何の魔法だか知らないが止めないと、、、
「くっ、、、」
私は木々を飛び回っていたが、一旦着地し、マスターの懐に忍び込む。
「はっ!」
1発入れた!、、、ところが、、、
「それはおとりだよ!」
私はいつの間にか背後を突かれていたのだ。喉元には杖が突き付けられていた。
「い、今のは、、、?」
「分身魔法だよ。そっちは偽物。んで、こっちが本物。君なら見分けられるかもって思ったんだけどな。まあ、村人との戦いで疲弊していたようだし、あんまりフェアじゃなかったかな。済まないね」
勝負がついた。私の負けのようだ。
「い、いえ、分身だと分からなかった私の負けです。降参ですね」
戦いを見ていた2人から歓声が上がる。
「2人とも、すごーい!速すぎて何が何だか、、、」とマイリン。
「あ、ああ。何が起こっていたのか把握するだけでも一苦労だ」と鬼。
「あ、あの、鬼さん。鬼と呼ぶのは何だかアレなので、名前はないのですか?」と私は鬼に尋ねる。
「人間の頃はジョンって呼ばれてたな」
「じゃあ、ジョン。あなたはこれからどうするのですか?」
私のその質問にジョンは首をひねる。
「俺は人間を食わないと生きていけない。だが、これ以上は食いたくない。俺自身もどうすれば良いか、、、」
困り果てる私たちにマスターは優しく声をかける。
「それなら一旦僕のギルドに来ないか?あそこなら優秀な研究者もいるし、君の食糧事情も解決できるかもしれない」
「ほ、本当か!?ぜ、是非頼む!」
私たちはジョンをマスターに引き渡し、ギルドの小屋に戻ることになった。
「おー!ウサギ、マイリン、待ってたぞ!」
「じゅ、ジュンペーさん!?どうしちゃったんですか?部屋がピカピカじゃないですか」
「お前たちなら無事に帰ってくるって信じてたぞ!手持ち無沙汰だったし小屋全体を掃除してたんだ!」
「って言うかジュンペークンも無事だったんだね!良かった良かった!」
俺たちは互いの無事を喜びながら夕食の準備を進めていた。
「ジュンペークンって意外と家事スキルあるよね?料理とかどこで覚えたの?」とマイリンは尋ねてくる。
「いつの間にか、って感じだな。生活していく上で必要なことは自然と身につくもんだよ」
俺たちはカレーを作って食べ、眠りにつくのだった。
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