第101話 忍者体験は何歳になっても楽しいものだった。

 僕たちは、次にからくり忍者屋敷に向かった。ここは、からくり屋敷を探索しながら出口へ向かう仕掛けのようだ。

 入り口を見ると、屋根の上などに忍者の人形が立っていて手裏剣の投げるポーズをしている。これを見るとテンションが上がるのは僕だけだろうか。


「カッコイイ!!! 私も忍者になりたい。シュシュシュッ!!」


 アリスが僕以上にテンションが上がっていた。しかも手裏剣の投げるモノマネまでしている。

 中に入ると、案内の忍者が説明してくれて一の間から三の間までは案内してくれたが、ここからは自力でクリアしなければならない。

 みんなで手分けして出口を探す。

 僕は、手当たり次第に壁を叩いてみる。他と違う音がしたら隠し扉があるかもしれないからだ。アリスは床を調べている。僕が思うに床はないと思う。そんなところに隠し階段などあったらなんかの拍子に床が抜けたら危ないからだ。だけどここでそんなことを言うのは野暮というものだ。万が一がないとも言えないしね。

 明日香は、襖を開けたりしている。一樹は壁を押したりして、加奈は廊下の方を調べている。

 それからしばらく調べたが、なかなか見つからない。他に見てないところがあるのかと、周りを見渡してたら何か違和感のようなものが見えた。明日香が明けた襖の中が他と比べて天井が少し低いような気がしたのだ。


「明日香、ちょっといい」


 明日香が襖を閉めようとしてたところに呼び掛けた。


「何、翔琉君」

「ちょっと気になって」


 僕は明日香が明けてた襖の中に入って、天井を軽く叩いてみる。すると、何と天井が外れて上に続く階段が現れた。


「すごい、翔琉君」

「なんだ、見つかったのか」


 明日香の声にみんな集まってきた。

 上の階に上がると、また別のからくりが現れて、みんなで手分けして壁の向こうに隠し扉が現れたり壁が回転したりと、なんかRPGをやってるみたいで楽しかった。


 からくり屋敷をクリアした後は、立体迷路をやりに行った。

 立体迷路は、体力コースと知力コースの2つのコースが用意されているようだが、さっきのからくり屋敷が頭を使うような感じだったので、体力コースを選んだ。それにしても立体迷路なんていつぶりだろうか。小学校低学年の時に行った東京にある牛田の巨大迷路以来かもしれない。

 入り口でスタンプカードを貰う。立体迷路である砦の中に設置されたスタンプを3つ集めるとクリアのようだ。

 中に入って攻略していくと、大きな球が行く手を遮ってその上に登ったり、途中で行き止まりで引き返したりして結構体力を消耗して疲れた。小学生でも挑戦するって聞いたから、ちょっと舐めてたけど、体力コースというだけあってとても疲れた。

 次は、太秦トリックアートの館に向かった。トリックアートならゆっくり見れるし体力も回復するだろう。

 みんなで中にある巨大なガマガエルの口の中に入ったように見える角度で写真を撮った。このガマガエルの上に忍者がいて『NARUTO』にでてくる口寄せみたいだった。

 今度は、手裏剣道場に向かった。ここでは、的に手裏剣を投げてその点数で景品がもらえるようだ。縁日にある射的に近いかもしれない。

 さっそく明日香たちは、ゴム手裏剣に挑戦するようだ。一人五回まで投げれる。みんな運動神経がいいからか投げるにつれ段々と中心近くに当たるようになっていた。

 結果として点数はみんなそこそこよかったらしくまあまあの景品をゲットしたようだ。


「次は僕もやろうかな」

「ちょっと待った。翔琉」

「一樹、どうしたの」

「せっかくだからあっちのやつやろうぜ」


 一樹が指さしたところをいると、本格手裏剣はこちらと書いてある文字が見えた。奥に入ると、鉄製の手裏剣が置いてある。確かに明日香たちが投げていた紙製より楽しそうだ。しかも鉄製の手裏剣は六回投げれるようだ。


「せっかくだから何か賭けようぜ」

「賭けってなにを? あまり無理難題を押し付けるならやだけど」

「大したことじゃない。この後大阪に行ったら、たこ焼き食べるだろ」

「そりゃ、大阪に行ったらたこ焼きは外せないけど」

「だろ。だからそのたこ焼きの料金を人数分おごるってのはどうだ?」

「それぐらいなら別にいいけど。やたら高いたこ焼きなんてなしだからな」

「分かってるって。それにしてもそんなに高いたこ焼きってあるのか?」

「知らないけど念のため」


 それまでおとなしく聞いてた明日香たちが、


「私たちはどうする。もうやっちゃったけど」

「まさかさっきに点数を採用とか言わないでよ。そんな賭けなら今度は本気でやるから」


 確かに加奈が言うように、明日香たちがその気でやったらもっといい点数が取れそうな気がする。一回やったからコツつかんでそうだし。


「そんなことは言わないよ。そうだなー。俺と翔琉、勝つと思う方に賭けてくれ。それで買った方に賭けたらおごられるけど負けた方に賭けたらその人数で割り勘しておごるってのはどうだ」

