第96話 一日目。京都の神社仏閣巡り
僕たちは、最寄りの稲荷駅に戻ると、時刻表を確認する。
「ここから金閣寺まで電車で五十分かかるみたいだね」
「着いたら、三時は過ぎるから、予定通りほかのところも見れるかな」
「場合によっては、いけないところが出るかもしれないね」
「そうだね」
明日香は、しょんぼりしている。せっかく来たんだから他のところに行きたいもんな。明日以降も予定があるから行けるとは限らないし、こればっかりはどうしようもないもんな。
「明日香、翔琉!」
加奈が大声で呼んでくる。
「どうしたの。加奈ちゃん?」
「タクシーの運転手さんに聞いたら、金閣寺まで二十五分ぐらいで行けるらしいから、タクシーで行くわよ」
「えっ!? 本当」
電車の半分の時間だったらタクシーの方がいいかもしれない。それに飲食とは違って交通費は学校が後で出してくれるからお金を気にする必要はない。
二つ返事で僕と明日香は、加奈について行ってタクシー乗り場に着くと、タクシーの前で一樹とアリスが手を振って待っていた。二人ともいないと思ったらこんなところにいたんだ。
そして、タクシーに乗って走り出したら、渋滞もなく予定通りの時間に金閣寺に着いた。降りる際に学校に申請するための領収書をもらうことを忘れない。
僕たちは、総門をくぐり、いろんな建物を横目に目当ての金閣寺を目指す。しばらく歩くと、金色に輝いている建物が見えてきた。
「これは絶景だね」
「そうだね」
「さっそく写真を撮るわよ」
加奈の周りに集まって金閣寺が入るように加奈がスマホで自撮りする。そして、みんなもスマホで写真を撮りあう。
「それにしても、金なんて贅沢だね。綺麗だなー」
明日香のつぶやきにここで明日香の方がきれいだよって言えたらいいんだろうけど、そこまでの勇気がない。
「翔琉君、どうかした?」
「な、何でもない」
僕はごまかしように言った。
「な、何でも金閣寺の金箔は二層と三層は、漆の上から純金の箔が張ってあるらしいよ」
「へぇー、だからこんなに綺麗なのかもね」
明日香と仲良く金閣寺を眺めた。
「あれ、屋根の上になんかあるな」
一樹のつぶやきに屋根の上を見る。
「あれって、鳳凰じゃないかな」
「鳳凰って?」
アリスが知らないのか聞いてきた。
「鳳凰って不死鳥のことよ」
明日香が答えた。
「ああ、フェニックスね」
アリスは満足したように頷いている。
「これも綺麗ね」
「どうかした、加奈ちゃん」
「みんなこれ見てよ」
加奈のところに行ってみんなどれどれと見てみる。すると、金閣寺の前にある池の水面に金閣寺が写りこんでいる。しかも、今は無風で風が吹いてないせいかきれいに映っている。これは撮るしかないと思って、スマホを取り出すと、金閣寺と水面に映ってる金閣寺が上手くはいるようにして撮る。明日香たちも考えることが一緒なのかそれぞれにスマホに画像を収めている。それから、金閣寺の周りをまわるように歩いて、次の目的地に向かうことにした。それにしても最後に階段が出てきたときには少し驚いた。
タクシーに乗って、東山慈照寺に向かった。十五分ほどで着くと、境内に入る。
「銀閣寺ってどれ?」
アリスがキョロキョロしている。建物はあるが、金閣寺みたいに光ってる建物は見つからない。
「あの建物だと思うよ」
「えー、銀色じゃないんだけどー」
アリスが不満を示すように頬を膨らませている。
確かに、金閣寺を見た後じゃ、なんか物足りないかも。
「でも、何で銀閣寺って言うんだろうな」
「確かにね。明日香は知ってる?」
「何で私に聞くの?」
「だって、明日香はこの中じゃ一番頭いいから。それにね———」
「(賢いところを見せれば翔琉が惚れ直すかもしれないわよ)」
明日香は、加奈に何かを耳元で言われると、一瞬僕の方を見たような気がした。
「しょ、しょうがないわね」
「ちょろっ・・・・・・」
