第2部 第13話
「ちっ、ジュンペー。お前も来たのか!」
「ミハイル!お前の思い通りにはさせない!」
俺は黄泉からの応援を可能限りたくさん呼んだ。あの時のように勝てる、そう思ったが、、、
「おっと、いいのか?ほら、これ見ろよ?」
ミハイルが指差す方には一軒の家があった。
「お前らが次に攻撃を仕掛けてきたら、この家の人間をすぐに殺してやる。本当にいいのかなぁ?」
「ち、人質か!卑怯な」
「どうとでも言うがいいさ、ガイマル。俺は生き延びられりゃいいんだ。しかも、そこには興味深い力を持った生者が3人もいるじゃないか。強力な剣術を持ったアンドリュー、扱いこなせてないがサモンが使えるジュンペー、化身の力を宿したウサギ。いやぁ、俺って運がいいんだなぁ、流石は運のマスター!」
「おい、若造」
「お?なんだ、アンドリュー?降参して俺に殺される準備が、、、」
「私が人質のことを考慮するほど出来た人間だと勘違いしているな?」
「!待ってください、アンドリュー!その家にはお婆さんが、、、」
「奥義、、、」
「い、いいのか!?本当に殺すぞ!?」
「時空一閃!」
老人が技を繰り出すと同時にミハイルは家に向けて火炎魔法を放つ。
「ガハッ、、、」
ミハイルは老人の一撃をもろに受けた。恐らく治療をしても治らないだろう。一方、家は炎に包まれていた。
「そ、そんな、、、お婆さん、、、」
俺たちは家の住人の生存を諦めていた。ところが、、、
「よっと。いやぁ、久々の運動は体に効くねぇ。そうは思わないかい、我が夫?」
燃え盛る家から老婆が飛び出してきた。
「、、、久しいな、我が妻よ、、、」
「え、まさか、この人、アンドリューの、、、?」
俺たちは状況整理をするために、それぞれ自己紹介をした。
「俺はジュンペー、そこでくたばってる脱獄犯がさっき言ってた通り、死者を黄泉から呼び出せるんだ。だけど、このサモンはまだ使いこなせてなくて、俺はあくまで門の役割を果たしているに過ぎない。あ、あと、GJってギルドのリーダーをしてるんだ」
「私はウサギ、GJの一員で、化身4兄弟の力を授かってます」
「そう言えば、ウサギ。化身の奴らはどこにいるんだ?姿が見えないが、、、」
「私が殺した」
老人が応えた。
「、、、そうか、、、」
正直、気持ちの整理が追いついていないというのが正直な感想だった。4兄弟が突然小屋を飛び出したから、嫌な予感はしていたが、、、
「私はアンドリュー、剣術を極めた、ただの剣士よ」
アンドリューの自己紹介の後、老婆も続く。
「私はルイス、そこのしょうもない剣士もどきの妻よ。昔は城下町で武術を教えていたの。よろしくね、可愛いお二人さん?」
「そ、そうだったんですね。だから、さっきはミハイルの攻撃にも、、、」
「ええ、力を盗むばかりで自分を磨こうともしない下賤な小僧なんかには遅れは取らないわ。でも家を燃やされてしまったから、新しい住処を探さないとね。ところで、彼はどうするの?もう虫の息だけれど」
ルイスは倒れ込むミハイルに顔を向ける。
「、、、最後に話がしたい」
「ええ、ごゆっくり」
俺はミハイルの元へ行く。
「、、、どうした、ジュンペー、、、ほとんど死人のような俺に、、、何か用か、、、?」
「ミハイル、お前とは言葉で分かり合えるって心の中では思ってた。だけどそれは間違いだったようだ」
「は、ははは、、、どうとでも言え、、、言いたいのは、それだけか?」
「、、、ありがとう、あの時、俺を殺してくれて」
「、、、は?」
「お前は確かに俺を殺した。だけど結果として、俺はこの世界に来ることができた。そのお礼だけは言っておきたかったんだ」
「、、、そうか、、、」
そう言ってミハイルは力尽きた。俺たちは燃える家の鎮火作業をしてから、ミハイルの亡き骸を森の地面に埋めた。
「、、、ジュンペーさん、これで良かったんでしょうか?」
「良いも何も、事実は受け止めないとな」
「、、、そうですね、、、」
俺たちは夫妻に別れを告げて、ギルドの小屋に戻るのだった。
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