第53話 どんなピンチの時でも駆けつけてくれるヒーローがいる。
時間は翔琉達が昼食を買い出しに言った直後に
私達は翔琉君達が昼食を買いに行ってる間に空いてる席を確保するべく辺りを見渡す。時間帯の所為かまだらだった人がどんどん増えてきている。早く確保しなければすぐに埋まってしまうだろう。
「お姉ちゃん、ここ空いてるよ」
ひよりが見つけた席は海に近く、潮風が心地よく吹いていた。
「空いてるのはいいけどここじゃ全員座れないんじゃない?」
改めて席を見ると丸いテーブルに椅子が三脚しかなかった。これでは全員が座ることができない。
「それは大丈夫。そこの席も葉月が確保したから」
ひよりに言われて隣の席を見ると葉月ちゃんが座っていた。姿が見えないと思ったらいつの間に。だけどこれで翔琉君達が戻ってきたら食事を始められる。
私は安心して、ひよりの隣の椅子に腰かける。
「お姉ちゃんは葉月の隣の席に座った方がいいんじゃない?」
「何で!?」
私が隣にいるのが嫌なんだろうか。まさかひよりに妹に嫌われてたらショックなんですけど。
「何でそんなこと言うの! 私が翔琉君と付き合ってるのが許せないの。自分も好きだったから!」
ひよりの肩に手を置いて揺さぶるように捲し立てた。
「お、落ち着いてお姉ちゃん」
私が手を放すとひよりは「これだからお姉ちゃんは・・・・・・」と呟いてちょっとずれた水着の肩ひもを直しながら言う。
「お兄さんのことは諦めがついてるから気にしないで。そんなことよりお姉ちゃんはお兄さんと一緒に食べたいでしょう」
「当たり前じゃない」
「そこは即答するんだね。だったら、お姉ちゃんは葉月の隣に座った方がいいと思うよ。だってこの並びで行くと、お兄は妹である葉月の隣に座ると思うの。そうなると一樹君もお兄さんの隣に座って加奈ちゃんは私たちの方に来ると思うのよね」
「だけど、翔琉君も彼女である私の隣に座ろうとするんじゃ」
「分かってないな、お姉ちゃんは。普段からそういうことを考えてたらそういう行動をするかもしれないけど、お兄さんはそういうことに関したら不慣れ。こういう時は自然と普段通りに動くものなの。そうなったらいつも一緒にいる家族である葉月の隣に自然と座るものなの。だからお姉ちゃんが葉月の隣に座ればお兄さんからしたら妹と彼女がいる席を無意識に選ぶはず。それにそうなったら一樹君と加奈ちゃんも私の席に来るはずだからカップルが別々のテーブルに着く必要がないじゃない」
何この妹、策士なんですけど。普段の学校の勉強もこれぐらい頭浸かってくれたら言うことないのに。
私は席を立つと葉月ちゃんの席に向かう。
「隣いい?」
「構いませんけど」
私は葉月ちゃんの隣の椅子に腰を掛ける。
「お兄なら普通に明日香さんが誘えば喜んで一緒に食べると思いますよ」
「・・・・・・もしかしてさっきの聞こえてた?」
「それはこんなに席が近ければ。それにひよりの声って大きいからよく聞こえるんですよね」
私はひよりとのやり取りを翔琉君の妹である葉月ちゃんに聞かれてたと思うとあまりの恥ずかしさに穴があったら入りたい気持ちになった。
それからしばらくして――
「明日香さん」
「えっ、!? 何?」
突然葉月ちゃんに呼ばれたことで声が裏返てしまう。
「何か、ひよりナンパされてません」
「え?」
葉月ちゃんに言われてひよりの方を見ると、如何にもちゃらちゃらしてそうな男三人が詰め寄っているように見える。
「ねぇねぇ、君可愛いね。こんなところで一人でいないで俺らとお茶しない?」
「私暇じゃないので、他を当たってくれます」
ひよりが男たちを一蹴している。普段の態度からすると想像できないが、知らない人相手だと辛辣だったりする。