「なんか言った。加奈ちゃん?」
「何も言ってないわよ」
「はあー、まあいいわ。銀閣寺は正式名称東山慈照寺って言うんだけど、銀閣寺の名の由来は江戸時代、金閣寺に対し、銀閣寺と称せられることとなったと言われてるらしいわ。まあ、足利義満の金閣寺に対して足利義政の方を銀閣寺って呼んだんでしょうけどね」
明日香の説明が終わると、アリスが、
「なんかショック・・・・・・次の目的地に行こう」
とぼとぼ歩きだす。
「写真撮らないの」
「普通の家撮ったてつまんない」
「聞く人が聞いたら怒るよ」
僕はそう言いつつも確かにガッカリ感はある。
僕たちは銀閣寺を後にして、本日最後の目的地、清水寺に向かった。
タクシーを降りると、清水寺に向かう、清水坂を歩いていく。道の両サイドには、雑貨や飲食店、着物のレンタル店などが
「ちょっとどこかで休まない」
「さんせーい」
明日香の提案にアリスが同調する。
加奈が時計で、時間を確認すると、
「銀閣寺で予定より時間かからなかったから、まだ時間はあるわね。少し休もうか。一樹と翔琉もそれでいい?」
「俺たちは構わないよ。なっ」
「そうだね。ちょと小腹空いたしちょうどいいんじゃないかな」
僕たちは、通りにある喫茶店に入った。
「何にする?」
「僕はアイスかな。明日香は?」
「私もアイスにしようかな。でも、こっちのわらび餅もすてがたい。迷うなー」
明日香がメニュー表とにらめっこしている。
「なんだったら僕のと半分こする?」
「え、いいの」
明日香がすごく喜んでいる。どうしようかと思ったけど言ってみてよかった。
「相変わらずお熱いことで」
「あ」
加奈の突っ込みで我に返る。みんないることを忘れてた。一樹なんか呆れた顔をしている。アリスは、うまそうなメニューの写真に心奪われて聞いてないようだった。
そして、僕と一樹、加奈は抹茶味のソフトクリームを、明日香とアリスはわらび餅を注文した。
僕は約束通り、半分食べると、明日香と交換した。
わらび餅なんて普段食べないけど、黄な粉に黒蜜が何とも言えなくてうまかった。冷たいアイスもよかったけどこれはこれでアリだな。僕はわらび餅を堪能していると明日香のアイスを食べる手が止まっている。
「明日香、早く食べないとアイス溶けるよ」
「えっ、そうだね」
慌てたように返事するけどなかなか食べようとしない。どうしたんだろうか? もしかして抹茶味がダメだったんだろうか。味の確認してなかった。明日香はバニラの方がよかったのかも。僕の頭の中は不安でいっぱいになる。
「明日香、気づいたわね」
加奈に言われて、明日香の体がビクッと反応する。
「気づいたって何に?」
僕も分からなかったので加奈に聞いた。そしたら、呆れたとばかりに溜息を吐かれた。しかも、一樹も同じ態度をとる。アリスは食い意地を張ってわらび餅に夢中だが。
「間接キスよ」
「間接キス?」
加奈に言われて明日香を見ると、顔がみるみる赤くなっている。ソフトクリームは当たり前だが僕が直接口をつけたのを渡してしまった。スプーンなりを貰うべきだった。
「ごめん! 明日香。そこまで気が回らなかった。今からでもスプーンを貰ってくるから」
店員を呼ぼうと手を上げようとしたら、
「アスカ、いらないの。なら私が食べていい?」
「わ、私が食べるから」
アリスに言われて明日香は慌てたようにソフトクリームにかぶりついた。食べ終わった明日香の手は溶けたアイスでベトベトだ。僕は、ウエットティッシュを取り出して、明日香に渡す。
明日香は「ありがと」とお礼を言うと、手を拭いた。それでもベトベト感が拭えなかったのかトイレに手を洗いに行った。明日香がいなくなると、加奈がアリスに「ナイスッ!」と親指を立てているが、当のアリスはよくわかってないのか首を傾げていた。
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