第2部 第8話

ある日の昼過ぎ、俺はウィリアム、カルヴァン、エピットと共に、武具の買い出しに街を訪れていた。

「なあ、魔法が得意なお前らに聞きたいんだが、初心者向けの杖って何かあるか?」

俺のその言葉にカルヴァンが応える。

「それなら、、、あそこに置いてある、モノステッキがシンプルでオススメですよ」

「、、、カルヴァンは目が良いんだな。あんなに遠くの物を、、、」

「そうなんだよ、カルヴァン兄貴は俺っちたち4兄弟の中でもダントツで目が良いから、戦いの中でも大活躍するんだ!」とエピット。

「がはは!流石は俺の弟だな!」とウィリアム。

俺はカルヴァンのオススメに乗っかり、モノステッキを1本購入した。


「夕食の食材も買わないとな。今日は何がいい?希望とかあるか?」

「それなら豚の丸焼きだな!」とウィリアム。

「私はカルボナーラを推しますね」とカルヴァン。

「俺っちはオムライスがいいな!」とエピット。

「お前ら、兄弟なのに味の好みがバラバラなんだな、、、」

結局、比較的作りやすそうなカルボナーラを採用した。


その日の夜、俺はカルヴァンと共にキッチンに立っていた。

「サササッ」

「おお、カルヴァン、お前手際がいいな!」

「いえいえ、それほどでも。カルボナーラを提案したのも私ですしね。これくらいは朝飯前です」

すると匂いに釣られてか、エピットが顔を出した。

「カルヴァン兄貴は4人で暮らしてた時も厨房担当だったんだぜ!凄いよな、魔法だけじゃなくて料理も上手いんだからな!」

「やめてくださいよ、エピット、、、あんまり褒められるとなんだか恥ずかしいですね、、、」

俺たちは予定通りにカルボナーラを作り、夕食としていただくのだった。


その日の夜中、なんだか部屋の外から怒声が聞こえたので、気になって声がする方へ向かった。

「ピーター兄貴!いや、ピーター!お前は化身なんかじゃないだろ!?俺っちはずっと気付いていたけどな!」

「おい、エピット!言っていいことと悪いことがあるぞ!流石にそこまでは、、、」

「でもウィリアム兄貴も気付いてるだろ?ピーターが俺っちたちの本当の兄弟じゃないってことくらい!」

「、、、ピーター、話してくれませんか?私は別にあなたを責めるつもりはありません。エピットは違うかもしれませんが」

「、、、そうだな。流石に隠しきれないか、、、」

俺は化身の部屋のドアを開けた。

「お前ら、どうした?もう夜だぞ」

「ジュンペー、、、お前にも聞いて欲しいことがある」

それからピーターは語り出した。

「実は我はここの世界の生まれではないのだ。我はアメリカという国で生まれ、9歳ほどで大規模な山火事に巻き込まれて死んだ。その後、まだ幼かった4兄弟の次男の身体に憑依したのだ」

なるほど、俺が学校というワードを使っても会話がスムーズに進んだのはこのせいか、、、

「今まで黙っていて済まなかった。私がお前たちの次男坊を殺したようなものだ。本当に申し訳ない、、、」

「話してくれて感謝します、ピーター。でもあなたが悪いわけじゃありません。これも何かのサダメだったのでしょう」

「そうだな、カルヴァンの言う通りだ。実際、俺たちは長い間一緒に苦楽を共にしてきた仲間、兄弟じゃねえか」

「み、みんな、、、」

だが、まだエピットは不満そうな表情を浮かべていた。

「俺っちは納得いかないな!」

そう言ってエピットは部屋を出ていってしまった。

「エピット!」

俺は後を追った。


「、、、なんだよ、俺っちの後をついてきたのか」

「ああ、心配でな、、、ここ、いい眺めだろう?」

この湖は、この前ピーターを連れて訪れた場所だった。

「、、、まあ、そうだな、確かに綺麗だ、、、」

「、、、なあ、エピット。お前、本当はもっと早くピーターから真実を聞きたかったんじゃないのか?」

「!」

「俺にも分かるんだ、その気持ち。最初から本心を聞いていれば、あんなことにならずに済んだんじゃないか、とか考えちまうんだよな」

俺はミハイルのことを思い出していた。確かにミハイルの犯してきた罪は許されない。俺も許してない。しかし、あいつと過ごした何気ない日常は、会話は、決して無駄ではなく、むしろ楽しかったのだ。

「、、、ああ、その通りだ、ジュンペー、、、俺、ピーター兄貴に謝ってくる!」

その翌日からの4兄弟は、より結束が強くなったように感じられた。

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