第2部 第2話

俺とウサギはレベリングからギルドの小屋に帰り、どの依頼を受けるか相談していた。

「ジュンペーさん、この、オーク退治なんてどうですか?比較的弱そうなので今のジュンペーさんでも戦えるかと」

「いや、この地域はダメだ。強力な機械族も出るスポットなんだ。今の俺ならワンパンでやられるだろうな」

「へえ、そうなんですね。ジュンペーさん、物知りですね」

「まあ、伊達に3度も死んでないからな、、、」

結局、報酬の割には難易度が低そうな荷物運びの依頼を受けることにした。


翌日、、、

「この荷馬車で運ぶんだな。依頼者は中身を見るなと言っていたが」

「確かに少し気になりますね。まあでも、私たちは気にせずに目的地まで行きましょう」

俺たちは馬を使い、交代で、ガタゴトガタゴト、と不安定な道を行く。今はウサギの番、荷物は厳重に梱包され、ついうっかり中身が見える、ということはなさそうだ。やがて、木々が生い茂る森に入っていった。

「、、、ウサギ」

「はい、ジュンペーさん、敵ですね」

ザザッ。

「お前たち、その荷馬車をいただく。死にたくなければ指示に従え」

突如現れたフードを被った男たちは俺たちに武器を向ける。

「ははははは」

「、、、?何がおかしい?ピンチになって気でも触れたか」

男たちはざわめく。

「いやいや、襲う相手は選んだほうがいいぞ。命がいくつあっても足りないからな!ガイマル、ウサギの兄貴!頼んだぞ!」

「はっはー!久々の出番だな!」

「任せてくれ、ジュンペー!」

俺は黄泉から自身を門とし、ガイマルとウサギの兄を呼び出す。未だに力を使いこなせないので、友好的な人間しか対応してくれないのが欠点か。だが、奴らにはこの2人で十分だろう。

「俺の一撃を喰らえ!ウィンドスラスト!」

「なるべく傷が残らないように努力するよ!エンドレスペイン!」

「ぐああぁぁ!」

「ぎゃああぁぁ!」

呼び出した2人とウサギの活躍によって襲撃者は倒された。

「い、一体なんなんだよ、お前。そんな高度な召喚式、、、」

「お前たちこそ誰なんだ?いきなり襲ってきやがって」

「、、、」

男たちは一様に口を閉ざす。

「喋ってくれないなら拷問が得意な奴でも呼び出そうかなー?」

そんな奴はいないが、口を割ってもらうにはちょうどいいだろう。

「わ、分かった、話す!話すからやめてくれぇ!」

男たちは事情を語り出した。

「俺たちの村には重い病にかかった女の子がいるんだ。彼女を治すには高度な技術を持った医者が必要でな。だが俺たちにはそんな医者を雇える金がない。それで、事前に情報を得たんだが、実はお前たちが運んでるその荷物、純金なんだ。護衛に付いている奴も強いだろうから、村でも戦うための選りすぐりの人材を選んだんだが、まさかこんなに強いとはな、、、」

「、、、ジュンペーさん」

「ああ、俺たちも協力したいな。ああ、でも、お前たちには罰としてしっかりと働いてもらうぞ?」

「!?俺たちを警察組織には引き渡さないのか!?」

「まあ、俺たちも鬼じゃない。今回の件は水に流してやる。ただ、しばらくは俺のギルドに貢献してもらうぞ。まずはこの荷物運びを手伝ってもらおうかな」

「!あ、ありがとうございます〜!恩に切ります!」

俺たちは9人の男たちを従えながら、無事に仕事を終えた。


その日の昼、ギルドの小屋にて、、、

「さあさあ、お前ら。部屋の隅々まで掃除してもらうぞ!ホコリの一つも許さないからな!」

「イェッサー!」

「了解です、ジュンペーさん!」

男たちに小屋の掃除をしてもらいながら、俺も彼らに頼めないような本棚の整理などに尽力していた。ウサギの部屋に男を入れるわけにもいかないので、彼女の部屋は自分で片付けてもらっている。

「ジュンペーさん!この植物の鉢はどこに置きますか?」

「それは最後に部屋の隅に置いてもらって構わないぞ」

「ジュンペーさん!ネズミを捕まえました!どう処理しますか?」

「それなら外に逃してやれ。無駄な殺生は控えたいんでな」

俺は男たちに指示を出し、その日の掃除を終えた。男たちは無駄に広い小屋の空いていた部屋に寝泊まりさせ、翌日からもギルドのために働かせた。彼らは実に働き者だった。指示を飛ばせば基本的になんでもやってくれた。よっぽど俺たちへの恩義を感じていたのだろう。それから2週間ほど経ち、、、

「お前ら、ありがとうな。今日で懲役は終わりだ。これは感謝の印だ、もらってくれ」

「!?こんな、大金!?本当にいいんですか、ジュンペーさん、ウサギさん?」

「ああ、お前たちにはしっかりと働いてもらったからな、そのお礼だ」

「私も同じ気持ちです。女の子のために使ってくださいね」

「!!ありがとうございます!このご恩は一生忘れません!」

男たちは見えなくなるまで感謝の言葉を叫びながら、その場を去っていった。

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