「それなら問題ないわね」


 明日香とアリスも問題なさそうだ。


「じゃあみんなどっちが勝つと思う」


 一樹が聞いた結果、なぜかみんな僕ん方に賭けた。


「その二人はしょうがないけど、なんで加奈までそっちなんだ。彼氏である俺を信用してないの」

「信用っていうか、大体こういう事って言い出しっぺが負けるのよね」

「クソッ、見てろよ。俺が独り勝ちしてお前たちにおごらせてやるからな」

「負け犬ほどよく吠えるとはこのことね」

「ぐぬぬ・・・・・・言わせておけば」

「ちょっと、あんまりあおらないでくれると助かるんだけど」


 ただでさえ強敵なのに怒らせてどうするんだ。

 なんか変に緊張してきて胃がキリキリとする。


「気楽にやりなさい。万が一の時は私が何とかするから」


 加奈が耳元でそんなことを呟いてきた。何か秘策があるのだろうか。


 僕が先攻で投げることになった。鉄製の手裏剣を掴むとまあまあの重量感があった。

 一投目を投げる。見事に中心に当たった。


「翔琉君すごい!」


 明日香が飛び跳ねるように喜んでくれる。なんか悪い気がしない。気がゆるんでしまいそうだけど引き締めなくては。

 さっきの感覚を忘れないように同じように投げると五投目までまさかの真ん中に当たった。ここまででも出来すぎなくらいだ。店の人もまさかの的中率に言葉を失っている。最後の一投は少し中心からそれたけど、会心の出来ではないだろうか。これで、一樹に相当なプレッシャーをかけたはず。


「やるな」


 一樹は落ち着いた雰囲気で手裏剣を掴む。

 そのまま投げると、何と、ど真ん中に的中する。たまたまかと思ったけど、一樹は一定のリズムで投げ続け、二投目、三投目と的中する。

 まさか経験者なんじゃ。明日たちも同じことを思ったのか似たような反応する。


「いまさら気づいたか。俺はこれが得意でな。ここだって親に連れられて数えきれないぐらいやってるからな。翔琉がここまでやるとは思わなくて少しヒヤッてしたけど最後を外してくれて助かった」


 そのまま一樹も危なげなく的中させていって最後の一投を残すのみになった。ここまでを見ると最後もすんなり当てられそうな気がする。ここは僕の負けか。そこでふっと思ったけど、別に負けてもみんな僕にかけてるし、一樹一人におごるのは対して負担になってないのでは。これは負けても大した痛手にならないことに今更気づいた。


「これで終わりだ」


 一樹が最後の一投を根下用と振りかぶった瞬間、加奈が一歩前に出て、


「一樹、愛してる!!!」

「「「「へっ」」」」


 僕たち同様一樹も驚いたのか投げた手裏剣は明後日の方向に飛んで行って的を大きく外した。


「これで私たちの勝ちね」

「ひ、卑怯だぞ」

「これぐらいで気が動転する方が悪いわよ」

「こんなの、誰だって気が散るだろ。翔琉だって橘に同じこと言われたら気が散るだろ」


 僕は明日香を見ると、顔を真っ赤にしている。


「あー、ノーコメントで」


「グダグダ言わないの。勝負は勝負なんだから。次の場所に行くわよ」

「しょうがねえな」


 ブツブツ言いながら一樹は加奈の後をついていった。その背中を見ながら、あの時加奈が言ってたのはこのことだったのかと思い、加奈は敵に回さないようにしようと心に誓った。

 この後は、アスレチックに挑戦したり、城から脱出したりした。

 お化け屋敷でも想像以上の作りの鳥居や井戸、墓に所々配された死体に思わず明日香と一緒に悲鳴を上げてしまったほどだ。

 そして、明日香たちは着物を返却してショップでお土産を物色した。僕は、エヴァンゲリオンの八ッ橋があったので買って行った。

 そして、隣にはエヴァンゲリオンの施設があったので少しだけよってみんなでエヴァンゲリオンの手のひらに乗って記念撮影などをして、太秦映画村を後にした。

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