第97話 清水寺観光

 僕たちは、喫茶店でリフレッシュすると、清水寺に向かって歩き出した。

清水坂を抜けると、清水寺の入り口にある仁王門が見えてきた。

 拝観時間は、十八時までなので、僕たちは目的である本殿に向かって歩いていく。因みに、今の時間は、午後四時二十分を回ったところだ。まだ時間の余裕はあるが、十八時にはホテルに戻ってないといけないのでそんなにゆっくりできないかもしれない。


「あ、赤い塔がある!」


 アリスが物珍しいものを見たように興奮している。


「カケル、あれって何?」

「あれは三重塔じゃないかな」

「あれがそうなんだ。調べたら他のところにある感じだったんだけど」

「三重塔って結構いろんなところにあるぞ」

「何で?」

「いや俺に聞かれても・・・・・・加奈は知ってるか?」

「私が知るわけないじゃん。明日香は?」

「私、こういう歴史とか地理には疎くてよくわからない」


 確かに気にしたことなかったけど言われてみたら気になるかも。あとで調べてみようかな。覚えてたらだけど・・・・・・


「まあいいや。写真だけ撮ろうと!」


 アリスがパシャパシャッと写真を撮っている。

 途中絵馬をつるしてるところもあったが、目的である本堂に着いた。

 本堂に着くと、さっそく前面にせり出してる舞台に向かった。

 手すりを掴んで、下を見ると思ったより高くて足がすくんだ。


「結構高いな。本当にこんなところから飛び降りた奴いるのか。落ちたらひとたまりもなさそうだけど」


 一樹が下を眺めながらそんなことを言ってくる。


「清水の舞台から飛び降りるって聞いたことあるもんね」


 加奈が一樹と話してるところに僕は言った。


「何でも、昔本当に飛び降りた人がいたらしいよ。しかも生存率は驚異の八割を超えてたらしいよ」

「マジで」

「翔琉、物知りね」


 二人が感心してるところ悪いが、僕はすぐに否定した。


「いや、そんなことを書いてあるマンガを昔読んだような気がして」


 ズコッ


 二人ともズッコケた。


「俺たちの感動を返せ」

「私もそのマンガ読んだことある。題名は何だったかな」


 アリスも聞いたことあるようだったが、題名を思い出せないようだ。僕も出てこない。あとちょっとで出てきそうなんだけどな・・・・・・なんかモヤモヤする。


「確かネギまじゃない」


 明日香が答えたのを聞いた瞬間、僕とアリスは「「それだ!」」と口をそろえた。ああ、なんかすっきりした。


「じゃあ、フィクションの話であって実際は違うってこと?」


 加奈が疑問を呈する。


「それがそうでもないの。マンガは結構本当のこと言ってたりすることあるから、なかなか馬鹿にできないわよ」


 明日香がここぞってばかりに加奈に力説する。

 加奈は、明日香が身を乗り出してくることに少し後ずさりして「そ、そう」とたじろいでいる。明日香は、オタクってことを隠さなくなってきてるような・・・・・・でも、コスプレイヤーってこともバレてるし今更か。


「何でも昔の庶民は清水寺にある観音様を強く信仰していて、その観音様に願掛けして願いをかなえるために高い舞台をものともせず飛び降りる風習が有名だったらしいよ。諸説あると思うけどね」

「へえー、よくこんなところから飛び降りようと思うわね」

「ほんとにな。危険を冒してまでかなえたい願って何だったんだろうな」


 明日香の話を聞いて、加奈と一樹が話している内容が僕の耳に届く。確かに気になる。


「結局願ってかなったのかな」

「さあー、私もそこまで知らないわね」

「世の中知らない方がいいのもあるんじゃないか」

「それもそうだね」


 一樹の言う通り気にしてもしょうがない。昔の人を気にすることより今を楽しもう。せっかく明日香たちと京都に来ているんだから。校外学習だけどね。


 僕たちはみんなで写真を撮る。その際に射線上にいた外国から来た観光客が僕たちのカメラに気付いて柱の陰に隠れる。その際に柱から足のつま先が出ていて、隠れきれてないことに僕たちは思わず笑ってしまう。

 やがて、照れくさそうに観光客が、僕たちを撮ってくれるってことでカメラを渡し僕たちは清水寺の舞台で写真を撮った。ちなみに、カメラを返してもらうときに気付いたのだが、外国人の観光客だと思っっていたが、何と、テレビによく出ているタレントだった。プライベートでたまたま京都で観光しているってことで、僕たちは握手だけしてもらった。いい思い出が一つ増えた。

 本堂を出ると、阿弥陀堂、奥の院と抜け、音羽の瀧では、3筋に分かれて落ちる清水を柄杓に汲み、六根清浄、所願成就を祈願した。

 そして、その先にあるトイレに各々向かった。みんなが出てくるのを待ってる間、周りを見てると、さっき見たのとは別と思われる三重塔が見える。ちょっと距離があっても圧巻だった。

 みんながトイレから出てくると、もう時間が無くなってきたので来た道を戻るように向かうと、別の道があったので戻りがてら見ていくことにした。歩いていくと、急にお地蔵さまがいくつも鎮座しているところが現れた。こんな数を見たことがなかったから驚いた。しかもよく見ると、一体一体にて前垂れが掛かっていた。

 明日香たち女性人はそれを見て、「かわいいー!」と言っていたが、その感覚がいまいち僕と一樹はわからなくて、「かわいいか?」と思わず口走ってしまったほどだ。明日香たちには、「これがわからないなんて」と飽きられてしまったが、僕は思わず「明日香の方が可愛いし」とつぶやいてし合う。その言葉はしっかり明日香に聞こえていたようで、明日香の顔がゆでだこのようになってしまう。その様子を見た加奈からは、


「あいかわずお熱いわね。私、胸やけしそう」


とからかわれてしまう。


 そして、大講堂の前を通って、僕たちは入ってきた仁王門を抜けた。清水寺を後にすると、僕たちはタクシーを拾って、宿泊しているホテルに戻った。ホテルには、六時前に着いた。同じように戻ってくる生徒が増えてくる。中には疲労困憊ひろうこんぱいなものもいた。僕もその一人だ。さすがに普段歩いてないのにこんだけ歩いたせいかさっきまで何ともなかったのにホテルに着いたらどっと疲れた。夕食は十九時からなのでそれまでは自由時間だ。僕と一樹はフロントでカードキーを貰うと、明日香たちと別れ、部屋に戻ると、ベッドにダイブする。ちなみに姫川君たちはまだ戻ってきていない。ベッドにダイブすると、瞼が重くなってきて睡魔が押し寄せてくる。一樹が気づいて、


「翔琉、眠いなら寝てていいぞ。夕食の時間になったら起こしてやるから」

「ああ・・・・・・うーん・・・・・・よろしく・・・・・・」


 そこで僕の意識は、プツンっと沈んでいった。

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