73歳転生悪役令嬢の終活
黒月白華
第1話 毒殺
私…大林奈美子73歳…。
資産が余るほどある豪つくばばあで孫達に命を狙われている日々だった。
くっ、あたしの遺産はそう簡単にはあげれないよ!
金目当ての汚い連中があたしに寄ってたかって投資だのを勧めてくる。あたしは有り余る富を失わないよ!誰がやるもんか!
しかしいずれはこの老いぼれは死んじまう。遺産目当ての奴等にはやりたくない。どうすりゃいいんだい…。
現実逃避する様にあたしは部屋に篭り…若い子が好んでやっているというスマホの乙女ゲームをやり始めた。因みにあたしか出資してやった会社が作ったやつだけどね。中々人気らしくバンバン儲かってるみたいじゃないの。
どれ、一つやってみようかな。くらいの軽い気持ちでこの老いぼれはやり始めたんだ。そしたらイケメンがゾロゾロ出て来てあたしに優しく囁くのだ。いい声優使ってるね。
かぁー!
『好きだよ奈美子』
なんて囁かれるのは若い時にころっと死んじまった病弱な夫以来だよ!!
あたしに寄ってくる奴は皆金目当てのクズばかりだからね。生身の人間は夫以外信用してない。
その点二次元はいいね。あたしも73でとっくに枯れ果てたと思ってたがキュンとする気持ちがわかったよ。イラストレーターの奴やるね。ビジュアルがいい!近頃の若い娘達は推しと呼びキャラを愛するらしいね。
ふふ、あたしの推しとやらはこの売れない画家の美青年さ。ちょっと病弱という設定だ。髪は病気で白くなり青の瞳だ。性格も優しい。病気を治す為にヒロインは聖女となり薬を作り出し彼に与えて元気にさせて結ばれるんだがこと如く悪役令嬢って奴に邪魔されるんだよ。
思えばあたしの夫も貧乏だった。
ちょっと夫に似てるこいつを推しとしてあたしは日々の空いた時間にプレイしていたのさ。
*
しかしある日…ついにあたしは油断して毒入りのお茶を飲み干しちまって…倒れた。くっ…。まだ…ラストまでプレイしていない。口から血を吐き全身麻痺であたしはとうとう死んだ。悔しい!!
ああ、なんてこった、魂が抜け上からあたしを殺した孫達が笑い合い
「やっとババア死んだよ!これで巨額の富は山分けだ!!」
と喜んている。こんなことならさっさと資産を乙女ゲーム会社に渡しとくんだったよ!!醜い身内を見つつどうやらお迎えが来たようだ。
眩しい光が包み次に目覚めた時女神みたいな美しい女性がいて
「お疲れ様でした、大林奈美子様」
とペコリと挨拶された。
「なんだよ、夫じゃないのかい?やっと会えると思っていたのに!!」
と言うと女神さんは笑い
「ごめんなさいね。夫の大林宏敏さんはずっと貴方を見守ってたんですけど、最近貴方が密かに乙女ゲームにはまってたのを見て…なんだが嫉妬しちゃったみたいでしてね」
「ぎゃっ!な、なんだってえええ!?宏敏さんが側で見てたのかい!?」
どうしよう。こんな老いぼれが若いイケメン見てニヤついてたのを見られてたって言うのかい!?くっ!ごめんよ、浮気じゃないよ?二次元だから許しておくれよ!宏敏さん!!
「それでその宏敏さんが…自分はこのゲームの画家の美青年に生まれ変わりたいと言って…一足先に貴方の推しの美青年に転生しちゃいました。もちろん貴方との記憶はありません」
「なっ、なんだってえええええ!?宏敏さんがあたしの推しに転生!?」
「ふふ、貴方がこのゲームのヒロインとして転生してきてもう一度恋がしたいと待ってると言い残して転生していきましたよ。そこで…」
と女神さんは転生の泉とやらを指差した。
「これは今若い者達の間で流行っているあれだね!悪役令嬢がどうのこうのというやつで、結局は悪役令嬢と結ばれるあれじゃないかい!?」
と言うと女神さんは汗をかき
「い、いえ何も別に無理して悪役令嬢に転生しなくてもいいんですよ?宏敏さんはヒロインの貴方を待っていると言い残して…」
と女神さんが言うがあたしは
「ふん、それじゃあ面白くないだろう?恋は生涯があって萌える。大体ヒロインのキービジュアルは顔なしだよ!!乙女ゲーム制作会社はプレイヤーの心境を思い、自由に創造させる為顔を敢えて作らなかったんだ!
あんたあたしをのっぺらぼうのヒロインとして転生させる気かい?冗談じゃないよ!」
「いやそれはゲームの話でええと転生先はゲームの中とは言われていますが希望したヒロインらしい顔を選んで…」
と女神さんはなんとカタログみたいなのを見せてくれたがあたしはなんか媚び売ってるバカ娘みたいな顔立ちのヒロインに嫌気が刺した。
あたしの孫達も可愛い顔して毒殺してきたからね!
「嫌だね、あたし…悪役令嬢になるよ!あっちの顔のがスッとして綺麗じゃないか!あっちにしとくれ!!」
「ええ!?で、でも、それじゃ!?」
「ごちゃごちゃうるさい女神さんだねぇ!!ほら早くおし!宏敏さんに会いに行くんだ!あ、あたしの記憶は消すんじゃないよ!?さっさと転生させな!!」
「ああ!ちょっと!まだ何処から転生させるか決めてな…」
と言う声を無視してあたしはドボンと転生の泉に落ちた。
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