第11話
宴の翌日、俺はミハイルと共に荷物運びの依頼を受け、荷馬車に乗っていた。序盤はスムーズに進んでいた。ところが徐々に鬱蒼(うっそう)とした森の中に入っていく。
「ミハイル?どうした?予定の道とは違うみたいだが、、、」
俺は手綱を握るミハイルに問いかける。すると、、、
「この時を、、、待っていた、、、!」
ミハイルが突然、俺を目掛けて剣を振りかぶってきた!
「うわっ、、、!」
運に全振りしているためか、俺はそれを間一髪で避けることに成功する。それと同時に俺たちは荷馬車から降りた。
「ちっ、仕留め損なったか。なら、今度はこれだ!」
ミハイルは更に杖を取り出し呪文を唱え、大きな岩をいくつも降らせる。
「な、なんでだ、ミハイル!どうして俺を殺そうとするんだ!?なんでこんな事を、、、」
岩の間を掻い潜っていたが、ついに攻撃が左腕を捉える。
「答えは簡単だ。お前の力が欲しいんだよ!」
「ちっくしょ、、、!」
俺にはミハイルが何を言っているか分からない。だから彼の本心を知りたい、、、!
「死んで俺の供物となれ、ジュンペー!」
もうダメかと思ったその時、そこには剣での攻撃を防ぐ大きな影があった。
「ジュンペー、無事か!?」
「ガイマル、、、!どうして、、、」
「えへへ、それはこのお陰ですね、、、」
ウサギは俺が買って持っていた物と同じオールインワンを持っていた。
「このオールインワンはペアになっているんです。実はこっそりジュンペーさんとお揃いのを買ってたんですよ。この宝石の力で持ち主の居場所が分かるんです」
「へえ、なるほど、厄介な事をしてくれたもんだなぁウサギぃ!?」
「なあ、ミハイル、事情を話してくれ。きっとまだ分かり合えるはずだ」
「は、はは、優勢になったつもりか?まあ、いい。どちらにせよお前たちはすぐに殺してやる。だからこれは話してもいい。俺はな、ジュンペー。日本で一度、この異世界では更にもう一度、お前を殺しているんだ」
「は、、、?何を言って、、、」
俺は記憶を強引に引っ張り出そうとする。確かに俺を殺したのは小柄な人物だった。だけど、、、
「日本にいた頃の俺は就職難で人生に詰まっていた。だから適当に何人か殺して自分から命を断った。その結果、俺はお前と同じく、この世界に転生した。とある力と共にな。なあ、その左腕は一生治らないぜ。『エンドレスペイン』の力のせいでな。俺の能力は殺した相手のステータスを奪う『ステータス・スティーラー』、そして同じく殺した相手の能力を奪う『スキル・スティーラー』の2種だ。最初はなかなか他人を殺せる力すらなかったから苦戦したさ。だが、とある貴族の一家に雇われて彼らの信用を得て、一家全員の能力とステータスを丸ごと奪ってやったのさ。それからは、破竹の勢いで、、、」
「あ、ああ、あなたが、、、!あなたが父様、母様、兄様をぉ、、、!」
ウサギは我を忘れたようにミハイルに突っ込む。
「おっとぅ?まさかお前、あの時の生き残りのガキか?」
「その『エンドレスペイン』は兄様が誰にも使わないようにって気をつけて、誰も傷つけないようにって、、、!その力は所有者の意思に関係なく働くから、、、あなたはそんな心優しい兄様を、、、よくも!!」
「はは、恨むなら俺を信用しちまった兄貴を恨むんだな!」
素早さでは勝っているはずのウサギの攻撃を、ミハイルは容易く避け続ける。
「おう、どうした、ウサギ?お前の力はこんなものか?」
「どうして、、、攻撃が、当たらない、、、!?」
「俺にはマスターの頃のジュンペーを殺して得た物理攻撃力と、このバランサーっていう宝石がある。この石は所有者の全てのステータスを均等にならす効果があるんだ。よって、生半可な素早さじゃ俺を捉えきれないぜ!さあ、今度はこっちの番だ!」
ミハイルは肉眼では捉えられない速度でウサギの喉元まで迫っていく。
「さあ、ウサギ!家族の元まで送ってやる、、、!」
「きゃ、、、!」
もうダメかと思ったその時、彼らの頭上から降ってくる大きな影があった。
「ははは!ミハイル、頭の上がガラ空きなんだよなぁ!仲間は殺させないぜ!」
「ガイマルさん、、、!」
どうやらガイマルは気付かれないように近くの木に登っていたらしい。
「ウサギ、お前が感情的になるのも理解できる。だが、ここは協力して乗り切ろう。力を合わせるんだ!」
「、、、!はい!」
「おいおい、GJの創設者でもある俺を忘れたのか?」
「ジュンペー、もちろんお前もだ。一緒にこいつを懲らしめてやろう!」
俺の長年の仇でもあるミハイルとの戦いが始まった!
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