第2話 神VS人類
怒号に近い指示と、手が振り落とされる合図で大砲は一斉に発射された。
「
その黒い塊は、一ヶ所に放たれ、その平原に砂煙を巻く。
「やったか!?」と城壁の上、一人の兵士が言葉を発する。
その言葉につられるように、若い兵士達は続々とその砂煙の方に顔を出す。
「伏せろー!」と俺は叫ぶが、遅かったようだ。
低い壁から顔を出していた全ての兵士が、白く輝く光線によって、皆等しく頭を撃ち抜かれた。
命を亡くした亡骸はバタバタと鉄の音を立て倒れて行く。
顔を出した者は、恐らく誰一人生きちゃいない。
「くそ!」と
城壁の低い壁にもたれながら、右と左を交互に見て、生きている者を数えた。
7人......嫌、8人か
30人も居た兵士が、一撃で22もの数を減らした。
「化け物が......」
死んだ者は若者がほとんど。未来の要なんてこの化け物の前には関係のないお話なのだろう。
「くそ.....騎士隊はまだか」
這うようにして大手門を上から見下ろした。
そこには、白銀の鎧を輝かせた女性達の姿があった。
「来たか」
「門を開けよ!」
それを合図に、門が徐々に開いていく。
門が開ききる前に、彼女らは外へと飛び出して行き、瞬く間にその砂煙に潜んだなにかを取り囲む。
彼女らは神に対抗するために結成された女性部隊……通称、
神に対抗する武器、神から作られた武器を持ち、神を殺すために彼女らはここに居る。
「俺たちの役目はもう終わりだ」
これからは彼女らの出番。俺らはそれを見届けるだけだ。
「全体!構え!」
隊長の女がそう言うと、各々が剣を突きだし構えを揃えた。
「突撃!」
途端、囲われた円形は縮み、砂煙の中へと身を投じた。
「彼女らが動けばもう安全か......」
彼女ら騎士隊は、神を殺す為に訓練し、国を守るためにここへと駆り出されている訳だ。
彼女ら以外に騎士隊は山ほどあるが、そのほとんどが国の外へ遠征に出向いている。
人手不足を否めない現状、神を前にして手も足もでないような兵士が時間稼ぎをする羽目になっている。
だが、ここ最近神の襲撃は少ない。
政府は遠征に出せる余裕があるとみているらしいが、現場でこの惨状を見てほしいものだ。
未来ある若者のが死ぬ様を。
「神殺しがでればもう安心か......」
砂煙の中は、容易に想像できる。その神の素材から作り出された剣で肉体を切断し、白い光線......神線を反射する鎧が輝く姿。
城壁の兵士もどこか、安心したような悲しいような顔をする。
皆一時の安心を感じ、死んだ者を悲しむ余裕が出てきた証拠か。
嫌、これからいつ来るかも分からない襲撃に怯えているのか。
その真意はそれぞれ違うだろうが、俺たちただの兵士が引くに引けない恐怖に苛まれているのは事実。
怖かったらやめればいい。そうやって皆辞めてしまえば、国を守る兵士はいなくなってしまう。
大事な者が住むこの国が、破滅を迎える時を訪れさせないために。俺たちはここにいる。
仲間が何人死んでも、俺たち兵士は決してその誇りを忘れることはないだろう。
「はあ......」
とりあえず......今は安心しよう
そうして俺たちは見えないものを見ようとした。
勝てる。皆そう思い疑わなかっただろう。
俺もそうだ。
砂煙から騎士一人が吹き飛ばされるまでは。
「へ?」
兵士たちはざわつき始めた。
そして一人、また一人と、煙の外へと飛ばされて行く
複数人飛ばされた時、砂煙は周囲にはねのけられ、その神の御姿があらわとなる。
美しい白い翼は天使のよう、太陽の陽に輝くローブはその神が高尚な者だった名残が残っているようだった。
神々しい様に相応しくない顔は、品などなく、敵意むき出しのしわを示している。
神の周りには、黒い塊が浮いており、それが弾だと理解するのに時間がかかった。
かろうじて飛ばされなかった騎士が二人、風にうろたえている。
もし、大砲の弾が放たれたのだとしたら、その騎士たちはもれなくミンチになっていることだろう。
神の鎧は完璧だ。完璧故に、衝撃は全て肉体に至るため、強力な攻撃はよけなければ死ぬ。
その知識が頭に浮かんだ時、彼女らの敗北が脳によぎる。
危機的状況、どこからわいたのだろうか、天から神々しい光が放たれ、一人の男が降ってきた。
地面に着地した男は砂塵を巻き上げ、こう言った。
「神はお前か?」
人類最強だった俺が勝手に異世界へ飛ばされたので、腹いせに神をしばきます。 ヒノタケル @karasukun
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