第12話 覚悟と罰

 そして、次の日。


 八木さんとの一連の出来事があったあとで、俺は一人で登校していた。


 思えば……八木さんはヒントを出してくれていたのだ。俺の家に迎えに来たのも、ヒントだったというわけである。まぁ、わかりにくいすぎる気はするが。


 とにかく、俺は登校してからすることは決めていた。不安はあるが……やるしかない。


 教室に入ると、すぐさま俺は教室を見回す。なんとなく周りから視線を感じるが、気にしなかった。


 見ると、八木さんの机の周りにはギャルっぽいグループが集まっている。俺は迷わずにそのままグループの中に突っ込み、八木さんの方に向かっていった。


「なっ……! アンタ……!」


 リーダーの声が聞こえたが、俺は無視した。そして、中心にいた八木さんを見る。


「八木さん」


 俺が名前を呼ぶと八木さんはこちらを向く。あまり眠れなかったのか、目の下にはクマがある。


「……お前か。なんだよ」


「今日、暇ですよね?」


「……あ? お前、何言って――」


「今日の昼休み、屋上に来て下さい。絶対に」


 俺はそれだけ言い放つと、そのまま背を向ける。明らかに周りからも唖然とした感じで見られているのがわかった。


 俺はやってしまった……いや、やると決めていたのだから、後悔はない。


 その後、昼休みまで八木さんからは何もコンタクトがなかった。俺は不安だったが、かといって、ここで接触してしまうのも、何か違うと思った。


 そして、ほとんど授業の内容が頭に入らないままに、昼休みを迎えてしまった。


「おい」


 と、八木さんの声が直ぐ側から聞こえた。見ると、八木さんがすぐ隣に立っていた。


「……行くんだろ。屋上」


「あ……。そ、そうですね……行きます」


 いきなりのことに俺は少し戸惑ってしまった。本来なら俺の方が先に行くはずだったのだが……仕方ない。


 そして、いつもと同じように八木さんを先頭に俺はその先を歩いて行く……いや、これではいつも通りではないか。


「……八木さん!」


「あ? 今度はなんだよ?」


 俺はそのまま構わずに、八木さんの右手を握る。八木さんは目を丸くして俺のことを見ている。


「手、繋いで行きましょう!」


 明らかに教室全体からの視線を感じる。流石にまずかったか? と思ったが、八木さんは何も言わずに小さく頷いたままだった。


 その後、俺と八木さんは本当に手をつないだまま、屋上に向かった。


 廊下をすれ違う人々も当然のことながら、皆こちらを見る。恥ずかしかったが……俺は覚悟を決めていたので、手を話さなかった。


 そして、屋上へと続く扉の前まで来た。


「……おい。その……一旦、手、離していいか?」


「え? あ、あぁ……すいません。じゃあ……」


 八木さんは名残惜しそうに手を話す。俺は今まで八木さんの手を握っていた手を、まじまじと見てしまった。


「……ほら。お前、先に入れよ」


「そ、そうですね。じゃあ、行きましょう」


 俺が扉を開けて、屋上に入る。前回と同じように、解放感のある場所だった。

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