第52話 楽しい時間は突然終わるかもしれない!?
僕達は昼食を食べに海の家に向かった。
「やっぱ夏休みだから僕達みたいのがいっぱい来てるね」
「席も空いてなさそうだしどうする?」
明日香の言う通り、ちょうど昼食時の所為か海の家は多くの人で埋め尽くされて空いてる席が見当たらない。
「ちょっと時間ずらして後でもう一回来るか?」
「え~、おなかすいてもうヘトヘトなんですけど~」
一樹の提案に関してひよりちゃんが愚痴をこぼす。
「そうはいっても他に食べれる場所合ったかな」
「ちょっとお兄、これ見て」
「ん、何だ?」
葉月が指さした先には看板があった。書いてある内容は――
「みんな、向こうに屋台が出てるみたいだよ」
僕の声でみんな集まってくる。
看板には矢印が書いてあり、そこにキッチンカーが出店中と書いてあった。
「本当だ。じゃぁ、こっちは混んでるし看板がさす方に行ってみましょう」
加奈が先陣を切って僕達が後をついていく。何か加奈が僕達のリーダーみたいだ。
五分ほど歩くと砂浜に多くの机といすが用意されており、岸辺には多くのキッチンカーが止まっている。
「じゃ何か買ってくるよ。ありきたりだけど焼きそばやたこ焼きでいいか?」
一樹の提案にみんな賛成する。
「あと飲み物も適当に見繕っておくから」
一樹と加奈はてべ物を買いに行った。
「二人で大丈夫かな」
「確かに私たちの食べ物に加え飲み物とまでなると持ち運ぶの苦労しそうですね」
明日香と葉月が心配そうに言っているのが聞こえた。
「僕もちょっと行ってくるよ。だから明日香たちは先に席を確保しておいて」
僕は一樹達を追いかけていった。
「何だ、翔琉も来たのか」
「二人だと大変そうだから荷物持ちとしてね。あくまでおごってもらうことには間違いないから」
「分かってるわよ。私が言い出したことだしね。それにしても三人でこうしてるのはなんか久々見たいな感じね」
「そうだね。ほんの数か月前まではいつも三人でつるんでいたのに何かもっと昔みたいに思えてくるよ」
「そんだけ充実した人生を送ったんだろ」
一樹がそう言ったことで確かに僕の人生は明日香と付き合いだしてから変わった。毎日が楽しくて明日香に会えるなら喜んで学校までもスキップしそうな気分だった。実際には恥ずかしくてしないけど。明日香と付き合う前の僕が聞いたら、そんなリア充みたいなことをしてるなんて信じてくれないだろう。
キッチンカーがいっぱい並んでいる。焼きそばやタコ焼きはもちろん、クレープにケバブ、タコス、パンケーキにカレーまでもある。見渡すだけでもメニューが豊富でこれでも岸辺にあるキッチンカーのごく一部だ。奥にもまだいっぱい止まっているから他のメニューもあるかもしれない。
とりあえず一通りのキッチンカーを見てから決めようと僕達はメニューを眺めながら歩く。
「翔琉、奢るって言っても限度あるからな」
「わ、分かってるって」
僕がケバブのキッチンカーに気をとられてたのを一樹は見逃さなかったらしい。確かに一番安いケバブサンドでも六百円している。高校生なら割高だろう。この値段なら焼きそばやタコ焼きなら二個は買えるもんな。ここは大人しく定番のメニューにした方が無難か。
そして、キッチンカーを一通り回った結果、焼きそばとタコ焼きを三個ずつ買った。これなら食べたいものが重なってもシェアできると思ったからだ。
それから近くの自動販売機で飲み物を買った。焼きそばとタコ焼きが入ってる容器を三個ずつ僕と一樹で持っているが飲み物を六本加奈が持つにはちょっと厳しい。どうしようか悩んでいたら、近くにいた人が見かねてビニール袋を数枚くれた。僕達はその人に礼を言って持ってた物をビニール袋に入れた。
僕達は、砂浜に向かうと、明日香たちを探しながら席の奥の方まで歩くとある一角に人が大勢いた。近くまで行くと何かわめいてるような声が聞こえた。揉め事だろうか。人が多くてよく見えない。僕は近くにいた男性に聞いた。
「何かあったんですか?」
「ああ~、なんかいかにもチャラそうな男性グループがナンパしてるみたいんだけど、それが断られたみたいでそれで男性たちが逆上してるみたいんだよね。あの女の子三人、かわいそうに」
(三人? ・・・・・・まさか)
「一樹、これ持っておいて」
「おい、翔琉待ってって」
僕は持ってたビニール袋を一樹に渡すと、制止も聞かずに人ごみの中に身を躍らせる。
「翔琉、急に走り出してどうしたの?」
加奈が飲み物が入ったビニール袋を重そうに運んでいた。
「何か揉め事があったみたいで、急に血相変えて飛び出して行っちまったんだよ」
「すいません。ちょっと通してください」
僕は何とか人ごみをかき分けて前に出た。
辺りを見渡すと、いかにも今風な男性たちに囲まれるようにしている女性が見える。男性たちの背中でよく見えないが、あの長い茶髪は明日香に違いない。その後ろには葉月とひよりちゃんがいるのも分かる。
僕が明日香たちの姿を確認した瞬間、
バチンッ!!!
と、音が鳴り響いた。先頭にいて明日香に詰め寄ってた男が明日香をビンタしたのだ。
明日香は叩かれた左頬を左手で押さえて
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