俺達、罰ゲームで付き合っています。

味噌わさび

第1話 付き合いと罰

「おい」


 放課後。俺は帰る支度をしていたというのに、いきなりぶっきらぼうに声をかけられた。


「……はい?」


「帰るのかよ?」


 恐る恐る振り向いた先には……金髪の女の子がいた。


 短く切りそろえた金色の髪……無論、地毛ではない。そして、ナイフのように鋭い瞳……それが、八木さんだ。


 一応クラスの派手めな女の子達と絡んでいるいわゆるギャルなんだろうが……どちらかというとヤンキーっぽいというか……とにかく、教室の端っこで小さくなっている俺とは違う世界の人物だ。


 顔立ちは整っていて美人だと思うが、俺よりも身長も高いし、目つきも鋭いし……とにかく、俺にとっては怖い存在だった。


「八木さん……。えっと……俺は、帰りますので……」


「そうか。ほら」


 そう言うと、八木さんは俺に彼女のバッグを投げて寄越す。


「俺も帰るから。荷物持てよ」


「あ……。はい」


 無論、俺に拒否権はない。情けないとは思いながらも、俺は八木さんの鞄と自分の鞄を持つ。


「ほら。行くぞ」


 そう言って、八木さんは教室を出ていってしまう。


 俺もその後を下僕のようについていく。


 教室中から憐れみの視線を感じる……。


 だが、仕方ない。俺には八木さんに反抗することも、拒否することもできないのだから。


 俺は八木さんの後をついていく。そして、校門を出て、そのまま帰り道を歩いて行く。


 少し先を歩く八木さんは何も話さない。とても気まずい状況だった。


 どうしてこんなことになっているのだろう、そして……なぜ、俺はこんな目に遭っているのか……考えてもわからなかった。


「おい」


 と、八木さんが振り返って俺に呼びかける。


「は、はい!?」


 思わず声が裏返って情けない返事をしてしまう。すると、八木さんは苛立たしげに俺の方に近づいてくる。


「……お前、いちいちビビるなよ。男だろ?」


「あ……。ご、ごめんなさい……」


 そうは言っても怖いものは怖い。すでにそれなりにこういう状況になって時間が経っているが、全く俺は慣れていなかった。


「……そんなに俺が怖いかよ?」


「え……。あー、いや……そんなことは……」


「正直に言え。怒らないから」


「……怖いです」


 正直に言うと、八木さんは目を丸くしていたが、なぜかフッと小さく笑った。


「そうかよ……。じゃあ、お前も災難だな。そんな俺と、罰ゲームとはいえ、付き合わないといけないんだから」


 つまらなそうな表情をしながら、八木さんはそう言う。俺は苦笑いするしかなかった。


 どうしてこんなことになっているのかはわからないが……俺と八木さんは罰ゲームで付き合っているのだった。

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