第10話

GJへのミハイル加入後初のダンジョン攻略から数日後、俺はミハイルと一緒に食料品の買い出しのため街に出かけていた。

「うひょー!こんだけ金があれば買い放題だな!」

「ミハイル、あんまり調子に乗って買いすぎるなよ。いくらたくさん資金があっても使いすぎるとあっという間だからな」

俺は異世界に来る前のことを思い出していた。確かあれは15の時、両親が交通事故で死んで、多額の保険金が入ってきたっけ。でも、俺は両親が突然死んだショックから散財してしまい、生活保護で暮らしていくことになった。俺はそんな中で立ち直れず、ゲームに身を投じていった。

「ジュンペー?どした?ぼっとして」

「ああ、いや、なんでもない。とりあえず買いすぎには気をつけろよ」

「了解了解、、、お、この肉どうだ?焼いたら美味そうだぞ?」

「おいおい、言ったそばから、、、」

「お、兄ちゃん、お目が高いね!これは新鮮で貴重な牛肉だよ!」

この異世界では牛は貴重な家畜である。見た感じも確かに上質そうだった。

「うむ、たまにはいいんじゃないか?この肉を使って少し遅れたが宴でも開くか!?」

「いいな、それ!よし、この肉、買うぞ!」

「毎度ありぃ!」


正午過ぎ、、、

「なあ、ミハイル。何か昼飯でも食おうか?」

「そうだな。ジュンペー、お前は何が食べたい?」

「、、、魚はどうだ?肉は宴で食べるしな」

「お、あそこにちょうど釣り堀があるぞ?寄っていこうぜ!」

持ち前の運の良さが影響してか、欲しい店がすぐ近くにあるのはよくあることだった。

俺たちは2人、釣った魚を食べることにした。

「おいおい、ジュンペー、大量じゃないか?ここは基本的に釣れさえすれば食べ放題だからお得だな!」

「いや、半分以上は返すよ。流石に食い切れないからな」

「お前、妙なところで真面目だよぁ、、、」

焼き魚はシンプルに塩のみの味付けに限る。俺たちは食事を済ませると、食料品を買い、余ったお金で装備品を見繕うことになった。

「そう言えば、ミハイルはステータスがどれもハイスペックだよな」

「まあな、魔法も物理もお手のものさ。そう言うジュンペーはあれから運に全振りしてるんだったよな」

「ああ。でもたまにしか役に立たないんだよなぁ、、、お、ゴールドみっけ」

「おいおい、早速役立ってるじゃないか、、、」

「いや、このお金は警察組織に届けるつもりだ。拾ったのは辛うじて街中だしな」

「真面目だな、お前、、、あ、聞いておきたかったんだが、やっぱり運以外のステータスは装備品で賄ってるのか?」

「そうだな、このマルクストーンが重宝してるんだ」

俺は懐からマルクストーンを取り出す。

「げ、マジか、、、」

「ん?どうした?」

「い、いやぁ、なんでもないぞ!ただ、いいものを持ってるなぁって思ってな、、、お、この杖いいな、、、!」

なんだかこの時のミハイルはソワソワしていた。少し不審に思ったが、この時はまだなんとも思わなかった。


装備の買い出しも終わり、俺たちはギルド小屋へと戻っていた。

「なあ、少し時間は経ったけど、この牛肉で祝賀会でも開かないか?」と俺はガイマルとウサギに提案する。

「おお、ジュンペーが自分からそんな事を言い出すなんて珍しいな」とガイマル。

「いいですね、祝賀会!私は大賛成ですよ!牛肉なんて食べるの久々ですし!」とウサギは乗り気だった。


俺たちは小屋の庭で火を起こし、牛肉に舌鼓を打っていた。

「いいですね、こういう雰囲気。昔、兄様たちとキャンプファイヤーをしたことがありましたね」とウサギは過去を懐かしむ。

「火は小さめだけどな。でも、俺もこの感じは好きだな」とガイマルも満足そうに肉を食べている。

「ああ、でかい炎もいいが、こういうミニマムなのも新感覚だよな」とミハイル。

「、、、ありがとう、みんな。お前たちのお陰で俺も毎日充実してるよ」と俺は改めて感謝の意を伝える。その言葉に皆が顔を赤らめる。

「な、なんですか改まって顔が赤いのはきっと火のせいですよきっと、、、」

「そ、そうだウサギの言う通りだ火のせいだ!」とガイマル。

「、、、」

俺は無言で満足し、肉を食べていった。


その夜、マイルームのベッドにて、俺は自分の過去を思い出していた。死ななければこの世界に転生することもなかっただろう。正直、自分を殺した人物にお礼を言いたいくらいだった。この異世界は住み心地が良く、かつて日本で暮らしていた時と比べて大幅に快適で、さらに運にステータスを全振りしてからは毎日が楽しい。こんな生活がずっと続けばいいのに、そう思える。だが、人間万事塞翁が馬、人生はそんなに楽なものではない。俺はそれを翌日思い知ることになる。

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