第2話 時間と罰
「……罰ゲーム、ですか?」
それはある日の放課後、唐突に八木さんから告げられた言葉だった。
俺は怯えながら、訊ね返した。
「そうだよ。まったく……。くだらねぇこと考えるよな……」
八木さんは明らかに機嫌が悪そうだった。なんでも、八木さんの友達であるクラスのギャル仲間で、この前カラオケに行ったそうだ。
それで、最もカラオケで点数の低い人が、罰ゲームをするということになったらしい。
結果として、八木さんは最下位だったそうで、罰ゲームを受けることになったそうだ。
考えられた罰ゲームは……イケてない男子と付き合うというもので、そのイケてない男子として俺が選ばれたそうなのだ。
……いや、まぁ、イケてないというのは間違いないのだが。
「……え、えっと……その罰ゲーム、受けないといけないんですか?」
「あぁ? 当たり前だろ。俺が罰ゲームなんて嫌だ、なんて言ったら、格好付かないだろうが」
「そ、そうですよね……。あはは……」
……で、俺にどうしろというのだろうか。仮に俺が嫌です、と言ったらどうなる?
……いやいや。そんなこと、無理に決まっているのだが。
「まぁ、そういうことだから。お前、俺と付き合えよ」
「あ、はい……。その……すいません」
「は? なんでお前が謝ってんだよ?」
「いや、だって……。罰ゲームとはいえ、なんか、申し訳ないというか……」
よくわからないが、俺はとりあえず謝っておいた。むしろ、イケてない男として選ばれ、罰ゲームで交際させられそうになっているのにどうして謝らなければならないのか謎だったが。
「よくわからねぇけど……。とにかく、今から俺とお前は付き合っているってことになったんだからな。わかったか?」
「わ、わかりました……。よろしくお願いします」
思わず俺は深く頭を下げる。八木さんはつまらなそうに俺のことをしばらく見ていたが、そのままその日は何も言わずに去っていってしまった。
が、次の日から、俺は八木さんと付き合っている……というよりも、パシリのような扱いを受けることになってしまった。
それもすでにそれなりに長い期間、それなりの時間となっている。正直、いくらなんでも罰ゲームとしては長すぎるんじゃないだろうか?
「……そろそろ、罰ゲーム、終わってもいいんじゃないの?」
二人分の荷物を持ちながら、俺は思わずそう呟いてしまう。と、ふと、八木さんが俺の方に振り返っていた。
……不味い。聞こえただろうか? 俺はとりあえず苦笑いを浮かべて誤魔化す。
八木さんはその鋭い視線で俺のことを見ていたが、しばらくするとなぜか寂しそうに視線をそらした。
少しその反応は気にかかったが、流石に俺もいい加減、八木さんに、いつまで罰ゲームは続くのかを聞いてみることにしようと決意したのだった。
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