第2話 婚約破棄後に覚醒
「…倒れたぞ!」
「あーあ、よっぽどショックだったようだね」
「いい気味…。前々からシャーリィさんに意地悪するから」
「シャーリィさんを階段から突き落とそうとしたけどエルムート殿下が華麗に救ってくれてお見事でしたわ」
「でも一部始終現場を見られて殿下に婚約破棄されて気絶するなんて無様だわ」
「明日からどうするのかしら?もう卒業手前だと言うのに」
クスクスと談笑の声と
「シャーリィ!大丈夫かい!?もう君を苦しめる者はいなくなるんだ!!俺はアイリーン・ベル・フェルゴール侯爵令嬢とはもう婚約破棄したし罰として彼女には修道院へ行ってもらうことにしたんだからな」
「ああ…エルムート様…ううっ、私怖かった…死ぬかと思った…」
「シャーリィを突き落とすなんて!」
と声がし間近でも
「お嬢様…早く起きてくださいよ」
と冷たい声がした。
目を開けると周囲には沢山の人がいて…あたしは…一気に今迄の記憶が頭を駆け巡った!!まるで走馬灯のように…
前世のこと毒殺された奈美子…女神さんとのやりとり、泉に落ちて転生して…ゲームの世界の悪役令嬢アイリーン・ベル・フェルゴール侯爵令嬢…銀髪の巻毛で翡翠の瞳のつり目美人になって人生を生き…
婚約者の王太子で生徒会長の黒髪で金色の瞳の美青年エルムート・ディー・アスマランド殿下と婚約していたこと、シャーリィ・ロンドと言う平民上がりのヒロインにたくさん意地悪して…嫉妬に狂ったアイリーンが階段から突き落とし、下にいた殿下に救われてあたしは皆の前で堪忍袋が切れたエルムートに
「貴方とは婚約破棄させてもらう!シャーリィが平民だからと言って人の命を奪おうたするような令嬢とは一緒に生きていけない!卒業後は北の監獄とも呼ばれるフロングレスト修道院でその罪を一生償うがいい!!」
と断罪されショックで白目を剥き倒れたとこまで早送りで思い出した。
と言うか何故、断罪後に記憶戻った!?いや、覚醒したのか。
側の執事も確か攻略対象で私に八つ当たりされヒロインに相談に乗って貰っていたのでヒロインに気があり、あたしの味方はほぼいなかった。
取り巻きの令嬢達も今は寝返り笑う連中と
「私は関係ありませんわ、アイリーン様が勝手にやられた事ですわ」
と言って可愛い顔をした亜麻色の髪と菫色の瞳の可愛いを詰め込んだヒロインを心配して私への愚痴を言っている。
「元々私アイリーン様に脅迫されて無理矢理友達にさせられて不愉快でしたの!」
「もう取り巻きなど辞めますわ」
と掌を返した。
攻略対象の一人のイケメン執事レビルド・マーカスもアイスブルーの髪と銀の瞳をニヤリとして
「やっとお嬢様から解放される…」
と助け起こしながら耳元でわざと囁かれた。
なんでここで覚醒した!?女神の奴!!
とりあえずあたしは悪役令嬢アイリーンとして立ち上がり、エルムート殿下に一礼して
「すまなかったね。謝るよ…。婚約破棄して貰って構わない!あたしが悪かったのだからね!」
と喋ると
「何あの喋り方!頭を打ったせいかしら?」
と周囲からざわめきを巻き起こしていた。
だが、ちょっと待て?追放だって!?そんなことされたら一生宏敏さんに会えない!…冗談じゃないよ!
折角この世界に生まれ変わって来たってのに追放だって?
「王子殿下…。婚約破棄はいいがちょいと追放はやり過ぎじゃないかねぇ?あたしだって女だよ…。将来家族も持てないのかい?卒業までシャーリィさんの言う事を聞くってのはどうだい?虐め倍返しとか」
「い、虐め倍返し!!?」
「そうだよ。シャーリィさんにした事の倍の嫌がらせをしてくれて構わないし皆もあたしのことを笑ったり馬鹿にしてくれたりして構わない!だから追放だけは勘弁しとくれよ!」
とあたしは土の上に土下座して頭を下げた!
エルムート殿下含めその場の者は唖然とした。あたしは
「なんならあたしの頭を踏んだり石を投げたりしてもいいよ?殺人とかじゃなきゃ痛めつけてくれたっていいさ!ほらやんな!!」
と言うとエルムート殿下は
「まさか…頭を打って相当おかしくなったのか!?一生入院させた方がいいんじゃないか!?」
と言われた。皆もざわざわと
「何あれ?気持ちが悪い!」
「まぁ、あんな所に追放されたくないのはわかるけど…私達を悪者にしようってのかしら!?」
と言うのに側の執事レビルドも呆れ果て
「お嬢様…往生際が悪いですよ?大人しく貴方一人国から消えてくれた方が皆の為ですよ?」
殿下も
「ふっ、そうだな、卒業までなんて生温かった!直ぐにでも修道院へ追放だ!!」
しまった!余計に怒りを買わせちまった!万事休すだね!
折角転生して宏敏さんともう一度恋をする予定が台無しだよ!あたしは生まれ変わってもう一度終活しなきゃならないってのかい!?
「修道院への手配が済んだら直ぐにでもこの国から消えてもらう!いいな!これは王太子命令だ!」
とキツく言われる。
「そんな…シャーリィさん頼むよ。あんたから何とか言っちゃくれないかい?」
とウルウルするとシャーリィさんもキッとしてこっちを見て
「今更もう遅いですわ!私が平民だからと言ってまだ馬鹿にしてます?私だって人間です!!貴方みたいな人!顔も見たくありません!!」
そんな!ヒロインの優しさって何?どこへ?あんた鬼だよ!こんな中身老婆を北の監獄へ送ろうなんて!
因みにフロングレスト修道院は遠く寒い地方の修道院で戒律も厳しく凍えるような寒さの中生きていかねばならない。更に夜になると修道院とは名ばかりで村の男達の夜の相手なんかをさせられてしまう、娼婦よりも酷い扱いだ。神様も何もあったもんじゃないよ。一体どう言う設定にしたんだい!あたしの出資した乙女ゲーム制作会社は!金返せ!!
「ど、どうしてもダメですかね?」
へこへこへつらうと
「くどいな!とにかく手続きに丁度ひと月はかかる!その間シャーリィや僕に接近禁止だからな!!無論監視もつける!まぁフェルゴール侯爵がこんな失態を犯した娘を恥ずかしくて登校させないだろうね。家で荷造りでもしてろ!」
と言われシャーリィと共にエルムート殿下は去って行き残された私はクスクス笑われて執事のレビルドには
「後1ヶ月もこんな女の側に?」
と嫌な顔をし助け起こそうともしない。その時ヒュンと石が飛んできた!
額に当たる。
「いたっ!!」
何処かから
「クスクス…お望み通りの石よ?」
「存分に浴びたら?」
とヒュンヒュンと石やゴミを投げてくる。
「ひいっ!やめとくれ!」
庇おうとしない執事!職務怠慢だろ!あ、あたし悪役令嬢だったね。転生しても全く逆転できないのかい!?
なんだが惨めだね。宏敏さんに会いたい…。彼ならきっと庇って…。
そ、そういや宏敏さんは!?
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