第83話 明日香たちは、実力を見せつける!

 僕と一樹が体育館に入ると、ちょうど整列するところだった。どうやら試合開始までに間に合ったようだ。ホッとしてるとコート上にいたアリスが僕に気付いて手を振っている。


「カケル~! ワタシの雄姿をしっかりその目に焼き付けなさい!!」

「そこっ。早く整列しなさい」

「すいませーん!!!」


 そっこーで審判を務める先生に怒られている。相変わらずだな。チラッと明日香たちを見ると今のアリスのやり取りで緊張がほぐれたのかいい感じでリラックスできてるようだ。まさか狙った———わけはないか。アリスのことだから何も考えてないな。

 僕と一樹は二階の客席に移動した。


 明日香たちは挨拶するとポジションに散った。


「あれ?」

「どうした?」

「いや、ジャンプボールやるのアリスなんだとおもって。てっきり経験者の加奈がやるのかと思って。それに身長も加奈の方が高いような」

「それは、単純にジャンプ力があるからとか。それにジャンパーは飛んでる分すぐに動けないから少しでも転がったボールを加奈に渡して先取点を狙ってるのかもしれない。まっ、アリスが少しでも目立ちたい理由で飛ぶのかもしれないけどな」

「ありえそう」

「だけど、やるからには勝ちたいだろうから加奈が許してる地点でアリスがやる方が理にかなってるんだろ。試合が始まればわかるさ」


 一樹の話が途切れたところで、審判がバスケットボールを空高く投げる。

 タイミングを合わせて両者が飛んだ。アリスの相手は傍から見てもアリスより身長が高い。これは分が悪いかと思ったが、何とアリスが相手より高いところでボールを触り叩き落とした。落ちたボールは、誰もいないところに転がってると思ったら加奈が走りこんでボールを取るとそのままレイアップシュートを決めて最初の二点を取った。

 あまりの電光石火で相手が驚愕している。

 加奈とアリスがハイタッチで喜びを分かち合ってるのを見ると、一樹が言った通りここまでが作戦でうまくいったようだ。

 相手がボールを入れたのを加奈がすかさずカットしてそのままシュートして決まった。

 そして、相手も食らいつくが、加奈とアリスがすぐに点を取り返すので、なかなか点が縮まらず第二クォーター終了のまでに七点差がついていた。


「なんか、二人だけでほぼ決めてたな」

「あの二人の運動神経が半端ないな。しかもあんだけ走ってたのにあんまり息を切らしてない」

「本当だ」

「このままだったら加奈達の勝ちだな」

「そうだね」

「何だ。橘さんの活躍があんまりないから気にしてるのか?」


 僕の視線が明日香にくぎ付けなのがばれてたようだ。


「この後活躍する機会が恵んでくるんじゃないか。見たところ二人とそれほど実力が離れてないと思うし、それに相手は女バスのメンバーが大抵を占めてるんだ。プライドにかけて何か対策を打ってくるはずだからな。それに加奈とアリスは目立ちすぎたからな」


 一樹が言ってることは現実になる。


 第三クォーターが始まると、加奈とアリスに二人マークがついていて、なかなかボールを持たせてもらえない。パスがきても攻めきれずにパスを返してしまう。

 これは、中では二人に仕事をさせないで他の三人に流行られても仕方ないという守りをしている。しかも、チャンスがあるとしたらスリーポイントしかない。現役バスケ部の加奈なら狙えると思うけど徹底したマークにあっては難しい。アリスもやれそうな感じがあるけど二人もマークに着かれてしんどそうだ。その証拠にさっきから息を切らせている。いったん交代したほうがいいんじゃ・・・・・・その証拠にちょっとずつ点を取り返されていってもう差はワンゴール差しかない。


「ちょっととまどったけどこれ以上はやらせないわよ、白鳥。あなただけを押さえておけば楽勝だと思ったけどまさかの伏兵がいたなんてね。彼女は何者なの」

「彼女は最近きた転校生だから先輩が知らないのも無理はないかもしれませんね」

「へぇ~、この試合終わったら勧誘しようかしら」

「余裕ですね。そういうのはこの試合に勝ってから言ってもらえませんかね」

「こうしてあなたたちを抑え込んでるんだから私たちに負けはないわよ。仮にほかの三人にボールが渡っても中は徹底して私たちが守るからシュートはスリーポイントを狙うしかない。しかも私たち経験者でも入る確率は五割いけばいい。それを素人がやってどれぐらいの成功率かしら。もしかしたらリングに届かないかもしれないわね」


 その時加奈にボールが渡る。


「あまり舐めない方がいいですよ。明日香!」


 加奈が出したパスはワンバウンドしてスリーポイントラインにいた明日香の手に収まる。完全にノーマークだ。

 明日香はすぐにゴールめがけてシュートを放った。明日香の手を離れたボールは高く上がり弧のような放物線を描いてゴールに吸い込まれるように入った。バスケットリングに入ったときのパスっという音とボールが地面に落ちた音で静寂につづまれた会場が一気に大歓声に包まれた。


「なっ!?」


  先輩方が驚いてる一方でカナと会うかは喜んでいる。


「ナイッシュー!!! 明日香!」

「加奈ちゃんもナイスパス!」


 この後も明日香は立て続けに二本のスリーポイントを決めた。なんかゾーンに入ってるのか外す気配がない。だけど、これで相手も外のも警戒しないといけなくなるわけで残ってた一人のディフェンダーが明日香を徹底マークする。

 ボールが明日香にわたると、すぐにマークがきて思うように動けない。


「これ以上やらせないわよ」

「明日香ちゃん。パス!」


 明日香は声がした方にノールックでパスを出す。そこに走りこんできた清住さんが華麗にレイアップシュートを決める。

 相手はどんなに対策を打っても止められないのか、ワンゴール差だった点差が五点、七点と開いていく。

 しかも思うようにいかないからかだんだんミスが目立ってきて、今も加奈がパスをカットしてアリスにパスをする。パスが通るとアリスはすぐにジャンプシュートの体勢になる。


「これ以上バスケ部のプライドにかけてやられるもんですか!」


 いち早く反応した相手プレイヤーがシュートブロックに飛んだ。しかも高い。これは止められたかと思った瞬間、アリスと相手の距離が空中で離れていく。これは、フェイドアウェイシュートだ。アリスは後ろに飛んでいた。その結果、アリスのシュートは相手の手が届かないギリギリを通過してゴールに向かっていく。

 ガーン!!


 リングにはじかれたボールが真上に飛ぶ。


 ガッ、ガッ・・・・・・グルグル・・・・・・スポッ


 リングにはじかれたと思ったらグルグル回ってボールがゴールに吸い込まれるように落ちた。しかも、スリーポイントラインから決めていた。これで三点が入り十点さだ。ここで第三クォーターの終了のブザーが鳴った。

 この後の最終第四クオーターは、さっきのアリスのプレイが尾を引いていたのかプリに精彩を欠いていき、どんどん差が開いていく。その結果、終わってみれば明日香たちの圧勝で初戦を突破した。

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