「そんなこと言わないでさ~」
男たちも懲りないでひよりに言いよっている。
「あのその子に何か用ですか?」
「あんっ!!」
私が声をかけたら男たちは怪訝そうな顔をして振り向いた。ナンパを邪魔されたのが癪に障るのだろうが妹がされているのを黙って見てるほど私は愚かではない。
「何だ!? お前には関係・・・・・・なかなかいい女じゃないか」
男たちが嘗め回すように私を見てくる。私の毛穴という毛穴から鳥肌が立ちゾクッとする。生理的に受け付けない。
「お姉ちゃん」
ひよりが安心したように私を呼ぶ。だけどその声にいち早く反応したのは男たちの方だった。
「ほ~う、コイツの姉か。姉妹そろってなかなかの美人じゃないか」
「明日香さん」
葉月ちゃんが心配そうに声をかけてくる。
「そっちのも中々だな。そいつも妹か」
葉月ちゃんが私のことを名前で呼んできたのを聞いてないのか。姉妹だったら名前で呼ばないだろう、ふつう。その地点で姉妹じゃないことは一目瞭然なのにわざわざそれを公表することもあるまい。どうせこいつらの頭は女をナンパすることで頭いっぱいなんだろう。
「あなたたちには関係ないでしょう」
私は男たちを無視するように葉月ちゃんとひよりを連れてその場を離れる。また席を探さなくては。だけどこいつらの相手をするよりはマシだ。
「そんなことを言わずに俺たちと遊ぼうぜ。ちょうど人数も三人ずつだからちょうどいいだろ」
男たちが懲りずに私たちの後をついてくる。
「イタッ!」
「ひより!」
さっきからずっと喋ってた男にひよりの手を掴まれる。そして、歩みが止まったのを見定めたように取り巻きの男二人が私たちを取り囲む。
「その手を放しなさい」
バチッ!!
ひよりを掴んでいた手をはたき落す。
「痛えな、このアマ。こっちが下出に出てれば付け上がりやがって」
ひよりが葉月ちゃんと抱き合って私の後ろで身を掲げている。
「この落とし前はどうつけてくれるんだ!」
私の足はガクガク震えてちょっとでこ気を緩めると倒れそうだ。だけど、二人の前でみっともない真似は見せられない。この場に翔琉君の桜井君も加奈ちゃんもいない。この二人を守るのは私しかいない。
「何だ、お前震えてるのか。だったらこっちで払ってくれてもいいんだぞ」
男は私の全身を見ると手を伸ばし、私の胸を揉みしだく。突然の出来事で理解が追い付かない。
「おい、いくら何でもやりすぎやないか」
「何だ、俺に指図するのか!?」
「あ、いや・・・・・・」
男と取り巻きの声で胸を揉まれてるのを理解した瞬間、
バチンッ!!
思いっ切り男の頬をビンタした。
「痛えな!」
バチンッ!!
「お姉ちゃん!?」
ひよりの動揺した声が聞こえる。あ~あ、そうか私今ビンタされたんだ。男に叩かれたところがヒリヒリする。
私は立っていられなくて膝をつく。
「女に手を上げるなんて最低ですね」
葉月ちゃんが抗議する。それが癪に障ったのが男の標的が葉月ちゃんに変わる。
(ダメ、逃げて!)
私の足に力が入らない。直ぐに助けに行かなければいけないのに。
男が葉月ちゃんに迫る。
(ダメッ! ・・・・・・助けて翔琉君!!!)
「――おい」
「あ~ん」
バチンッ!!!
男が声をかけられて振り向いた瞬間殴り飛ばされて近くにあったテーブルと椅子をなぎ倒す。
一体何が・・・・・・
「明日香、大丈夫か」
その声で顔を上げると、私の願いが通じたのか私のヒーローが立っていた。そのヒーロー、翔琉君を見た瞬間目じりに涙がたまって視界がぼやけてきた。
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