第82話 学校施設を満喫する
「勝った」
「俺たち勝ったぞ」
みんなで勝利を分かち合ってると三年の先輩方が来た。
「ちょっと君、いいだろうか」
「な、なんでしょうか」
なんかいちゃもんでも付けられるのかな。罵詈雑言言われたら耐えられそうにないんだけど・・・・・・
戦々恐々しながら次に言葉を待ったけど先輩方は想像だにしなかった笑顔で話しかけてきた。
「完敗だ。桜井だけ押さえておけば楽勝だと思ってたがこんな伏兵がいたとは。しかも一人や二人じゃない」
「それはどうも」
「聞いたところによると君はどこの部活にも所属してないようだな」
「はい」
「ならよかったらサッカー部に来ないか。君なら即戦力になる。一緒に全国目指さないか」
どうやら部活の勧誘に来たようだ。だけど僕の答えは決まっている。
「申し訳ないですけど、僕は部活に入るつもりはないです」
「何故だ! 君ほどの逸材、探そうと思ってもなかなかいないのに! 考え直してくれないか!!」
そうは言われてもな。単純にさっさと帰りたいから。それに、明日香とデートする時間の方が大事だから別のところに割きたくないんだよな。それに中学三年間部活ばっかしだったからもうしたくないってのもあるけど。こんなこと馬鹿正直に言ったらまじめにやってる先輩たちはどう思うだろうか。
当たり障り内容に答えようと考えていると、見かねた一樹が言ってくれた。
「あの先輩、翔琉にはいくら勧誘しても無駄っすよ。こいつにはそれより大事なものがあるので」
「大事なもの? それはいったい」
「それは彼女と遊ぶ時間ですよ。ほらあそこにいるこが翔琉の彼女です。人生で初めての彼女だからほかのことに時間を割く余裕なんてないですよ」
一樹、その通りなんだけどそんなこと言ったら・・・・・・
「彼女とデートだと!?」
ほ、ほら、怒りのボルテージが。こ、ここは土下座するしか。
僕は謝るしかないと思ってたが先輩の反応は真逆だった。
「それなら仕方ないな。あんな可愛い彼女がいるなら彼女を優先するのも理解できる。今しかできない青春もある。大いに結構。それならここはおとなしく引き下がることにしよう。だが、もしやりたくなったらいつでもいうがいい。君なら大歓迎だ。三年の先輩たちも反対はするまい。それでは失礼する」
先輩がいなくなったところで一樹が、
「俺たちも行こうぜ」
「う、うん」
ベンチに行くと明日香と加奈が
「お疲れ様。はい、翔琉君」
明日香がスポーツドリンクを差し出してくれた。
「ありがとう」
僕はお礼を言って受け取ると一気に飲み干した。運動した後に飲むと、冷たさもあって、喉を通ると体にしみわたって気持ちいい。
みんなは先に上がったようだ。この状況を見られたら何をされるかわかったもんじゃない。ちょっと前まで僕もそっち側だったからよくわかる。リア充なんか爆発しろと思ってたからな。今まで一樹にどれだけ嫉妬したことか。だけど今はそんな気持ちはどこかへ消え失せた。さようなら今までの僕。
「次は私たちの番ね。勝つわよ。明日香」
「うん。私も活躍してるところ翔琉君に見せたいしね」
「言うわね」
「試合見に来てくれるよね」
「当り前じゃないか」
すぐ返答したら明日香が微笑んでくれる。
「試合は十三時からだっけ?」
「そうよ」
一樹が確認して加奈が答える。
「じゃあそのころになったら行くよ」
「了解。それじゃそろそろ行くわよ、明日香。ウォーミングアップもしときたいしね」
「わかった。翔琉君、またあとでね」
明日香たちが試合会場である体育館に向かったところで、僕たちも移動する。向かった場所は温泉施設だ。この学校、どういうわけか設備が充実してるのが特権だ。温泉は生徒ならいつでも自由につける。なんでも学校をつくるときにたまたま源泉を掘り当ててせっかくだからそのまま温泉施設を作ってしまったらしい。そのおかげで入れるわけだから感謝しないと。ありがとう。当時掘り当てた工事関係者のどなたか」
僕たちは男湯と書いてある暖簾をくぐって脱衣所で服を脱ぐと扉を開けて中に入る。まだ昼前だからか数人しか利用してない。ほぼ貸し切り状態だ。
シャワーで汗を流したら、湯船につかる。
(は~、生き返る)
僕は疲れた筋肉をほぐすように両足をもむ。ちなみに一樹はサウナと水風呂を楽しんでいる。僕は遠慮した。とてもじゃないが、あのサウナの域のしづらさに耐えられないのとなんかすぐに出ていける雰囲気じゃなくなりそうなのが嫌だからだ。
しばらく湯船につかってボーとしてると一樹が隣に来た。
「もうサウナはいいのか」
「ああ、長ければいいってもんでもないし、、もう満足だ」
それから十分ぐらいして湯船から上がって着替えると温泉施設を後にした。
僕と一樹は、昼食を兼ねて屋台を見て回る。
「うまそうなのがいっぱいあるな」
「これは迷うな。気になるのを適当に何個か見繕ってシェアしないか?」
「いいよ」
一樹の提案に賛成した僕は手分けして焼きそばにタコ焼き。一樹はケバブ丼にラーメンを持ってきた。
さっそく飲食スペースに移動するとアイテル席を見つけて机の上に並べる。
「一応取り皿ももらってきた」
「気が利くね」
それぞれ半分ずつ取り分ける。ラーメンだけはちょうどいいのがなかったので紙コップに入れて食べることにした。それにしても、一樹はちょっとしたことによく気付く気配り上手だ。ただイケメンなだけじゃなくてこういうまめなところがモテる秘訣かもしれない。僕も見習おう。
「はあ~、どれもうまかったな」
「だな。この値段の割にそこら辺の店よりうまいような気がするし、噂によると一流のシェフが作ってるらしい」
「えっ!? その割には安すぎない」
どの料理も三百円から五百円もあれば食べれるのだ。それが本当だったらいくら何でも価格設定がおかしいような。
「それは、この学校だからだな。ここを卒業したらどこ行っても大体の人がその道のエリート街道まっしぐらだからな。その時になったら自分の店に来てくれるかもしれないだろう。そうなったら店にとって箔がつく。そんだけ個々の卒業生はブランド価値が高いんだよ。だから、いわゆる先行投資ってやつだな」
「・・・・・・いまさらながらすごい学校に入ったような気がする」
「そんな学校にいるんだから翔琉も十分にすごい奴だよ。それに、来年は葉月ちゃんも来るんだろ?」
「入試に受かればだけどね」
「そこは受かると思っとけよ。それに何もテストの成績がすべてじゃない。俺だってサッカーの実力が評価されたもんだしな」
「そんなこと言ったって一樹、テストの点数だって平均以上とってるじゃないか」
「それは努力してるからな。そんなことより腹ごしらえに何か甘いもの食いたくないか?」
「それならさっきクレープやを見たけど」
「よしなら食いに行くか」
それからクレープを買って食べていると、
「そういや今って何時だ?」
「ちょっと待って」
僕は、スマホを取り出して時間を確認する。
「———十二時五十一分」
明日香たちの試合時間が近づいていた。食べることに夢中になって時間があっという間に立っていた。一樹が聞いてくれなかったら気づかなかったかもしれない。
僕たちは急いでクレープを平らげると、明日香たちが試合を行う体育館に急ぐのだった。
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