第2部 第10話
ガキイィン!
「はっ!」
「ふっ、、、!」
ギイィィン!!
幾度となく繰り返される剣戟、それは途方もなく放たれる渾身の一撃。
「ほう、その短い得物でよくやりよる!」
アンドリューの武器は、その着物に似合った1本の刀であった。その刀身は私の短剣よりも長く、私はその攻撃を弾き返すので精一杯であった。
「だが、そちらから攻撃を繰り出すほどの余裕はないと見た。ならば、ここで決着をつけようぞ!」
アンドリューは改めて刀を構える。何か技を繰り出す気か!?
「奥義、、、時空一閃(じくういっせん)!」
「!!」
彼の奥義は至極単純、目では追えないほどの素早い刀の一振り。私はその一撃をいなす、、、のではなく、避けた。これ以上の消耗戦は避けたかったのだ。
「ほう、今の一閃を避けるとは、、、なかなかの素早さを持っているようだな」
「そちらこそ、見事な技でした。でも私の素早さには及びませんでしたね」
「ならば、私も本気を出そうかね、、、」
すると、アンドリューの手元の空間が歪み、そこからもう1本の刀が現れた。
「これはサブスペースポケット。私が技を磨くための修行の途中で身につけた術よ。刀を収納しておくのに便利でな」
「まさか、、、二刀流!?」
「察しが良くて助かる。では、、、いざ!!」
キイィィン!
ガ、、、ギィィン!!
先ほどよりも多くの剣戟が飛び交う。ただでさえ、いなすだけでも一苦労だったのに、よりにもよって二刀流か。それに加えて、一撃一撃の重さは先ほどとは大差ない。まずい、これでは体力の限界がすぐに、、、なら、、、!
「む?」
私は余力が尽きる前にアンドリューから距離を取り、隙を見て樹木に登って木々の間を飛び回った。
「ふむ、持ち前の素早さを活かし、私を翻弄して見せるか。面白い、、、!」
木と木の間から見えるアンドリューは、新たな構えを見せる。
「奥義、、、双竜双閃(そうりゅうそうせん)!」
2本の刀から衝撃波が飛ぶ。だがそれは私に向けられたものではない。明らかに足元を狙ってきている。まさか、これは、、、
「くっ、、、」
木々は横に真っ二つにされた。足場が無くなった私は仕方なく地上に降りる。もう先ほどの手は通用しないだろう。
「さあ、どうする、娘?私には敵わないと悟ったか?」
「、、、いえ」
だけど、、、それでも、、、
「私は、、、」
最期まで、、、
「戦います!」
「よく言った、ウサギ!」
突如としてウィリアムの声がした。それと同時にアンドリューに向かって炎が放たれる。
「親父、ようやく会えたな」
化身4兄弟は姿を現した。
「ウィリアム、ピーター、カルヴァン、エピット。まさか自らやって来るとはな、愚かな、、、」
「親父、、、って、まさか、アンドリューは、、、」
「ええ、ウサギ様、彼は我らの実の父親でございます、、、父上、今すぐこのような無用な争いはやめていただきたい、、、!」とピーター。
「そうです、父さん!どうしてこんなことをするのですか!?」とカルヴァン。
「お父さん、俺っちたちを見捨てたと思ったら、今度は人斬りかよ!?あんまりだぜ、、、」とエピット。
「私はただ、半端に力を持った者を片付けているに過ぎない。それはお前たちも同様、切り捨てる理由には十分よ」
「親父!もうやめてくれ!俺たちは言葉で分かり合えるはずだ!だって、俺たちがまだガキの頃、あんなに優しかったじゃないか!?」
「ウィリアム兄貴の言う通りだ!俺っちたちは戦わなくていいんだよ!」
「、、、戯言は終いか?ならば、斬るまで、、、!」
アンドリューは化身の説得に応じず、実の息子たちに剣を向ける。
「く、、、やるしか、、、ないのですね、、、なら、、、大地よ!隆起し対象を包み込め!」
地面が盛り上がり、アンドリューを包んだ。だが、、、
「甘いわ!奥義、双竜双閃!」
アンドリューが放った衝撃波は、彼を覆った地面もろともカルヴァンを切り裂いた。
「ぐはっ、、、」
「カルヴァン!く、、、水よ、凍てついた刃と化し、敵を貫け!」
今度はピーターが攻撃をする。しかし、、、
「私に剣で攻撃を試みるとは何たる愚策!返り討ちよ!」
アンドリューはいとも容易く、放たれる何十本もの氷の剣にたった2本の刀で対応して見せる。避けずに、あえて刀を使って全てをいなすその姿は、自分の刀の腕を誇示しているようにも見えた。そして、アンドリューはピーターの懐に入り、、、
「がっ、、、」
彼を斬りつけた。
「風よ、、、」
「炎よ、、、」
「合体魔法、ウィンドフレア!」
ウィリアムとエピットも渾身の魔法を繰り出す。だが、、、
「ふん!」
アンドリューが見せたのは何気ない刀の一振り、一振り。だが、それは常人では切れないものまでも切り裂いてみせた。それは術者もろとも斬り伏せる。
「がはっ、、、」
「く、、、」
化身4兄弟も地に伏せた。
「み、皆さん、、、!」
彼の剣術は正に極地、放たれる剣戟の1本1本が重く、並の人間ではまともに受け流せない。
「やぁっ!」
私は最後の力を振り絞ってアンドリューに斬りかかるも、、、
「ふん!」
あっさりいなされた。同時に短剣も遠くへ弾き飛ばされてしまう。
「彼らはもう立てまい。ならば奴らの前でお前を斬る。まあ、見せしめのようなものだな」
化身たちも出血が酷い。早く治療しないと間に合わない、、、!
「娘よ、我が息子たちと出会ってしまったのが運の尽きよな。では、、、さらば!」
アンドリューの刀が振り下ろされる。ああ、これが私の最期か、、、またあの時のように、大切な人を守れないまま、、、
ズバッ、、、
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