第93話 校外学習の予定を組んだら、予想通りユニバーサルスタジオが人気な件
週明けの月曜日、朝のホームルームで校外学習の行き先を選ぶ話し合いが始まった。
「さっそくお前たちが楽しみにしている校外学習の行き先を発表するぞ」
担任であるタマちゃんは、そう言うとチョークをもって黒板に行き先を書いていく。
一、北海道
二、京都、奈良、大阪
三、石川、富山
四、沖縄
「行ける場所はこの四つのどれかだ。一年は八クラスあるから、それぞれに二クラスずつだ。お前たちは優先権があるからどこでも選べる。どこがいいかちょっと考えてくれ。五分後ぐらいに多数決を取るからそれまでに質問があれば受け付けるぞ」
タマちゃんに一人に生徒が手を挙げて質問する。
「それぞれ行ける場所って限られてるんですか?」
「いや、決まってるのは最終日だけだ。それ以外は班での自由行動だから
また別の生徒が質問する。
「それって遊ぶような場所でもいいんですか?」
「ん? 遊園地みたいなやつか。かまわないぞ。神社仏閣めぐりでもいいし、食べ歩きでも構わない。そして、大阪を例に出すとユニバーサルスタジオに遊びに行くのでもいいぞ。ちなみに食べ物やお土産以外の施設に入るための入場料などは学校が出す。これはこのあと班決めをするわけだが、その話し合いで事前に計画書を作ってもらってそれにのっとって当日に必要なお金を班の代表者に渡す。計画書は出したらよっぽどのことがない限り変更不可だ。だから慎重に決めろ」
「それでも行くならあそこがいいよな」
「私一回行ってみたかったんだよね」
「だな。楽しそうだもんね」
「それに他にもいろいろあるしな」
みんな思い思いにしゃべってるのがちらちら聞こえる。
「質問はないようだな。もう決まってるようだが一応決を取るぞ」
そうして僕たちの行き先は、満場一致で、京都、奈良、大阪に決まった。
「もうすぐ一限目が始まるからこの続きは五、六時限目にやるから、それまでに班分けを決めておけよ。班は四人から五人までで最低でも男女二人ずつは組み込んでおけよ」
タマちゃんが教室を出ていくと、入れ替わるように一限目の担当教員が入ってきて授業が始まったので班決めは後回しだ。
そして、休み時間になるとみんな班決めに
「翔琉、組もうぜ」
僕のもとに一樹がやってくる。
「いいよ」
「私たちとも組もう」
明日香と加奈もやってくる。
「カズキ~!」
アリスが僕にの垂れかかるように僕の背後からしがみつく。
「アリス、ちょっと苦しいって」
ほら、明日香だってなんか顔がムッとして不機嫌になってるじゃないか。
「カズキ、一緒の班になろ」
「僕は別にいいけど」
「俺もかまわないぞ」
一樹がすぐに同意すると、
「私もいいわよ。アリスがいるとなんだかんだで楽しいし」
加奈も同意する。
あとは明日香だけだ。僕たちの視線が注がれるとため息をついて、
「はぁ~、しょうがないわね。だけどこれだけは言っておくけど、翔琉君にあんまりちょっかいかけないでよ。翔琉君は私の彼氏なんだからね。わたしのなんだからね!」
明日香の声が教室中に響いてみんながこっちを見てくる。その中にはあったかい視線も感じる。僕はみんなに注目されてるのに耐えられず頭を抱えるようにして机にうずくまる。
「相変わらず愛されてるな」
「うるさい」
一樹の突っ込みに返すのがやっとだった。
そして、五時限目が始まると、みんな班どおしで集まって、予定を立てていく。みんなスマホで検索したりしてるようだ。
「じゃあまず、行きたいところを上げていきましょう」
加奈が進行していく。こういうことは率先してくれるから楽だな。
「UFJはいきたいでしょ」
「それは楽しそうだもんな」
みんな反対はないようだ。
「あ、私、鹿に餌あげたいかも」
「鹿って奈良公園ね」
明日香の案を加奈がノートに書いていく。
「ほかには何かある。アリスはどう?」
「私は時代劇に興味があるから太秦に行ってみたいかも。調べたら着物のレンタルとかあるみたいだし一回着てみたいんだよね」
「私も着てみたいかも」
明日香も賛同している。きっとコスプレみたいで着てみたいんだろうな。
「じゃあ、翔琉と一樹は?」
「僕は、アリスの時代劇つながりってわけじゃないけど、大阪城に行ってみたいかも」
「お、いいな。俺も行きたいかも」
一樹も賛同してくれる。
「男子ってそういうの好きね」
明日香たちが呆れている。聞かれたから答えただけなのに、なんか理不尽だ。
「俺は、神社仏閣を見てみたいかな。伏見稲荷大社にも行きたいし、清水寺や金閣寺、銀閣寺も見てみたいし渡月橋も歩いてみたいしな」
加奈はみんなの案を一通り書くと、
「総合すると、京都も奈良も大阪にも行くってことね」
それから話をもっと詰めて時刻表やグーグルマップで所要時間なども調べて予定を立てていく。
そして、出来上がった計画書をタマちゃんに提出した。
タマちゃんは他の班からも回収するといったん職員室に持っていく。
ほかの教職員と話し合いながら最終的に校長の許可がなければならない。ダメなら最初からやり直しだ。
みんなタマちゃんが戻るまで雑談していると、十五分ぐらいしてきて教室に戻ってきた。
みんな固唾をのんでいると、タマちゃんが口を開いた。
「みんなに言う事がある。ユニバーサルスタジオのことなんだが———」
「え、ダメなんですか」
「一番の楽しみなのに」
みんなやはりユニバーサルスタジオに行きたいのかショックが大きい。確かに大半の楽しみなのは間違いない。人によるだろうけど。
「待て! 早とちりするな。ユニバーサルスタジオに行けないわけじゃない。ちょっとしたお願いだ」
みんな訳もわからず首を傾げる。おとなしくタマちゃんの話に耳を澄ませる。
「わかってると思うが、京都、奈良、大阪に行けるのはうちともう一クラスあるわけだが、みんなユニバーサルスタジオに行くのを予定に組んでるんだが、二日目に行く班と三日目に行く班が乱立しててな。そこでお願いなんだが、二日目に予定してる班は、三日目の予定と入れ替えてユニバーサルスタジオに行くのを三日目にしてくれないかというお願いだ。その方が、見回りをする私たち教師の負担が減るからな。どうだろうか」
僕たちはもともと三日目に予定してたから問題ない。
「なんだ。そんなことなら問題ないですよ」
「ほんとだよ」
「よかった~。タマちゃんの言いだしで不安になったじゃないですかー!」
どうやら、二日目に予定してた班も問題ないようだ。
こうして、無事に予定は決まった。
あとは二週間後に始まる校外学習に向けて準備するだけだ。
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