第103話 三日目、ユニバーサルスタジオに向かう道中・・・・・・?
三日目の朝、朝食を済ませて部屋で身支度を整えると、ホテルのロビーに九時に集合だ。今日はどの班もユニバーサルスタジオに行くスケジュールのため、学校がバスをチャーターして行くことになっている。
僕と一樹は、ちょっと早かったのかまだ人は集まってないようだ。
「お前ら、早いっ――!!」
ロビーにいたタマちゃんが僕の顔を見て固まっている。昨日のことが尾を引いてるようだ。まだ少ないとはいえ、何人か生徒は集まっている。そのみんなが僕たちを見ている。タマちゃんの態度に「どうしたんだろう」と心配する声が聞こえてくる。一樹はこの状況を楽しんでいるようで助けてくれない。なんか集団監視されてるようで針の
何とかしなくてはと一歩踏み出すと、タマちゃんが一歩下がる。
「え~と」
タマちゃんは自分でもよく分かってないのか目をグルグル回すように困難している。
今逃げられたら修正不可能だと思った僕は、意を決して、逃がさないようにタマちゃんの両肩をつかむと、
「昨日のことは不幸の事故に遭ったと思って忘れましょう。僕は気にしてないので先生も忘れてください」
「そ、そうか。そう言ってもらえると助かる。昨日の私はどうかしてたんだ。切羽詰まってたとはいえ、自分の生徒にあんな・・・・・・」
思い出したのか顔が赤くなっている。
普段あんなにきりっとしたカッコイイタマちゃんの違った一面が見えてなんか新鮮・・・・・・じゃない!
「だから忘れてくださいってば」
「そうだったな。済まない」
タマちゃんはスーハ―と息を吐いて気持ちをどうにかして切り替えた。
「もうバスは着てるから乗ってていいぞ。座席は特に決まってないから好きなところに座ってもいいけど班員でかたまれよ」
タマちゃんがそういうので、
「さっさと行くぞ。いいところを確保しなかったら加奈達が文句言うかもしれないからな」
「そうだね」
一樹と生徒があんまり来てないうちに外で待機しているバスに乗り込む。このときの僕は知るすべもなかったが、さっきのタマちゃんとのやり取りを見てた生徒から出回ったのか、公衆の面前で愛の告白をしたとか、それをタマちゃんがOKしたとか、明日香との二股疑惑が出たり、僕がハーレムを気付こうとしているような噂が出回った。
僕と一樹は、まだバスに誰も乗ってなかったので一番後ろの座席を確保する。しばらくすると明日香たちも来たので手を振って合図する。明日香たちは僕と一樹を挟むようにして座った結果、明日香とアリスに挟まれる形だ。できれば窓側が良かったんだけど二人のうれしそうな顔を見たら言えそうにない。明日香が彼女だから優先したい気持ちはあるけど窓側にはアリスが座ってるため交代したら明日香と離れてしまう。ま、悪い気はしないけど。
移動中の車内にて――
「どこか行きたい場所ってある?」
「スーパー・ニンテンドー・ワールドは行きたい」
「そこは外せないね」
「それ以外にもハリーポッターやスパイダーマンも行きたいな」
「なら一番人気がありそうなスーパー・ニンテンドー・ワールドから回って気になるのを遊びつくしましょ」
「「「「異議なし!!」」」」
加奈がまとめて大まかな予定を組んでいく。
他からも漏れてくる声から察するにどこも似たような話をしてるようだ。
「パワーアップバンドってアイテムがあるともっと楽しめるみたい」
明日香がその画像を見せてくれる。
「でも、値段もそこそこするわよ」
加奈に言われて確認する。
「四千二百円か。ちょっと高いな」
「今回はいいんじゃない。他にも遊べるところはあるし、お土産も買いたいしね」
加奈の提案に誰も反対しなかった。
それにしてもアリスはおとなしいなと見ると、顔色が悪い。
「き、気持ち悪い」
乗り物酔いしてしまったようだ。電車では大丈夫そうだったのにバス出ようとは思わなかった。理由を聞くと、スマホを眺めてたら気分悪くなってきたようだ。確かに車に乗ってるときに本を読んでたら気持ち悪くなった経験がある。自分の意に反して揺れたりするから気分悪くなるんだろう。
僕は、アリスのところの窓を少し開けた。しばらく風に当たってるとだんだん気分が良くなってきたのか、顔色が良くなってきた。
高速を走ること、一時間二十分ほどでユニバーサルスタジオに到着した。明日香たちと、ユニバーサルスタジオのホームページを見てどこを回りたいか話してたらあっという間についた。
「降りる前にお前らに配るものがある」
タマちゃんから配布されたものを見ると、ユニバーサル・エクスプレス・パスだ。これで待ち時間も短縮できる。そして、何と高くて今回はパスと思ってたスーパー・ニンテンドー・ワールドで使えるパワーアップバンドも付いていた。種類は選べないけど、これで遊べると思えばそんなの大したことはない。
因みに僕はマリオで一樹はルイージ、明日香はピーチ、加奈はヨッシー、アリスはキノピオとうまく割れていた。
「タマちゃん、ありがとう」
「タマちゃん、神!」
みんなが思い思いに喜みを噛み締めている。やっぱみんな考えることがいっしょなんだな。
「お前ら、褒めたってなにも出ないぞ。それに、それは他の教師たちも頑張ったから私だけの成果じゃない。だけど、どうしてもというなら卒業してからで構わないから私を嫁にもらってくれる人がいたらいつでもウエルカムだぞ」
シ~ンッ!!
場を静寂が支配した。
「さっさと降りて遊ぼうぜ」
「賛成!」
タマちゃんのことを無視するようにドアに近い先頭に座ってた人たちがバスを降りていく。
「待て! 私を無視するな」
「――神宮寺先生。私の目の前で生徒を口説くとはいい度胸ですね」
「きょ、教頭先生」
左側の一番前に座ってた眼鏡をかけた女教師が立ち上がる。眼鏡を手でグイッとするしぐさも見える。僕たちを引率している教頭先生だ。
「あのですね。これは冗談というか、生徒とのスキンシップを図る目的というか・・・・・・」
「だまらっしゃい! どうやらあなたには徹底的な教育が必要なようですね。それにあなたは昨日も公衆の面前で生徒を口説いたそうじゃないですか」
「な、何でそれを!?」
「あんな不特定多数の人がいるところで目撃者がいないわけないでしょう。それに今のご時世ネットですぐに拡散しますからね。悪いうわさが立って学校の評判が落ちたらどうするんですか」
「うっ! だけど私だってまだ二十代だしデートの一つぐらいしたかったんです! 私は年齢イコール彼氏なしなんです。少しくらい夢見たっていいじゃないですか!」
とうとうぶちまけたよ。しかも少し涙目だ。
「それには同情しますが、あなたは一教師なんです。モラルをはき違えないように!」
「はい」
そんなタマちゃんたちのやり取りをしり目にみんな降りていって、あとは最後部に座ってた僕たちだけだ。せっかくいい席を確保たと思ったのにこんな目に合うとは。何事もうまくいかないと教訓になったと思っとこ。
僕たちは他人のフリ、他人のフリというようにそそくさとバスを降りる。その際にタマちゃんと目が合ったような気がしたが咄嗟に視線をそらした。
この後、誰もいなくなった車内でタマちゃんは教頭先生にこってり絞られるのであった。
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