人類最強だった俺が勝手に異世界へ飛ばされたので、腹いせに神をしばきます。
ヒノタケル
第1話 神とやらは
たった今、俺は死んだ。
もっと壮絶な死を迎えたかったが、人類最強に相応しくない、普通の死だった。
けれど不服だった訳ではない。
俺が愛し、俺を愛してくれた者たちに囲まれながら死ねたんだ。
幸せだった。
そして今、目の前に広がる世界があの世と言うやつなのだろうか。
一面真っ白な世界に、より白い球体のようなものがプカプカと浮かんでいる。
「球体……」
これが神様なのだろうか?人間っぽいものをイメージしていたのだが……
「ほう……お前、人類最強だったのか」
と、その球体からどうゆう原理か、声を発しているようだ。
「あんたが神様ってやつか?」
「口を
「あ?」
なんだこの球体?神様と言うかただの自意識高い野郎じゃねーか。
「断る」
「人類最強と呼ばれていたようだが、我はお前たち人類の上に立つ者、すなわち神であるぞ」
「だからどうしたってんだ」
「おもしろい。実は、お前に良い提案があるのだが……」
「無理だね」
「何故だ?」
「は?何故?は!やっと神とやらに出会えたんだ。いい機会だ。教えてやるよ」
そう言って手を動かそうとしたが、どうやら体自体、亡くなっているようだった。
「俺はな、とてつもなくお前が嫌いだったんだよ。出会う前から。俺は必死に祈ったよ。お願いもした。大切な村の作物が育つように。村の平和が続くように。俺だけじゃない。皆お前に祈りを捧げた。でもどうだ!?俺たちの村は戦争に巻き込まれ、全部焼け落ちちまった!」
既に亡くなった心臓が熱くなるのを感じる。
「だけどな、俺は神なんて居ないと思っていたよ。けど、今この瞬間、お前は俺の目の前に居る」
今の俺に顔があるのかは分からなかったが、もしあるのであれば、その顔は心底憎らしい表情をしていたことだろう。
「ふん。戦争なぞ、お前ら人間が勝手に始めたこと。それをお前は我ら神のせいだとでも言うのか?」
「我ら?神はお前一人じゃないのか」
「その通りだ。我ら神がお前たちを創造し、命を与えた。愛情は神それぞれだが、我はお前たちを愛している。」
「ふ!見放して置いて愛してるなんてよく言えたものだな!」
「なんとでも言えばいいさ、人間。問題は私の提案を聞き入れるかどうかだ」
「お前の提案なんて何一つ聞き入れてやるもんか。さっさと天国にでも送ってくれ」
「そう言う訳にもいくまい」
「はぁ?」
「お前は人類最強だった。その価値は今や我らの手中にある」
「何が言いたい?」
「お前には別の世界を救ってもらう」
本当に何を言っているんだコイツは。世界を救う?
「嫌だね。その世界の問題は俺に関係はない。お前と言う神も同じ考えだろ?」
「確かに、人間の問題は人間のもので、世界でも言えることだ」
「なら、答えはわかるだろ?」
「だが、もしお前の居た世界にも影響があるとしたら?」
「な!?」
「その世界の神たち……と言っても人間と扱いは変わらんが、神たちが原因不明の病気に犯され、荒ぶっている。原因を突き止め、元凶を叩いて欲しい」
「それがどう俺の世界と結び付く!?」
「まずは……お前がはいと頷くことだな」
「ち……!」
くそ。コイツ……誘ってやがる。どうすりゃいいんだ。俺の居た世界にも影響があるだと?くそ!何がどうなったら世界がそうなるんだ!
嫌、落ち着け俺……血が昇りすぎだ。考えろ、今までと同じように、役割を考えろ。
そうだ。俺がやるべきことは死ぬ前から決まってるじゃないか。
「おい、神」
「なんだ?人間?」
「俺をあの世に送ってくれ」
そう、俺の役目はもう終わっているんだ
「本当にそれでいいのか?」
「あぁ、送ってくれ」
死ぬ前から自分の役割は決まっている。生まれたからこそ死があり、死とは役目を終えることである。
俺が人類最強になれたのは、役目を終えるその時まで、必死に生きていたから。
死んで役目を終えたと思ったら、また世界を救えなんて言われても、果たして同じように生きていけるのか?
そんなことしたら、生きるってことが俺の中でうやむやになっちまう。
だから、俺は死をえらぶ。
「わかった。送ってやろう」
途端、ないはずの体が宙に浮く。徐々に上に行くような曖昧な感覚が全身に広がった。
「ところでお前……」
神がまだ何か語りかけてくる。
「なんだ?まだ何かあるのか?」
「あの世って……どの世だ?」
口を開こうとした瞬間、俺はものすごいスピードで下へと降下した。
「あの野郎……騙しやがった……」
そんなことに気付いてももう遅かった。俺はまた別の世界に転生することになるだろう。
「世界一つぐらい救ってやる。だが、俺が役目を終えたとき、俺はお前を!」
「しばいてやる!」
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