第105話 タマちゃんの様子がおかしい?
ニンテンドーワールドを後にして、違う場所に向かってると、
「あなた達、ちょうどいいところに」
「えっ?」
声をかけられて振り向くとそこにいたのは――
「――えっ、誰?」
明日香の声がみんなの心を代弁するように漏れた。
「誰ってひどいじゃないですか。私ですよ」
みんな頭を傾げる。
新手の詐欺だろうか。だけどこんなレジャー施設で堂々とするだろうか。しかも学生相手に。制服着てるから一目瞭然だと思うけど、一応警戒心は怠らないようにしようと。
「あ、もしかしてタマちゃん?」
「「「「えっ!?」」」」
加奈の発言にみんな驚く。
タマちゃんって担任の? 恰好がいつもの運動できるようなラフな格好からフォーマルなスーツでびしっと決めていて長い髪を後ろで束ねている。いつもはそのままだったのに。それにバスを降りる時までは普段と大差なかったのにこの数時間で一体何が?
「タマちゃんなのか? いつもと言葉使いが違くないか」
「桜井君。私はいつもこうですよ。それより写真を撮るのでみんな並んでください」
いつもと違うタマちゃんの言動に戸惑う。
「あ、教頭先生」
「わ、私はちゃんとやってますぅ~!!!」
タマちゃんは背筋を伸ばして慌てたように弁明する。しかし、そこには
教頭先生の姿はない。
「冗談ですよ。慌てすぎ」
「白鳥さん。言っていいことと悪いことがあります。バツとして課題を出しましょうか」
タマちゃんの顔から怒りマークが見えるようだ。
「ごめんなさい。以後気を付けます」
加奈が勢いよく土下座する。
周りの行きかう人が何事だとみてくる。どうしよう。他人のフリしたい。だけどぱっと見、制服でバレてしまうだろう。
「わ、分かりましたから、立ってください。私が悪いみたいじゃないですか」
僕は見逃さなかった。立ち上がる瞬間加奈がほくそ笑んでいたのを。
あ、これ、加奈の作戦だ。わざと注目集まるような行動をして、課題を出させるのを防いだんだ。
「はぁ~、じゃ撮りますよ」
タマちゃんがカメラのシャッターを切る。
「じゃあほかの生徒も撮らなくてはいけないので行きますね」
タマちゃんの去っていく後ろ姿に覇気がない。
「これはこっぴどく教頭先生に絞られたんだろうな」
一樹がぼそっと言う。
僕はなんか元気がないタマちゃんを見てられなくて一言いう。
「先生! 僕はいつもの先生の方が好きですよ」
タマちゃんは立ち止まって驚いたように振り向くと、顔を真っ赤にして、
「私を誘惑するな」
と、走り去ってしまった。
「そんなつもりはなかったんだけど」
ポリポリと頬を掻いていると、明日香にわき腹をつねられる。
「明日香、痛いって」
「ツーンだ。翔琉君の浮気者」
これは嫉妬してるな。
「ごめんごめん。明日香の方がきれいだから許して」
僕と明日香が夫婦漫才してるのを加奈が呆れながら、「はいはい御馳走様」と言うのだった。
僕たちが次に向かったのは、ハリーポッターの施設があるウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッターだ。
この場所は、ハリーポッターの舞台が再現されていて映画の世界に入ったみたいな気分が味わえる。建物には雪が積もっているし、舞台となっているイギリスは、雨が多い気候だからか地面をよく見ると、濡れているうように見える。
「ここって、魔法の杖って売ってないかな。私、魔法使いってあこがれてたんだよね」
アリスが興奮したように話している。そういえば昔、よく魔法少女のアニメにはまっていろんなポーズしてたからオタク心が刺激されたのかな。少しわかる。
「あるらしいよ」
「え、本当! その店行ってみたい」
「えっと、ちょっと待って。場所を調べるから」
「売ってる場所は、オリバンダーの店よ」
加奈が調べようとしたところにつかさず明日香が答えた。
「明日香、知ってたの?」
「前にテレビか何かでやってて気になったから調べたことがあったんだよね」
さっそくオリバンダーの店に向かった。その場所は、無数の杖の箱が天井まで高く積み上げられた埃っぽい小さな店の中で、杖の番人となる人と一緒に劇中で出てきた杖が魔法使いを選ぶ様子を体験できて本格的に楽しくなってきた。
そして、地図も手に入った。地図に示されてるポイントで、杖の振り方と呪文が記されたブロンズのメダリオンを歩道の埋め込みに見つけられたら、その呪文を唱えたら魔法がかかるらしい。あっちこちにありそうなので、ほかのアトラクションを回りながら近くを通ろ掛かったときに体験してみることにした。
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